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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第一章 ~哮る覇王のレゾンデートル~
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初めての魔法(2)


「って、ボーッとしてる場合じゃない!」


 目の前の光景に呆けていたわたしは、急いで炎が消えるように魔力の供給を止めた。


 それでもなお、水面を這うように燃える炎は治まることを知らない。


 ならばと思い、今度は炎に向けて消えるようにイメージを与えてみる。


 するとようやく燃え盛っていた炎は蜃気楼のように少しずつ薄れていき、最後には波1つない元の水面が現われた。


 周囲に静けさが戻る。


 まるで何事もなかったかのような穏やかな空気が漂っているけど、わたしの使った魔法は確かな爪痕を残した。


 岸辺を見ると、これだけ大きい湖にも関わらず水かさが数センチくらい減っている。


 ……よく考えたら、めっちゃ危ないことしてなくない?


 これだけの量の水が一気に蒸発したら、水蒸気爆発とか起こりそう。


 魔法で生み出した炎だったからなのか最悪の事態にだけはならなかったけど、一歩間違えれば転生してすぐに死亡、なんて笑えない展開になっていたかも……。

 

 





 怖ッ!


 誰があんな物騒なもん出したのは!



 ……ごめんなさい、わたしです。


 でも、あんなになるなんて思わなかったんだもん。


 『ファイヤーボール!』みたいな初級魔法がちょこっと出るだけでもよかったのに、いきなり天○みたいな即死攻撃出てくるなんて思わないじゃん。流石のイタ○兄さんもびっくりだよ!


 毎回あんな危険なの出してたら、わたしの行く先々一帯すぐに地獄絵図だ。いや、マジで世界が終わるかもしれない。


 だって、普通に水の上で燃えてたし、範囲攻撃だし、威力半端ない感じだったし。


 あの炎、わたし以外に消せる人っているの?


 もし町とかに行ってうっかりこれを使ったら確実に魔王に認定される。


 さしずめ『煉獄の魔王』とか?


 

 ……冗談じゃない。


 誰が好き好んで放火魔の真似事なんてしなきゃいけないのだろうか?


 いや、放火魔どころではなくノアの大洪水レベルの厄災だ。


 こんな危ないものは封印しよう。


 さもなくば世界が危ない!


 わたしの命も危ない!!


 人類の敵認定だけはゴメン被る!!!


 もっと手軽に使えて、かつ、ちょっとした攻撃に使える程度の威力ならば十分だ。


 間違っても竜とか魔王と戦争できる威力の魔法を普段使いにしてはいけない。


 その為にも練習が必要だ。


 今度は込める魔力をもっと押さえよう。


──イメージはライター……いや、マッチの火にしておこう


──童話の「マッチ売りの少女」が身体を暖めたような優しい炎


 やさしく、やさしーく。


 ……よし、いける気がする。


 掲げた手のひらには赤く輝く綺麗な炎が出た。


 今度のは普通に朱色をした普通の炎だった。


 次に前方へと手のひらを向けて魔力を注ぐ量を少しずつ増やしていくと、小さかった炎は勢いを増しながら放射状に広がっていき、水面に触れるとジューッという音と白い水蒸気が巻き上がった。


 今度は込めていた魔力を少なくしていくと、それに比例して勢いは収まり、最終的には消えてしまった。



 ……うむ、我ながらなかなかの出来だ。


 魔法の扱いは今ので大体わかった。


 威力も規模も、込める魔力の量を少なくして、優しくイメージすれば抑えられる。


 MPの用法、用量はしっかり守ろうって奴だ。


 どういう原理で魔法が発動してるのか分からないけど。


 そんなことよりわたしって天才じゃない?


 下手したら自爆とかする可能性もあるからね。


 ……あれ? 自爆?


 そう考えると魔法のことを全く知らずに「わーい、魔法だー!」とか思って安易に使ったわたしって結構危ないことしてたり?


 ……終わったことを気にしても仕方ないよね!


 魔法初体験だったけどちょっとやったら簡単にコントロールできたんだもん。


 これが結果、終わりよければすべてよし!

 

 一歩間違えれば災害レベルじゃすまないことになりそうだけど、コツは掴んだからよっぽどの事が無い限りは大丈夫なはず。


 多分……。



 ともかく火魔法クリアだ。


 せっかくだから他の属性も試そう!


 次に試すのは氷魔法だ。


――冷凍庫を開いた時に感じるヒヤッとした冷気をイメージ


――範囲はわたしの目の前の水面に絞る


 イメージを基に魔力を込めると、足元の付近から徐々にパキパキと小気味良い音を立てて湖の水面が凍ってゆく。


 地面は凍って無いから方向の指定はバッチリだ。


 岸からかなりの範囲が凍ったけど、この際それには目を瞑ろう。


 湖の上にできた氷を足で踏んでみると思ったよりも厚いようで、そのまま両足で乗ってもびくともしない。


 急激に冷やされた空気が凍って、ダイヤモンドダストみたいにキラキラと輝いていて綺麗だ。



 氷魔法クリア。


 今度はもう少し難しいのをやってみよう。


 わたしは後ろを振り向く。


 次の的は青々と生い茂っている一本の大木、その枝のひとつに狙いを定めて手を翳す。


――イメージするのは……扇風機の風でいいか


――刃になった風が木の枝を切り飛ばす


「『烈風刃(ウインド・エッジ)』」


 手元から風でできた不可視の刃が飛び出し、遠くにあった木の枝を切り飛ばした。


 ちなみに、魔法名は何となくで言ってみた。


 風魔法クリア。


 よしよし、これなら火魔法と違って周辺環境への被害を最小にすることができる。


 森の中とか物が密集してる場所で使っても安全だ。


 やっぱりわたしは魔法の才能あるのかも。


 万が一魔物とかが出てきたとしてももう安心だね。


 この世界にあるかは分からないけど、冒険者とかになったら一発で最上級ランクとかになれるかも!


 山奥で隠居暮らしってのもいいけど、人間一人で生きるのは結構難しい。


 食べ物とか衣類とか、薬だって必要だし娯楽も欲しい。


 やっぱりここは町とかに行こうかな?


 その前に動物でも狩って冒険者デビューに備えておこう。


 いざ、森へ!




 その前に……この服装をどうにかしないと。


 ワンピースに裸足だと、森を歩くのには危なそうだ。


 木の枝に服が引っ掛かって破けたり、尖った石を踏んで怪我をしたりと今の装備では心もとない。


 でも、わたしは天才魔法使い(笑)。


 この程度のこと、魔法でなんとでもなる!


 アレだ、創造魔法とかよく言うヤツ。こう、魔力を凝縮させてものを造り出す的な。


 そうと決まれば、さっそく実践してみよう。


 目を瞑り、両手の手のひらを上に向け前に差し出す。


――真っ白で肌触りの良いきめ細かいTシャツ。材質は綿100%で……あ、デザインは大手メーカーの通気性の良い着心地重視のヤツとかどうだろう?


 イメージが固まったところで魔法を発動させた。


 すると、わたしの手のひらのうえに銀色の魔方陣が浮き上がり、光の粒が凝縮したとおもったら綺麗に折りたたまれたTシャツへと変わった。


 その後は、ジーパンやスニーカーとかを魔法で作り出して着た。


 初めに着ていた白いワンピースは棄てるのがもったいなかったので、リュックサックを作り出してしまっておく。


 そういえば、わたしの魔力ってどれくらいあるんだろう?


 あれだけすごい魔法を使えるんだから低いってことはないはずだけど……、まあ、あって困ることはないし、機会があれば検証してみよう。


 よし、準備万端! いざ、森の中へ!


 新しい冒険がわたしを呼んでいる……なんか打ち切りのマンガっぽいかな?



愛「冒険者に、わたしはなる!」

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