3-6.焔の証
3-3で登場する種族をちょっと変えました。あそこで竜人族が出てしまうと、ギルド長登場のインパクトが薄れるので。
「シオン様でしょうか? ギルド長秘書のマリンです。面会の準備が整いましたのでお越しいただけますか?」
受付でわたしの闘技大会参加とフェルアのギルド証発行の手続きを済ませて少しした後、ギルド長秘書を名乗る女性、マリンさんがやって来た。
マリンさんは水色の髪をハーフアップにまとめ、浅葱色のリクルートスーツのような制服に身を包んでいて、まさにファンタジーものの受付嬢のような美人さんだ。
片手には何かの書類を持っていて、いかにも「デキる女」を体現した人なんだけど……。
「あの、私はシオンじゃありませんよ?」
「えっ!? じゃあシオン様は――」
「わたしだよ」
マリンさん、フェルアのことを「シオン」だと勘違いしてたんだよね。ちょっと天然なのかな?
ま大方ヴァーノルドが適当に伝えたのが問題だと思うけど。「翡翠色の髪したエルフと銀髪の人族の二人組の女子を呼んできてくれ」とか言ってどっちがシオンか説明しなかったんでしょ。
「も、申し訳ありません!!」
「いいよ、気にしてないから」
「強者の風格」
「くっ……」
ちょっとフェルアさん、笑わないでくれませんかね? あとボソッって言った「強者の風格」って言葉、絶対後ろに(笑)が入ってたよね?
まあ、たしかにマリンさんが間違えたのも無理はないけどね。年端もいかない人族の少女より、隣で杖を持っているエルフの方が強そうに見えるから。
さっきだって、フェルアのギルド登録の方はスムーズに終えることができたんだけど、わたしの方は見た目が非力な少女だから、受付をしていたギルド職員のおばちゃんに心配されるという一悶着があった。
幸いにも白金ランクのギルド証を見せたら渋々ながら参加登録をしてくれたけど、横にいたフェルアには小さく笑われた。
それは置いといて、恐縮するマリンさんを宥めたわたしたちはギルド長室へと向かった。
◇
「おう! ようやっと来たか。待ちくたびれたぞ、シオン」
「遅くなったのはアンタのせいだと思うけどね」
「おん? 何のことじゃ?」
「ヴァーノルド、マリンさんに何て言ってわたしを呼びに行かせた?」
「そりゃあ『エルフと人族の二人組呼んできてくれー』と言ったが?」
やっぱりか。
ドワーフがテキトーなところは向こうの世界のおとぎ話と同じだったか。
「貴方の大雑把な性格は昔から変わりませんね、ヴァーノルド」
呆れたような言葉を発したのは竜人族の女性。
この人がギルド本部長か。
まず驚いたのはその身長で、ソファーに座っているにもかかわらず、その座高はわたしの身長よりも高い。立ち上がったら3メートルくらいはあるんじゃないのかな?
身体は夏の山々を連想させる深い緑色の鱗をまとっていて、上から民族衣装のようなベージュの貫頭衣を羽織っている。
見た目のイメージとしてはリザードマンが近い。だから、顔からは性別や年齢は判断できないんだけど、声は人族のおばあちゃんとか年配の女性のような感じだ。
「さて、何時までも主賓を立たせておくのは失礼にあたりますね。そちらのエルフの方も、どうぞ腰掛けてください」
「それじゃ、失礼します」
「失礼します」
うーん、ギルド本部長の向かいに座ったんだけど、こうするとわたしが見上げる形になるんだよね。
ギルド長の隣に座っているヴァーノルドと比べると、大人と子どもを通り越して赤ちゃんみたいになってるし。
「自己紹介から始めましょうか。私は冒険者ギルド、オルゲディア王国王都オルベス本部のギルドマスターを務めているザラです」
ギルド本部長改めザラさんは張りのあるハキハキとした口調で自己紹介をする。その話し方はどこか学校の先生のようだ。
「ヴァーノルドの方からもう聞いてるかもしれないけど、わたしがシオンだよ。それで、こっちのエルフがフェルア」
「どうも」
わたしからも自己紹介をして、ついでに隣に座っているフェルアのことも紹介しておく。
その後、スタンピードを収めたことに対しての感謝だったり賛辞を受け、新しいギルド証の授与に移った。
「では、早速ギルド証を渡しましょう。マリン、持ってきてくれますか?」
「はい、ギルド長」
ギルド長に指示されたマリンさんが黒塗りのトレーのようなものを持ってくる。
その上に乗せられた小さいクッションみたいなものの中央に金色をしたバングルが鎮座していた。
「これが貴女の新しいギルド証、オリハルコン級を示すギルド証です」
あれ? わたしはアダマンタイト級になるんじゃなかったっけ? それに、よくよく考えれば折角もらった推薦状の提示も求められてないし。
「何が何だか分からん、つう顔しとるのう」
「だって、もらうはずのギルド証はアダマンタイト級じゃないの? 1つ飛ばしてオリハルコン級のがもらえるなんて聞いてないんだけど」
「なあに、お前さんの功績はアダマンタイト級で収まるものでなかっただけの話じゃ」
「その通りです。まず、禍災級の魔物の討伐は有史以来何度か記録に残っていますが、単身での討伐の記録はありません。また、王国からも貴女の快挙に対し、幾つもの感謝状が届きました。以上のことを鑑みた結果、貴女のランクをオリハルコン級に昇格することが妥当であると判断しました」
褒められるのは嬉しいんだけど、ここまで来ると恐れられてるんじゃないのかなって思うよね。まあ、せっかくなんだし、ここは素直にもらっておこう。
マリンさんからバングルを受け取って、今まで付けていた白金級のギルド証と付け替える。
重そうな見た目とは裏腹に、オリハルコン級のギルド証は思ったよりも軽かった。光の当たる角度によって光沢も七色に輝いて綺麗だし、宝飾品としての価値が高そう。売らないけどね。
「綺麗ね」
「グァン」
「ありがと、シリウス。フェルアは魔法が得意なんだし、頑張ればすぐに取れるんじゃない?」
「私の魔法なんてあなたの魔法と比べ物にすらならないわ。それこそ、何年、何十年と研鑽を積まなくちゃ」
「そんなもん、シオンに習えば良いではないのか? 何たって此奴はオリハルコン級冒険者じゃからな」
たしかに、それはいい考えかもしれない。
これからいろんな所に行くとなると、それだけ危険な魔物に遭遇する確率も上がるし、自衛のためにもフェルアには強くなってもらいたいしね。
「ザラのばあちゃん、ソーマ取って来たで! これでアムリタ作ってや!」
ギルド証の受け渡しが終わり、みんなで談笑したり、わたしがフェルア強化計画を練っていると、ギルド長室の扉が勢いよく開かれた。




