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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第二章 ~嘆く少女のアウフヘーベン~
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2-6.古本屋には知識がいっぱい


 改めてやって来たアンガルの町。


 さっきの買い物ではろくに店を見る余裕がなかったからね。

 フェルアが町の案内をしてくれるというのでお言葉に甘えて付いてきてもらった。


 「どこに行く?」

 「じゃあ、町をぶらついてみて、しばらくしたら古本屋と魔法道具を扱ってる店に行きたいんだけど、場所って分かる?」

 「こっちよ」



 アンガルの町は結構広い。


 近くに魔物があまり出ないことから冒険者ギルドの規模は大きくないけど、近くを流れる大河は海にも繋がっていて、船を利用した周辺国との貿易で町はかなり発展している。

 日本で例えるとするならば、神奈川県みたいな感じだろう。


 そのため、王都の次くらいに人と物が集まってきていて、この国には無い珍しい物も多い。

 古本屋にもいい感じの魔法書だったり魔物の図鑑や植物図鑑、魔法薬(ポーション)の本とかがありそうな気がする。


 そういった掘り出し物や、この機会にアンガルの町でしか買えない物の他にも、町をぶらついてみていろいろな町や国の特産品を見て、今後の旅の目的地を決めたりとかしたいと思っている。




 まずやって来たのはさっきのバザールみたいなところ。


 それにしてもほんといろんな物あるな~。

 目が三つある深海魚みたいな魚に、足の生えたダイコンみたいな野菜――八百屋に売ってるから野菜でいいのか?――に、1メートルくらいのサイズで、黄色い地にイースターのお祭りみたいなしましま模様のある恐竜の卵みたいなの。


 「――え”! スライムって食べられんの!?」

 「みずみずしいくておいしいよ。暑い時は孤児院でもよく食べるわ」

 

 夏に食べるアイスみたいな感覚なのかな?


 それにしてもゲテモノ率高くない?

 まあ、この世界の食べ物ってしっかりと食材に合った調理をすれば基本的に美味しく食べられるし、ゲテモノほど美味いって言葉も聞いたことがあるから食べられるのだろう。


 ……わたしは食べないよ?

 食べられるって言うのと食べるって言うのは別だし、食べるにしても森とか洞窟とかで迷って食料が尽きかけて極限状態になったりした場合とか、この世界の食文化にもう少し慣れてからにしたい。

 

 そんな訳で、怪しい食材には手を出さず、出店で買ったクレープみたいなのをフェルアと一緒に食べている。


 しばらく歩いて次に来たのは被服関係の通り。


 魔物のいる世界だけあって、ここら辺は防具とかも売っている。

 軽くて動きやすい革製品の防具の方が多いかと思っていたんだけど、通りから店内を見た感じだと金属製品の防具と半々ぐらいの割合だった。

 魔物の身体能力は高いから革で作られた生半可な防具だと最悪一撃でやられるし、人間の方もマナを使った身体強化の魔法や技術があるし、元々の身体能力が高い人も多いから、金属製の重い防具でも需要があるんだろう。


 ちなみに、化学製品が見当たらないのは、そんなものがなくても自然の物質でどうにかできるからからだ。


 植物系の魔物なんて一体倒せば丈夫で耐久性も抜群といった上質な繊維がかなりの量とれるし、体液は染料にもなる。

 魔法を使えば何日もかかりそうな繊維をほぐしたりとか、染料にするための不純物の除去とか面倒な工程だってあっという間だ。

 容器やポリ袋なんかのプラスチック製品だって、ただの紙袋に簡単な保護や耐久アップの魔法を掛ければ、防水性能や耐久性能は一時的ではあるけど十分に上がる。


 わざわざ石油をどうこうした方が手間がかかるし、お金もかかってむしろ不便だ。


 だから、化学技術は発展する必要はないんだけど、弊害としてで機械技術の発展も遅れている。

 機械の方は全くない訳じゃないんだけど、全部細かい指令のし辛いゴーレムみたいなやつだから、大量生産や同一規格でものを作ることも難しい。


 だから、薄くてペラペラな藁半紙みたいな造りの甘い紙は安いけど、本とかに使えるしっかりした紙となるとちょっと高い。

 専門書とかになるとそれも顕著で、魔法書だと安くても大銅貨数枚――五万円くらいはかかることになる。


 それに、機械化の進まない理由の一つに魔物の脅威がある。


 工場を作るにしても、騒音だったりの公害の観点から民家からは離れた郊外に作る必要があるし、そうすると必然的に魔物の脅威にさらされることになる。

 周りを壁で囲うのにもお金がかかるし、折角作った壁も自然災害や偶然やって来た強めのモンスターに壊されたらたまったものではない。


 魔法って便利なんだけど、技術が発展しないことだけに関しては残念だよね。機械製品って便利だからさ。

 まあ個人的には、魔法を応用したハイテクなのかローテクなのかよくわかんない感じの技術体系が、ファンタジーっぽさを表してる感じがしてるから好きだったりする。




 被服関係の通りを過ぎると、雑貨関係を売っている区画にある古本屋についた。


 敷居面積が広くないから三階建てにして延べ床面積を稼いでいる感じだ。こぢんまりした感じとしなびた感じが合わさった店の外見がなんともいえない。


 「いらっしゃい」


 中に入ると童話の魔女みたいな、ローブを着た皺くちゃな顔のお婆さんが店番をしていた。


 部屋の窓は黒いカーテンによって遮られていて、明かりと言えば隙間から漏れた幾筋かの日光だけだ。

 天井まで届きそうなほど高い本棚にはびっしりと本が詰められていて、そこからあふれたものは床に堆く積み上げられている。


 ちょっと埃っぽいところとか古紙のかび臭さとか、雰囲気があっていいね! 魔女の隠れ家みたいな感じがする。


 「朝に見せた本なんだけどね、私の誕生日にナターシャさんに買ってもらったの。小さい頃だったからここの店の雰囲気が怖かったわ」

 

 あの本――『魔と魂魄と精神の執行者』ってここにあったのか。それなら他にもよさげな感じの魔法書とかが見つかりそうで期待が持てる。


 「私も手伝うわ。どんな本を探すの?」

 「魔法書と図鑑、それと魔法薬(ポーション)の本かな?」

 「なら、私は魔法書を探すわ。シオンは他の本をお願い」


 フェルアに手伝ってもらいながら、薄暗い店内を回って魔法書や図鑑を集める。

 以外にも本棚はきちんと種類別に整理されているから、求めていた本は簡単に見つけられた。


 その中から気に入った十数冊を買うことにする。


 フェルアの探し出してくれた魔法書は、ランクみたいなのがあって初級・中級・上級という感じに分かれていた。

 初級とか中級の魔法書は、例えるならば小学生の算数と中学生の数学のようなもので、どうやったら上手く魔法が発動するかみたいな基本的なことが中心に書かれていた。

 魔法が使える身としては今更そんなのを学ぶ必要はないので、三冊だけあった上級の火・水・風の魔法書だけを買うことにする。

 この本には魔法の呪文や魔方陣の仕組み、魔法文字の説明とかいろいろ書いてあって参考になる。


 フェルアによると上級の上に超級や特級と言った魔法書もあるらしいのだが、王城に国宝となって保存されていたりするため、一般にはほとんど出回らないそうだ。


 王都のオークションで出品されていたら落札しよう。



 魔物の図鑑はなるべく多くの魔物が描かれているものを、種類別に亜人・獣・鳥・水棲・爬虫類・植物・霊の七冊選んだ。


 折角だからシリウス(ブルータル・ヴォルグ)について調べてみようかな。

 えーっと、なになに~『冷酷餓狼(ブルータル・ヴォルグ)は十頭から二十頭の群れを作る狼型の魔物である。その気性は荒く、敵対した者や格下だと判断した相手には容赦なく襲いかかる。時に百を超える群れを作ることもあり、その場合の危険度は戦災級にも匹敵する』。


 いや、シリウスは孤児院で小さい子たちと結構嬉しそうに遊んでたんですけど。

 まぁ個体差って奴だね! 


 そう言えば天帝夜叉(オーガ・ロード)ってどうなんだろ?

 『天帝夜叉(オーガ・ロード)(オーガ)系の最上位に位置する禍災級の魔物。その強さは並の魔王よりも強いとされており、中にはスタンピードを率いて四つの国を滅ぼした記録まである』


 わたし、そんなのと戦ってたんだ。


 あれ? てことはわたしの強さって、最低でも国家を相手取れる程度はあるって事になるんじゃ?


 ……植物図鑑は野草と木の実で二冊、魔法薬(ポーション)関係は体力系、マナ系、病気治療用の薬品系の三冊、その他料理本や面白そうな内容のを買った。


 イヤー、ホントイイ買イ物シタナー。


 ……これからは人に魔法使うのは本当に気をつけよう。


 わたしは新たな決意を胸に、フェルアと一緒に古本屋を出た。



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