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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第一章 ~哮る覇王のレゾンデートル~
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幕間.ヤバい薬?


 うん、今日もいい朝。


 昨日は夜遅くまで魔法薬(ポーション)を作っていたけど、気分よく起きられた。


 それにしても魔法薬の効果はどうやって調べようか。


 どこかにいい実け……協力者はいないのかなぁ。


 一応舐めてみるかな?


 シリウスが朝食を食べている間の暇つぶしにちょうどいい。


 まずは買った回復用の魔法薬から。



 ……。


 ……口に入れたくない。


 真緑、いや、魔緑って言いたい感じの色のする液体からは草の汁を凝縮して発酵させて……端的に言うとすっごい臭い!


 でも、これは味の比較には必要なこと。

 効果は分からなくても飲みやすさってのは薬にとって重要だし。


 一滴でいいよね?


 薄い緑がかった白い陶器の蓋を開け、小指の先をほんの少し浸す。


 震える腕を必死で押さえつけながらゆっくりと口に運び、舌先で舐め取る。


「まっず!? 苦いニガイにがい!!!」


 ヤバいって! 口には入れていけない代物だよコレ!


 薬草? それとも魔石が悪いのかな?


 ともかくこれは経口摂取するためのものではない!


 水差しの水を木製のコップに注ぎ、口の中に広がる不快感を一気に流し込む。


 あぁ~、酷い目に遭った。


 取説には『傷口に直接振り掛けてください。絶対に飲まないようにしてください』って一言が必要なレベルだね。



 はあ……っ。


 自作したのは材料が一緒だし、味も変わらないのかなぁ。


 手元にあるのは透明なガラス瓶に入った、キラキラと輝く薄緑色の魔法薬。

 自ら発光しているそれは幻想的で、魔石と同じ色の青い粒は、さながら光り輝く星を閉じ込めているかのよう。


 これぞまさしくファンタジーの薬と言った体をしているのだが、味は……。


 誰かに試してもらうんだ。


 まず、自分で試さないと失礼だろう。


 少なくとも毒物かどうかは見極めないと……食べ極めないと?


 液体を小指に付け、意を決して口に含む。


「なんだ……コレは……」


 美味しい!


 爽やかな酸味と仄かな甘み、そしてそれらを引き立てる僅かな苦み。


 缶ジュースを飲むようにして瓶に直接口を付ける。


 うむ、毒ではないな。


 魔法薬は一本無くなってしまったが、まあいい。


 後は効能が良ければ、なお嬉しいんだけど。


 ギルドで募集してみようかな?


 怪我人の一人や二人くらいはいるだろうし、それがいいかもしれない。


 朝食を食べたら早速行くとしよう。




 ◇



 

 身支度を整えて部屋を出て一階に降りる。


「おはようございます、朝食は何になさいますか?」


 カウンター席に着くと、ウエイターの人がメニューを聞きいてきた。


「パンとサラダ、それと何か一品」

「パンは何になさいますか?」

「食パンがあればそれで」

「かしこまりました。食パンとサラダ、それとベーコンエッグなどで如何でしょう?」


 それでいいとウエイターに告げて代金を支払う。


 しばらくすると料理が運ばれてきた。


 食堂には人が少なく落ち着いて食べられる。


 パンに手を着ける前にポーチから黄色い液体の入った一つの瓶を取り出す。

 これは昨日採集した眩耀蜂蜜(グローリー・ハニー)だ。


 わたしは食パンにはジャムを付ける派だったんだけど、このハチミツなら美味しく食べられる。


 レンゲハチミツってなんか苦手だったんだよね。


 甘くて美味しいけど、ちょっとくどい感じがしてさ。


 いい感じに薄茶色い焦げ目のついた食パンに眩耀蜂蜜を垂らす。


 黄金に輝く食パン!


 絶対美味しいやつだ!


 いっただっきま~す♪


 焼きたてのパン特有の小麦の甘さとハチミツの甘さが絡み付いて、いつまででも噛んでいたくなる。そして、鼻を抜けるフルーティーな香り。


 あ~、幸せ。


 この甘さはスイーツと言っても過言ではない。


 日替わりらしいサラダのコールスローの方もいい感じで、ベーコンエッグはほどよい半熟加減。


 シャキシャキ感のある野菜と赤みがかった卵からは食材の新鮮さが見て取れる。


 この宿を選んで正解だったよ。


 わたしはサービスで付いた紅茶を飲みながら、一人、食後の余韻に浸っていた。






 ◇






 さてと、ギルドに着いたが誰に薬を試してもらおうかな?


 怪我をしている人は……なんか避けられてね?

 ギルド内を見渡すとあからさまに視線を逸らしたり、急に話を始めたり、終いには口笛を吹く輩までいた。


 やっぱあれか? ギルマスとの模擬戦がいけなかったのか?


 これじゃあ協力してくれそうな人が見つからな――


「おう! よく来たな新入り! そんなとこ突っ立ってどうした?」


 ちょうどいいところに狼獣人さん!


魔法薬(ポーション)を作ってみたんだが効果を試したくてな。協力してくれそうな人はいないものかと」

「なんだ、そんなことか。だったら俺がやってやるよ。昨日の解体でへましてな、危うく腕を切り落とすとこだったぜ」


 ハッハッハ、と笑いながら腕を捲って見せる狼獣人さん。


 そこには血の滲んだ包帯が巻かれていた。


「なら頼もう。コレを飲んでみて欲しい」

「あん? こいつは魔法薬なのか?」

「効果は分からないが味は良かった」

「確かに匂いは悪くねぇ。じゃあいっちょ試してみるか」

 

 自作しておいた陶器製のそれっぽい瓶に入った魔法薬を差し出す。

 普通の見た目と違うので不思議そうに見つめていた狼獣人さんだったが、なんの疑いもなく一気に飲み干した。


 匂いで毒物かどうかが分かるのだろうか?

 空港とかで活躍している麻薬探知犬を想像してしまった。


「なかなかうめぇな! 何入れ、ぐっ、があぁぁぁぁあっっ!!!」


 突然、足を押さえて蹲る狼獣人さん。


 グチャグチャとかメキメキとか音が聞こえてる気がする。


 その光景に、周囲にいた冒険者も思わず立ち上がる。

 

「どうした! なにがあった!」


 二階へと続く階段からギルマスまで現れた。


 痛みに喘ぐ狼獣人さんだったが、しばらくするとそれも止んだ。


 辺りを静寂が包む。


「大丈夫、ですか?」


 思わず敬語口調出ちゃった。


 もしかして、人間には無害だけど獣人族(セリアンスロープ)には猛毒でした、ってオチとかないよね!?


 なんか反応してよ!


 そんな心配は杞憂に終わり、狼獣人さんは不意に立ち上がる。


 そして、わたしの肩を掴んだ。


「……ありがとう」

「えっ?」


 滂沱の涙を流す狼獣人さん。


 ……わけがわからないよ。


 おっと、思わずネタに走ってしまった。


「お前のくれた薬のおかげおかげで足が治った」

「なんじゃと! 本当か!」

「え~っと? 足って?」

「こいつはのう、昔魔物に足をやられて後遺症が残り、うまく動かせんかったんじゃ」


 ギルマスまで涙ぐんでる。


 へー、そうだったんだ。


「これだけの効果があるんじゃ。上級魔法薬、買おうとすれば白金貨が何十枚も必要になるような国宝と呼べる代物じゃろう」


 ごめんなさい。


 ただの魔力を多めに込めた最下級魔法薬です。


「お前、名前をなんて言うんだ?」

「シオンだ」

「俺はガルだ。シオン、この恩は忘れねぇ! 何かあった時には力になるぜ!」

「あ、ああ。その時は頼む」


 言えない!


 お遊びで作った薬の効果が知りたかったなんて言える雰囲気じゃない!


「ガルよ、冒険者に戻るのか?」

「おうよ! だいぶ鈍っちまったから小さい依頼から受けていくぜ!」

「ならばしばらく休むといい。足のリハビリは念入りにな」


 なんか騙してるみたいでものすごい罪悪感がある。



 結局、魔法薬の話ができたのは翌日だった。


 ギルドでガルさんを待って、残っていた惨殺大熊(マーダー・グリズリー)の肉をあげたて謝った時だった。


「なんだ、そんなことか。どっちにしろお前が俺の恩人だってことにはかわらねぇさ」


 そう言ってくれたガルさんは男前な笑顔で笑っていて、とってもカッコよかった。



ガル「シオン、本当にありがとう……!」

シオン「(すっごい気まずいんですけどー!!!)」

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