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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第二章 ~嘆く少女のアウフヘーベン~
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2-29.『青空の下で』

ホームを開いたときに感想が届いていたり、たまに評価を見たときにポイントが増えてると嬉しくなります。ありがとうございます!



「あーっ、マリアンヌ! てめぇ、やりやがったな!」

「ふふん、ニコラは普段、わたしたちに迷惑ばっかかけてるんだから、これはそのお返しよ」

「ふざっけんじゃねぇ! それはおれが育ててた肉……って、ポール兄ちゃんまで!?」

「……まだ火が通ってないな」

「当たり前だ! その肉は裏返したばっかで、焼いてる最中だったんだぞ!」


 青空の下、セトリル教会の広い庭では、子どもたちの楽しそうな声が響く。


 今日のお昼ご飯のメニューはバーベキューだ。


 人数が多いので、3つのグループに分けて焼いている。


 このバーベキューはわたしの送別会の意味も込められているらしいので、このまえシリウスが倒した堅牢(バーリー)剛角(・ホーン・)水牛(バッファロー)の肉をメインに、わたしが市場で買ってきた野菜や海鮮などを加えて盛大にやっている。




 今日でリード商会支店長が企てた一連の事件が集結、もとい、わたしが無理矢理終わらせてから二日経つ。


 わたしが魔法使いのイザベルを倒した後、リード商会所有の客船は最寄りの港に寄港した。


 まぁ、あれだけ魔法をぶっ放してどんちゃん騒ぎしてたもんね。船長の人が言うには、「この船がいつ沈むか気が気じゃなかった」とのこと。マジでごめんなさい。


 着岸してからはイザベルの仲間で船員に紛れ込んでいた子悪党どもを地元の騎士の皆さんと一緒に仲良く捕縛した。


 最初はわたしも捕まりそうだったけど、アンガルの町の騎士に協力者の証としてもらった短剣を見せたらすんなりと信じてくれた。


 その翌日。


 アンガルの町の領主に会いに領主邸にわたしとフェルアが呼ばれた。


 そこで何かと便宜を払ってくれていた騎士が、なんとこの国の第一騎士団の団長ということを知らされた。と言っても、大体予想はついてたけどね。


 実はこの団長、1番初めに会ったのが冒険者ギルドでチンピラ(ジム)に絡まれたときの兵士Aなんだよ。


 わたしが襲撃者たちを連行していったときもこの人が真っ先に詰め所から飛び出てきたし、預かった短剣もグリフォンっぽい意匠が彫ってある高そうなヤツで、流石に怪しいと思ってた。


 何かと絡んでくる理由を聞いたら、どうも彼はわたしの監視役? 一応、王都に着く前に人となりとかを確認するために行動していたらしい。


 本人は「シオン様はこの国の英雄ですから、問題があってはいけないとのことで私が派遣されました」とか言ってたけど、それは嘘だ。


 考えても見て欲しい。


 冒険者ギルドに登録して一ヶ月弱の若者がスタンピードの防衛に多大なる貢献をして、あまつさえ国を滅ぼせる力を持った魔物と単騎で殺り合ってそれを討伐した。


 現代日本で例えるならば、東京湾に大怪獣が出現したようなものだ。


 そんな怪しいヤツに監視の一つや二つ付けるのは当たり前だね。


 でも、ここで騎士団の団長(グレン)なんてビックネームが出てきたのは、単にコイツの好奇心(せいかく)だと思う。


 だって、監視要員なら専門の暗部とか絶対いるのに、わざわざコイツが出張ってくるんだし、町中で下っ端の兵士の格好してほっつき歩いてんだもん。


 クリス君と同じ爽やか系のイケメンだけど、なーんか企んでそうなニコニコ顔がすべてを物語っている。


 思わず「部下が大変そうだね」って呟いたとき、一瞬だけ頬がピクッてなったから確定だ。


 そして領主、エドガスト=アンガル子爵。ハッキリ言って1番の強者はコイツだった。


 服の下からでも分かる筋肉。


 座った状態でわたしと同じくらいの身長。


 極めつけに頬傷。


 文字通り強者と言った風情だ。


 部屋に入ったら見た目将軍な大男がソファーに腰掛けてるんだよ! わかる!? 


 このときのわたしの気持ちを理解してくれる人なんていな……フェルアがいたわ。


 文官とは一体……なんて戦慄していたら、この人ホントに元軍人だったよ。


 平民の出で剣を志し、一兵卒から千人隊長――騎士団の中でも上の方の役職らしい――を任されるまでになって、怪我を理由に引退する際に今までの功績を評価されて貴族位と領主の地位を現国王から賜ったらしい。 


 そんな経歴だから経理とかにも疎く、今回のような横領を許してしまったらしい。


 そのことに関しては、セトリル教会を代表して来たフェルアに対して終始頭を下げてたよ。


 今回の件を鑑みて、子爵の補佐を新しく王都から派遣し、教会や市民から余分に取っていた税金などは私財を投げ打ってでも返すと言っていた。


 彼の誠実な人柄も領主に任命された要因なのかもしれないね。




「よっし! 焼けたよ、シリウス」

「グァン!」


 鉄板の上でほどよく焼き目の付いた分厚いステーキを皿に乗せてシリウスに差し出すと、彼女飛びつくようにして食べ始めた。


 いい食べっぷりだね!


 一連の事件の発端である黄昏時の襲撃事件で襲撃者の内九人も戦闘不能にしたシリウスには、影の功労者として堅牢(バーリー)剛角(・ホーン・)水牛(バッファロー)の肉の部位で1番美味しいシャトーブリアンを進呈した。


 町の市場のおじさん曰く、一頭の牛からちょっとしか取れないけど脂の旨みがバツグンで、赤身なのにとろけるように柔らかい食感とのこと。


 この話を聞いたときには思わずよだれが垂れそうになったよ。


 オススメされた食べ方は強火でサッと炙るようにしたレアらしいので、火の加減に注意をしながら焼いた。上手に焼けました!


「いつもありがとね、シリウス」

「グァン!」


 労いの言葉をかけながら相棒の頭を撫でると、彼女はとても嬉しそうに返事をする。


 そんなシリウスの尻尾は過去最高に左右に揺れている。癒やされるわー。


 希少部位なシャトーブリアンだけど、元となっている堅牢(バーリー)剛角(・ホーン・)水牛(バッファロー)が大きすぎるから、教会のみんなで食べてもおつりがくるほどにある。


 それに、血抜きは完璧に済ませてあって、戦闘時間も短かったから肉の品質も最高だ。




 そう言えば、問題の原因となっていたリード商会だけど、支店長オーモンドの悪事を包み隠さず公表し、関係者には丁寧な謝罪をして回っているらしい。


 その甲斐あってか、世間一般の認識では主犯のオーモンドが全部悪いみたいな風潮ができつつあって、商会自体のイメージダウンも最小限に押さえられている。


 セトリル教会にも新しくアンガル支部の支店長に任命された人自らが謝罪に来て、それと同時に迷惑をかけたお詫びとして子どもの好きそうなものを詰め合わせた菓子折と見舞金を持ってきた。


 わたしもそれを見てたけど、口止め料的な感じは全くなくて、むしろ誠心誠意謝っている印象を受けた。




「おいしー!!!」

「よく噛まないと喉に詰まらせますよ」

「クリスお兄ちゃん、お肉もう一枚焼いて!」

「野菜も食べないと大きくなれないよ」


 はしゃぐ子どもたちをナターシャさんやクリスたちが宥める声が聞こえる。


「シオンお姉ちゃん、お肉とって!」

「はい、どうぞ」

「ありがとう!」


 そうそう、あの事件の後からわたしは変装をやめた。


 お世話になってるセトリル教会のみんなを騙しているようで気が引けたし、ちょうど良い機会だったから正体を明かしてみた。


 その時の「だれ?」みたいな反応はすっごい面白かった!


 それに、変装し続けていると男物の服装じゃなきゃいけないからズボンをはいてないといけないんだよね。


 フリルのいっぱい付いたスカートだったり、清楚系な白いワンピースだったり、前世ではそういったかわいい服がが似合わなかったから、休日はあんまりお洒落しなかった。


 だけど、せっかくかわいい容姿で転生したんだから冒険者として活動していないときくらいはお洒落がしたい!


 と言っても、今の手持ちの服は男物も女物も、みんなイマチなのばっかりなんだよね。


 ここの服ってどれも古くさくて、わたしの通ってた地方の高校制服がものすごく可愛く見えるレベルなんだよ。


 ファンタジーアニメとかで見る町娘の衣装とかみたいな、作業着じゃないけど実用性重視って感じ?


 魔法使えば服も作れるけど、生憎とわたしにはデザイナーのセンスは備わってなかったみたいで、頑張っても着慣れた制服が精々だった。


 流石にそれで町を歩こうとは思わないから、王都に着いたら真っ先に買い物をしようと思う。


 おっと、続々とお肉が良い感じになってきてるね。


 さっきから子どもたちに配膳してばっかりで一口も食べてなかったから、どのくらい美味しいか楽しみだ。


 いざ、実食!


「――シオン」


 焼き肉サイズにカットした肉を丁度頬張ろうとしたその時、隣のグループで同じく配膳をしていたフェルアが話し掛けてきた。


 何かを決意したような顔で、妙に熱のこもった声でわたしの名前を呼ぶ。


 考えられる次の言葉としては「ここに残って欲しい」で、次点で「好きです!」かな?


 なーんて冗談は置いといて、彼女の話を聞くことにしよう。


「私ね、シオンと一緒に旅がしたいの」


 ……えっ?



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― 新着の感想 ―
[一言]  ニコルたちはまだ、シオンの本当の強さを知らんのだな。
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