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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第二章 ~嘆く少女のアウフヘーベン~
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2-13.ルーン商品の売り込み


 教会での生活も4日目となると、この生活には流石にもう慣れた。


 「シオン兄ちゃん、かけっこしよ!」

 「お兄ちゃんはあたしたちとおままごとするの!」

 「魔法みせて!」

 「剣は! 剣はつかわないの?」


 嘘だ。全然慣れてない。


 朝ご飯が終わって庭に出たら小さい子たちがわたしの周りに集まってきて、一緒に遊んでくれだの魔法教えてくれだのわいわい騒いでる。わたしは身体のスペック高くても聖徳太子じゃないから、一斉にしゃべりかけても4つぐらいが限度だよ。魔法なら100は操れるのになんでだろ?


 それにしても頭痛い。子供の声がすごい響く。


 昨日は夜遅くまでルーンの製品を作るための道具を作って、さらには調子に乗ってルーン文字を刻んだ試作品をいくつも作るんじゃなかった。

 スプーンに『豊穣』のルーン刻んでどうするの?銀のスプーンにちなんで作ったんだと思うけど、木製のに刻んでもね……。

 

 深夜のハイテンション、恐るべし。

 

 「ごめんな。今日は忙しいんだ」

 「「「えぇーっ!」」」

 「昨日みたいにあそんでよー」

 「かけっこ! かけっこ!」

 「魔法! 魔法!」

 「こらこら、服引っ張んない。痛い痛い! 誰だ、髪引っ張ってるの!」


 全っ然子供たち離れてくれない。昨日、一時間ちょっと遊んだだけなのにここまで懐かれるとは。

 ちびっこのコミュ力、恐るべし!


 「こら、あんまりシオンお兄ちゃんを困らせたらいけないわよ」

 「「「はーい」」」

 「助かったよ、フェルア」

 「それで? 夜に作ってたルーン文字の商品を売り込みに行くの?」

 「そう。それが終わったらルークたちの指導」


 売り込みに行くのはリード商会だ。あそこは個人の作品――家具や武具なども仲介してくれるみたいで、週に一回、教会の魔法薬(ポーション)を納品しているらしい。

 フェルアにどうやって売ろうか相談した時にリード商会のことを教えてもらったので、わたしが昨日フェルアたちが作っていた魔法薬(ポーション)の納品に行くついでに定期契約の申請をしようと思う。


 ナターシャさんには今朝相談して許可はもらってある。というかお願いされてしまった。

 養護施設で暮らす子供たちに、少しでも貧しい思いはさせたくないと言うことだ。いいお母さんだね。


 現物をいくつか見せながらプレゼンをするぐらいだから、かかる時間は1時間かそこらだと思う。それだとかなり時間が余るので、残った時間でルークたち冒険者組の活動を見に行くことにした。


 「それじゃあ、行ってくるよ」

 「行ってらっしゃい、シオン」


 なんか新婚の夫婦みたいだ。会社に出勤する旦那さんとそれを見送る奥さん的なの。


 ふぇるあってば将来は絶対いい奥さんになるよね。料理、洗濯、裁縫と家事全般はできるし子供の世話だってお手の物だし。

 わたしと同じ17歳だっていうのにちょっと高めの身長と、出るとこは出て引っ込んでるところは引っ込んでるプロポーション。町に出た時なんか男が二度見すること間違いなし。


 改めて見ると具体的にどことは明言しないけどすごい。ホントすごい……。


 「……羨ましい」

 「ん? 何か言った?」

 「何でも無い」


 かなりの敗北感を味わいながら、わたしはフェルアから魔法薬(ポーション)の瓶を入れた箱を受け取り、町に向かった。





 ◇





 リード商会一階にある会計のカウンターにいた職員に話しかけた。


 「魔法薬(ポーション)の納品に来ました」

 「拝見いたします」


 格納鞄(マジック・バック)から魔法薬(ポーション)の入った箱を取り出し、会員カードのようなものを渡した。


 このカード、実は結構すごいものだったりする。

 カードには『誰が・何を・どれだけの量・いつまでに納品するのか』という項目が記録できるようになっていて、情報の書き換えもできる。これは冒険者ギルドのギルド証と同じ仕組みだ。


 電子機器のないこの世界では画期的なアイテムであるこれを、リード商会では登録者に無償で貸し出している。

 もちろん、紛失した場合は弁償することになるが、一枚作成するのにも大銅貨が必要になるものを貸し出すのは、流石は一流と呼ばれる商会だと言わざるを得ない。


 何でも、紙でのやり取りだと管理するスペースを取られるし、記載漏れも多いと言うことでトップのお偉いさんが業務の効率化のために所々でこの様な仕組みを取り入れたそう。


 「確認が終わりました。こちらが受領書とカード、そして金額となります」


 魔法薬(ポーション)の確認が取れたのか、しばらくすると職員が奥の部屋から戻ってきた。

 えーっと……、うん、計算は合ってる。仕事が早い。

 この職員も接客のスキルが高いし従業員の教育にも力入れてそう。


 支店なのにここまで質が高いって、ひょっとしてこの商会って転生者が経営とかしてる? いや、それはこの世界で生まれた人に失礼か。


 職員から受領書などを受け取って鞄にしまう。


 「すみません、新規契約ってできますか?」

 「はい、可能でございます。商品のとするものはお持ちですか?」

 「あります」

 「でしたら、あちらの部屋でお待ちください。担当の職員を向かわせます」


 言われた部屋に向かうと、そこは小さな会議室だった。調度品はシンプルなものがほとんどだけど、貧相というより洗練された印象がある。


 ここまで来てなんだけど、これって人生初商談なんだよね。クラスで発表することですら貧血で倒れそうになるのに大丈夫かな……。

 よし、魔法に頼るか――って無理じゃん! わたしはイメージできるやつしか使えないし!


 「お待たせいたしました」


 あたふたしていたら後ろのドアが軽い音とともに開かれる。どうやらタイムリミットのようだ。


 仕方ない、勢いで乗り切ろう!


シオン「くっ、これがコミュ症の影響かッ!」

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