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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第一章 ~哮る覇王のレゾンデートル~
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1-15.狩りをする前に


 買い物と言っても何を買おうか。


 まずは必要な物のリストアップから。


 肉は買うとして、果物と野菜もシリウスには食べさせないとかな。

 タンパク質だけだと栄養が偏るから、ビタミンとか食物繊維の摂取も大切だ。


 それに瓶。


 ハチミツを採集するからガラス瓶みたいなのが必要だよね。

 ガラスってあるのかな?


 雑貨屋で陶器は見掛けたので最悪壺のようなものでも構わない。


 昼ご飯も何か持ち運べるのがいるか。昨日はバーガーが売っていたからそれを買おうかな。


 ……忘れてた!怪我をしたときの薬とか持ってない!


 そして、ファンタジーの薬と言えば魔法薬(ポーション)でしょ!


 戦闘は安全重視でいくけれど、もしものために買っておきたい。


 必要なものは決まった。



 まずは肉。


 オーク肉だけじゃ飽きがきそうだから他のも買ってやろう。

 鶏肉なんかどうだ?


 精肉店には牛肉や羊肉に続いて猪肉に鹿肉、熊肉と様々な種類がある。


 緑色の蛙肉とか黄色っぽい蜥蜴肉は魔物の肉のようだけど、本当に食べられるのかな?

 紫色の虫系魔物の肉はどこからどう見ても毒物にしか見えない。罠用?


 昨日はお金の手持ちが少なかったので比較的安かったオーク肉しか買わなかったが、一括りに肉と言ってもいろんな種類があるから、こうして見ていると結構楽しい。


 へー、狼肉か。

 犬の肉を食べる文化もあるんだし、食べれるんだろうけど……。



 え?


 シリウス、狼肉食べたいの!?


 お前それ共喰いだけど? 折角気を使ってたのに。


 まあいいや。気を取り直して次にいこう。



 八百屋さんでは野菜――キャベツとトマト、キュウリっぽいのを買っておく。

 これぐらいなら生でもそのまま食べられてお手軽だしね。


 果物は梨、スイカ、ブドウ、マンゴーっぽいのをそれぞれ幾つか、それとクイの実って言うこの世界特有っぽい果物を買ってみた。

 地球には無い感じの果物だったからなんとなく美味しそうに見えたのだ。昨日のオーク肉だって美味しかったし。



 次に雑貨屋。


 ガラス瓶は……無い。

 陶器製の瓶や壺といった入れ物くらいしかない。


 いや、ガラス瓶も売ってはいるよ?

 けど、値段は高めだし不純物とか混ざってるし。


 宿屋のパンは白くて食感もフワフワだったことから食文化は進んでいるけど、物の大量生産技術とか精密加工技術はあまり進んでいないみたい。


 やっぱり魔法の技術があるし、魔物素材とかファンタジー素材とか便利そうな物があって、そっちで補うことが可能だからだからかな?


 結局、ガラス瓶の代わりに500ミリリットルくらいの容量の陶器の壺を2つ買って、自分用のハチミツを入れる瓶はガラスで出来たものを魔法で作ろう。


 もし私が作ったガラス瓶を見られたとしても旅の途中で手に入れたとでも言えばしね。



 それじゃあ最後に魔法薬。


 売っている店の場所はまさに魔女の家といったところ――ではなくて、普通に綺麗な薬局を木造にしたみたいな外見の店だ。


 そうだよね。埃っぽくて汚い店で買った薬を飲みたいとは思わない。


 えーっと、魔法薬、魔法薬……あれ? 2種類ある?


 魔法薬は日本酒を熱燗にするための細長い陶器を小さくしたような感じの容器に入っていて、緑色っぽい容器と青色っぽい容器があった。


 商品棚の説明によると緑色が体力回復で青色がマナ回復と書かれている。


 体力回復薬は飲むか傷口に振り掛けることで怪我が治るというもの。


 マナ回復薬は魔法使い系専用で、魔法を使ってマナが減ったら、飲むことによってマナが回復し、魔法が使えるようになるものだ。

 完全にMPポーションの存在を忘れていたよ。



 それにしてもこの魔法薬、色がとんでもなくヤバイ。


 店員に言って中の液体を見せて貰ったんだけど、体力回復の方は青汁の10倍濃縮って感じ。

 マナ回復の方に至っては理科の教科書で見た塩化銅水溶液、あの真っ青な薬品の色をさらに濁らせたようなの。


 はっきり言って、どっちも『劇物』って見た目。

 飲んだら絶対にいけないヤツだ!


 わたしはもっと透明感のあってキラキラした光が浮かんでいるいかにも魔法薬!って感じのを想像してたんだけど……。


 きっと苦いんだろうな~。


 できれば使いたくないね。


 一応を2種類それぞれ3本ずつ買っておいたけど、魔法薬の本が売ってたのでそれも買った。


 もしできたらゲームみたいに綺麗な魔法薬が作りたいな。





 ◇





 門番に登録証を見せて、やって来たのは森の中。


 町に来たときとは違ってシリウスは従魔の登録証を着けていたので、多少ビビられながらもスムーズに通して貰えた。


 それでは狩りの始まりだ。


 今回の獲物は獰猛(ポイズン・)雀蜂(ホーネット)と、それらが集めた眩耀蜂蜜(グローリー・ハニー)


 どこにいるのか場所は分からないけど、こっちにはシリウスがいる。


 犬の嗅覚は人間の数万倍?数十万倍?とか聞いたことがあるし、狼も鼻は良いだろう。


 完全に猟犬や警察犬みたいな扱いだけど、シリウスならきっとやってくれる!


「シリウス!ハチミツの匂いは……」

「クゥ?」


 なんかもうキジみたいな鳥を捕まえてるし。

 貢ぎ物みたいに置かれていてビックリした。


 いつの間に仕留めたんだろう? ご丁寧に血抜きまでしてある。


「……何でもないよ。これ、ありがとね。眩耀蜂蜜(グローリー・ハニー)の匂いって分かる?」

「グァン!」

 

 鳥をマジック・バックに仕舞うとシリウスが駆けていく。


「『身体強化(リーインフォース)』」


 わたしが使ったのは身体強化の魔法だ。

 マナを使って筋力を強化し、攻撃力、防御力、素早さを上げるゲームでもおなじみのアレ。


 銀色の光が一瞬わたしを包むと体に力が漲ってくる。


 わたしの素のスペックでは、シリウスの動きを目で捉えることはできても流石に並走はできない。


 昨日シリウスと町に向かって走りだした時にそのスピードに驚いて慌ててこの魔法を使ったのだ。


 よく考えたら惨殺大熊(マーダー・グリズリー)とおいかけっこをした時にこれを使っていたら逃げ切れたかも?



 ……今さら考えてもしょうがないか。


 わたしはシリウスの後に続くいていく。


 途中で薬草やキノコを見つけたら、さっき買った本に載っているかどうかを確認して、魔法薬の材料を集めていく。


 この森には魔法薬の素材が豊富で、ちょっと採集したら魔法薬作りに十分な量を集めることが出来た。


 町に戻ったらすり鉢とか乳棒とかを買って宿の部屋で早速作ってみよう。


 この森には珍しそうな素材が結構あるんだけど、そのほとんどがよく分からない物だ。


 ギルドの掲示板に見本として書かれていた薬草とか、危険性が無さそうな物だけを集めておいて、キノコみたいな毒のあるものと見分けが付けにくい様な物は放置した。

 古本屋みたいなところで植物図鑑なんかも買わないとね。


 さて、目的の場所はもうすぐかな?


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