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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第二章 ~嘆く少女のアウフヘーベン~
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2-20.『二振りの魔剣』


「……テメェ、いつから気付いてやがった?」

「最近どこかで見たことあるような攻撃一辺倒の三流剣術を晒しておいて、どうして私に気付かれないと思った?」

「一々癇に障るヤツだぜ」

「おっと? ペンディングの腕だけは一流かな?」

「俺をここまで虚仮にしてくれた野郎はお前が初めてだ! 楽に死ねると思うなよ!!」


 どこのヤクザの言葉だよ。

 そしてわたしは野郎じゃない。何度も言うが、花も恥じらう乙女であって(以下:略


 あの後兵士から聞いた話だと、コイツはどうも王都にいたときにもいろいろやらかしていたみたいだし、今回の襲撃も手慣れている節があるから闇討ちは初めてじゃ無さそうだ。


 はぁ……。


 リーダーなら私たちを襲う理由を何か知ってるんじゃないかなー、とか思ったんだけど、コイツは絶対情報なんて持って無さそう。だって、会話からして脳筋で頭悪い感じだし。

 後でシリウスが倒した方から適当に選んで拷も――んんっ、軽く尋問すれば良いか。


 顔を真っ赤にして大剣を振るうジムだが、その攻撃はわたしに掠ることさえしない。


「威勢が良くて結構。それで? 達者なのは口だけか?」

「クソッ! ブッ殺してやる!!」


 いやー、こうやって強キャラ感を演出しながら敵を煽るの超楽しい!! 舐めプはしない主義だったんだけど、これは嵌まるわ。額に青筋って浮くもんなんだね。


 いや、別に遊んでるわけじゃないんだよ? こうやって圧倒的な実力差を見せつけた後で倒すことで、二度とわたしに立ち向かってくることがないように心を折るっていうことと、対人戦に慣れるという重要な目的がある。あったんだけど、それらは今では完全に建前になってる。

 まあ、あんまし油断しすぎても、某アニメの慢心王様みたく手痛い反撃を食らいそうだけど、わたしのこれは余裕だから大丈夫!


 ジムは身体強化を使ってさっきよりも激しい剣戟を浴びせようとしてくる。ていうか身体強化、できたんだ。

 でも、これぐらいの斬撃なら見てからでも余裕で避けれ――


「『潰せ』、ギデオベルグ!!!」


 ――あっ、ヤバ。


 ジムが叫ぶと同時に大剣を振るうスピードが今までの比じゃないほどに速くなる。


 毒々しい紫色をした刃がわたしを切り裂こうとした瞬間、咄嗟に身体強化を使って木刀を体との間に滑り込ませた。

 直後、右手を途轍もない衝撃が襲う。慌てて身体強化をもう1段階強くしたけど10メートルくらい吹き飛ばされてしまった。


 背中にものすごい風圧を感じつつも、左手で地面を押してワンクッション取って崩れた体制を立て直す。


 二撃目は横薙ぎの一閃だった。

 さっきまでとは比べ物にならない速さで接近してきたジムは、野球のフルスイングみたいに、両手で持った大剣でわたしの顔面を真っ二つに切り裂こうとしてくる。


 目の前に大剣が迫る。


 わたしは冷静に大剣の腹を下から木刀で打ち付けて軌道を逸らす。なかなか重い一撃だけど、これぐらいならいけるだろう。

 頭上を鈍い風切り音が通過していく中、返す刀でがら空きになったジムの脇腹に一撃をお見舞いしてやる。今度はジムが吹っ飛んでいき、少し離れたところで土煙を上げて止まった。


 でも、今の攻撃は決定打になっていない。


 反射的な攻撃だったから全力にはほど遠い威力なのは当たり前だけど、そこら辺の魔物なら一撃でノックアウトできる威力だった。ましてや人間ならばオーバーキルもいいところ。

 それなのに、わたしの手に返ってきたのは、肉を断つ感覚でも骨を砕く感覚でも無く、固いものを打ち据えたような痺れと反動だった。


 ジムを吹き飛ばした方へと視線を送る。


 土煙が切り裂かれた。その先にいたあいつは、一言で言えばキモ……異様な姿だった。

 大剣を持つ腕が真っ黒に染まり、右の頬までを覆っている。そんでもってなんか赤っぽいオーラまで出てるし。

 そして、一番ヤバそうなのが大剣の方。刀身に血管のような模様が蠢いていて、まるで生きているかのように脈動している。


 ハッキリ言ってキモい。今までは「魔力的な何かが脈動している剣ってカッコいい!」なんて思っていたんだけど、実際に見てみると単にグロいだけだわ。

 うおわっ!? あの血管みたいなの、なんかウネウネしてる! マジで無理なんですけど!!


「ハーッハッハッハ!! 力が! 力が漲ってくる!!」


 いやいや、そんなありふれた口上垂れる前に鏡見てみろよ。あんたの腕、すごいことになってるよ? そのウネウネしたの、腕に浸食してきてるよ?


 多分、アレは魔剣でしょ。それも一度鞘から抜いたら人を殺したくなるとか、願いを叶えた代償に魂をもらってくような、使用者に厄を運ぶヤツ。

 『魔法』が宿ってるんじゃなくて、邪悪なモノって意味での『魔』が取り憑いている、正しい意味での魔剣。

 効果は、取り憑いた所有者の力を限界を超えて引き出す、みたいな感じかな。


 手元を見ると鋼鉄ほどの強度があるはずの木刀がバキバキに折れていた。これじゃあもう使い物にならないな。


 壊れた木刀をマジックバックに仕舞い、代わりに新しい得物を取り出す。


 それは以前にジムが使っていた大剣をわたしが魔改造した一品。

 コイツの素材は魔鋼鉄って言って、どうやら鉱石がマナと結びついてできる物らしい。ちなみに、名前に鉄が付くけど厳密には鉄ではないとかなんとか。その辺は聞いてみたけどよく分からなかったから聞き流した。


 武器屋に行って見てもらったらダマスカス鋼じゃないと言われてがっかりしたけど、なんでも魔鋼鉄は質が良い物ほど綺麗な模様が現われ、この大剣レベルの物ならミスリルに引けをとらないほどの強度があるそうだ。ホント良い拾い物した。


 そして、最大の特徴がマナとの親和性が高い点。魔法剣を作ろうと思っていたわたしにとって、この性質はありがたかった。

 通常、普通の素材を使った場合は魔法刻印による魔法付与は1つしかできないんだけど、この大剣には3つもできた。


 ああ、ここまで魔法刻印をするのにどれだけ大変だったことか。

 刻印する位置によってはそれぞれの効果が干渉し合うから、木刀を何本も折りながら練習したよ。あれ? 最近、木刀の消費量が半端なくない? この一週間で10本くらいは折ってる気がする。


 とにかく、刻印魔法による魔法付与でこの大剣はこれでもかというほどに強化されてる。

 コンセプトは実用性。『切れ味強化』に始まって『耐久強化』、『重量増加』だ。差し詰め小学生の考えた“さいきょうのけん”かな。

 良く切れて、壊れなくて、重量があれば大剣は強いだろう。


 さて、試作品の試し斬りには最適な相手だ。わたしの『魔剣』とあっちの『魔剣』、どっちの方が強いのか力比べといこうか!


 今度はこちらから攻撃を仕掛ける。青い残光を牽きながら月光草の花畑の上を疾走する。

 ジムは魔剣からもたらされる全能感にすっかり有頂天になっているようで、こちらの攻撃にカウンターを決めるつもりらしい。


 でも、それは悪手だ。


 二振りの大剣がぶつかり合い、耳障りな金属音が静かな夜に響く。赤と青の火花が混ざり合い、周囲を紫色に照らした。


 力が拮抗していたのは一瞬だった。

 大きな弧を描き、慣性のままに振るわれた青色の大剣はジムの持つ紫色の大剣を弾き飛ばした。

 しかし、そこで攻撃は終わらない。身体強化の重ね掛けで高められた筋力にものをいわせて、直ぐさま切り返しの一撃を放つ。

 ジムは避けられないと悟るや否や、剣を握っていない手でガードをする。全く、わたしも舐められたものだ。いくら魔剣で身体能力とかが高まっていても、この一撃を片手で防御できるほど甘くない。

 結果として左腕が潰れたジムは距離を取ることになる。


 それからは一方的な戦いだった。

 力で負けているのに片腕すらも使えなくなったジムはわたしの攻撃を捌くので精一杯の有様だ。元々、大剣を巧みに操る技量はないし、パワーだけで勝負してきたツケを今になって払わされている形だろう。


「何でだ!? 魔剣を使っているのに、何で勝てない!!」


 ジムの息は荒く、随分と疲労が溜まってきている様子だ。その証拠に魔剣の強化も切れかかってきていて、あの赤いオーラも最初に比べるとかなり薄くなっている。


「『狂気狂乱斬(マーダー・ハッカー)』!!!」


 ジムが苦し紛れに戦技を放つ。

 あいつの持つ大剣からは今までで一番激しく赤い光が迸り、敵をを喰らおうと襲いかかる。

 だけど、その刃が血を浴びることは二度と無い。


「『竜斬剣(ドラグバスター)


 高速の斬り込みがジムの禍々しい魔剣を容易く切り裂き、それだけでは飽き足らず、足元の大地さえ大きく陥没させた。


 土煙が晴れた後にはジムが白目を剥いて横たわっていた。魔剣とかなりのレベルで一体化をしていたから、そのリンクが切断された反動で気絶しているんだろう。

 死んではいないけど、あんな無茶な方法で力を解放したんだ。後遺症で冒険者を続けることはできないだろう。続けようとしても当分の間は絶対安静、その後は牢屋生活になると思うけど。


 結論を言うと――


「実力不足だね。武器のスペックに頼るんじゃなくて、まずは自分自身を頼れるくらい強くならないと」


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― 新着の感想 ―
[一言] 「実力不足だね。武器のスペックに頼るんじゃなくて、まずは自分自身を頼れるくらい強くならないと」 やはり、この前絡んできたときに、しっかりと処理しないから二度手間になりましたね。
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