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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第三章 ~燦たる英雄のアンビバレンス~
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3-2.王都!……王都?

いやー、物書きって奥が深いですね! 自分の底が見えましたよ……。

今後は不定期でぼちぼち更新していきます。




 朝ごはんを食べてテントを片付けて、その他もろもろの支度を済ませたら旅を再開する。


 今の季節は夏らしいんだけど、ここら辺は緯度が高いからなのか体感温度は三十度を切るぐらいだから、それほど暑さは感じない。


 直射日光から肌を守るために、わたしとフェルアはローブを羽織ってフードも被っている。というか、これが一般的な旅装束なんだけど。


 一応、わたしとフェルアのローブには涼しくなるよう魔法付与(エンチャント)をしてあるんだけど、もしかすると、温暖化の進んでいて夏に三十六度とかになる日本の方がおかしいのかもしれないね。


 この気温なのに頭上はからっと晴れた青空で、そこをキャンパスとして入道雲がもくもくと沸き上がっている様子はちょっと新鮮だと感じるよ。



 アンガルの町を出てから三日が過ぎ、順調に行けば今日のお昼頃にでも王都に着くかもしれない所まで来た。


 心配していたフェルアの体力のことなんだけど、筋肉痛になることも翌日に疲れが残ることもなく、一日あたり三十キロくらいは歩けている。


 彼女はわたしと違って魔法使い系だし、線も細いから身体が弱いのかなと思っていたんだけど、ひょっとするとこの世界の人たちは体力お化けなのかもしれないね。地球基準に当てはめると一般人でもアスリート並の運動能力がありそう。


 当初の王都に行く目的は開闢の樹海で手に入れた紅血林檎(ルージュ・マルス)神聖蜜柑(ホーリー・シトラトス)をこの時期に開催されるオークションで売るためだった。


 幻の果実、天上の宝玉なんて呼ばれるらしいこの二つをオークションに掛ければ、どっかの協会が発行しているカードみたいに人生七回くらいは遊んで暮らせるお金が手に入るということだったので、当時この世界に来たばかりで手元のお金が0だったこともあって参加することを決意した……んだけど、冒険者として開闢の樹海で活動している内に、かなりの金額が懐に入ってきていたりする。


 ぶっちゃけると今のわたしってそこらの木っ端貴族なんかと比べ物にならないくらいお金持ちなんだよね。


 だから、リヴァレンの町のスタンピードを阻止した報酬を国王からもらうことすらついでだし、専らギルドランクアップの申請が主な目的になっちゃってるんだよ。


 まあ、オークションには参加するんだけどね。お金はいくらあっても困らないし、珍しい魔法書とか面白そうな武器とか、他にも食指が動きそうな物があったら落札するつもりだし。


 あっ! それとわたしの服を買わないと。


 今までは女の一人旅ということもあって、絡まれたり面倒ごとに巻き込まれたりする予防として、服を変えたり魔法を使って男の姿に変装していたけど、今度のギルドランクのアップで高ランク冒険者になるからそれ系の心配が必要なくなるのだ。


 あぁ、長かった約二ヶ月。


 材質の悪い男物の服を無理して着たり、慣れない口調を意識したりと本当に面倒だったよ……。これで町中を堂々と歩けるね!


 あれ? そういえば――


「ねえ、フェルア。王都の名前って何?」

「えっ?」

「いやね? 今まで『王都、王都』って言ってきたけど、そういえば正式名称知らないなーって思ってさ。あっ! それと、この国の名前も教えて!」

「……」


 今更だけど、わたしって王都の名前どころか、この国の名前すらを知らないんだよ。だって、お店の人と世間話する中でも『王都』って略称しか使わないんだもん。


 それに、旅に出る前にリヴァレンの町で地図は買ったけど、『隣の○○の町まで南に徒歩だと~日かかりますー』だったり『大体ここら辺からここら辺まで山が連なってますよー』みたいな大雑把なやつだったんだよね。クオリティーとしては小学生に描かせた日本地図みたいなの。


 で、この地図には思いっきし手書きで『王都』ってだけ書かれていて、国の名前に至っては書かれてなかったんだよ。


 幸い町から町までは街道で繋がっているし、所々に道案内みたいな標識があるから困らないんだけど、この地図だけを頼りにしたら道に迷いそうなレベルだった。


 やっぱり軍事的な理由があるのかな? 正確な地形が分かっていると、もしも他の国から戦争ふっかけられた時に攻められやすくなる的な。


「あなたって旅人よね?」

「旅人兼冒険者だね。まだ二ヶ月とちょっとだけど」

「それなら尚更、行き先の確認は気を付けないといけないでしょ」

「すみません」


 怒られた。


 でも、行き先をきちんと調べておかなかったのは確かに不注意だったし反論できない。


 フェルアってこういうことろお姉さんというかお母さんっぽいんだよね。今朝も二度寝しようとしたら叩き起こされたし、長年の教会生活でクセがついてるのかな?


「まず、この国の名前はオルゲディア王国。南方には開闢の樹海、東側には海が広がっていて北には山脈、王都オルベスのある中央から西にかけて平地が続いているわ。雨は適度に降るって川とか湖も多いから飲み水には困らないし、クセのある料理も特にない暮らしやすい国よ」


 簡潔に要点をしっかり押さえているから、なかなか分かりやすい説明だ。


「飲み水が少ないとことかあるの?」

「西方の小国には一年に数回しか雨が降らない所があるらしいわ。なんでも、国土のほとんどが砂らしいわ」


 こっちにも砂漠があるのかな? 水に関しては魔法でどうとでもなるから見てみたいとは思うけど、日差しが強そうだし、熱そうだしで、観光先としてはパス……いや、魔法を使えば行けるか?


 砂漠の国、オアシス、古代文明……アリかもしれない。


「それとさ、この国の周辺国ってどうなってるの?」

「西方にはさっきの砂の国みたいに湿地帯の広がる国や高山帯にある国みたいな独特な文化を持つ小国家群が存在しているわ。北の山脈の向こうにはヴェルシュ帝国があって、この王国とはいがみ合ってるわね。山脈があるから直接的ないざこざは数年に一回くらいだけど、西の小国家はいくつか侵略されているし、いい噂を聞かない国よ。それと、海の向こうには島国が点在していて、その先には別の大陸があるの。でも、私はその辺りに詳しくないわね」


 いや、それだけ聞ければ十分だよ。説明聞いててなんか社会の先生みたいだったし。


 王都での予定が終わったら小国家群とか東の島国とか行ってみたいな。


 湿地帯が広がる国なんて秘境みたいなところまで入っていけば絶景が見られそうだし、高山帯の国はマチュピチュみたいになってそう。特に東の島国はハワイっぽい雰囲気を味わえそうだから楽しみだ。 


 もちろん、フェルアの意見を聞いてからだけどね。


「ありがと。色々聞けて面白かったよ」

「それは良かったわ。今度からは行き先の下調べをしっかりしなさいね?」

「……善処する」

「……」

「そんなジト目で睨まないでよ。だって、わたしの行動って基本的に行き当たりばったりで、面白そうなことが第一優先だもん」

「最初に貴女に会った頃は理性的な印象だったのに……」


 甘いねフェルア、人は見かけによらないんだよ!


 いつもは猫被ってるから気づかれないけどわたしは元々快楽的な性格だし、ファンタジー世界に転生したり魔法が使えるようになったりで浮かれた気持ちがなかなか抜けないんだよね。ほんと、毎日が新鮮で楽しいったらないよ! ビバ青春、ビバ異世界!


 そんな感じで出発して小一時間もすると、前方に白い塊みたいな物が見えてきた。


「もしかして、あれが王都?」

「どれ?」

「ほら、あの白いの」


 フェルアには見えなかったみたいで身体強化の魔法を詠唱して遠くを見る。


「ええ、あれが王都よ。正しくは王都外周にある壁ね」

「壁?」

「王都には他の町よりも頑丈な対魔物用の壁があるの」


 こんなに離れたとこから見える壁をどうやって作ったんだろ……って魔法か。本当、便利な代物だよね。


 あれだけの物を作るとなると魔法使いを何百人も集めて数年くらいかけたんじゃないかな?


 ……外壁剥いだら単眼巨人(サイクロプス)とかトロールとかの魔物が復活するとかないよね?


 あれ? そもそもトロールって魔物なのかな? 詳しくは知らないけど、どっかの伝承だと妖精の一種とか言われてた気がする。


「あのさ、魔物と人の違いって決まってるの?」

「……どうしてそんなことを聞くの?」


 うん? なんかフェルアの口調が堅い気がする。


「ちょっと前に会話することができる魔物と戦ってさ」

「その魔物って?」

天帝夜叉(オーガ・ロード)

「ちょっと! それって確か禍災級の魔物じゃなかった!?」

「よく知ってるね、そうだよ」


 禍災級の魔物なんて何十年、何百年に一回出るか出ないかのマイナーな魔物なのに。


 ……ああ、わたしが前に買った魔物図鑑に載ってたっけ。本好きのフェルアはわたしから借りてよく読んでるけど、結構細かいとこまで見てるんだね。


「そうだよ、じゃないわよ! 何でそんな危険な魔物と戦うことになってるのよ」

「言ってなかったっけ? 開闢の樹海でスタンピードが起きて、その時に戦ったんだよ」

「聞いてないわよ。それにしても、スタンピードが起こったことは噂話で知ってたけど、まさか禍災級の魔物がいたなんて……あれ? ちょっと待って。シオンは天帝夜叉オーガ・ロードと戦ったのよね?」

「うん、強かったよ。シリウスの援護がなかったら腕の一本は切り飛ばされてたかもしれないね。あの時はありがと」

「グァン」


 わたしが改めてお礼をすると、シリウスは「恐縮です」とでも言うように返事をした。


 当時はバカみたいに溢れるマナとハイスペックな身体能力でゴリ押しする戦闘スタイルだったからな~。

 今は強い魔法や戦技をパパッと使えるようになったから、もし禍災級の魔物が出てきても、今度は楽に倒せると思う。 


「……もう、何があっても驚かないわよ。ええっと、何の話をしていたのだったかしら?」

「魔物の定義は何? って話」

「そうだったわね。魔物は魔石を体内に持っていて、人――人族やエルフやドワーフなんかは魔石を持っていない。それが人と魔物の違いよ」

「妖精とか精霊ってどうなるの?」

「妖精も精霊も魔石を持っていないけど、妖精は魔物で精霊は人ではないけど魔物でもない、みたいな位置づけかしら?」

「魔石を持ってなくても妖精は魔物なの?」

「エルフもドワーフも元々は魔物の位置づけだったの。結局は人族に対して友好的かそうでないかで判断することになるわ。妖精族は魔物と同じで人に対して攻撃的な個体が多いの」

「曖昧なんだね」


 結論としては襲ってくる生物は片っ端から倒せば良いと。


 それにしても人族、やっぱりエルフとかを迫害してたか。過去の人族は一体何を見て、何を考えていたんだろう? エルフ耳、すっごい萌えるのに。


 その後はフェルア先生にこの世界の社会常識を教えてもらう他、今日の昼ごはんは何を食べるか、とか、わたしの冒険者活動の武勇伝、もしくは失敗談とかの他愛ない話を続けていると、あっという間に時間は過ぎていった。


 目的地の王都はもうすぐだ。



シオン「エルフ耳、最ッ高!!!」

フェルア「この悪寒は一体……」

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