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夢幻泡影のカレイド・マジック  作者: 匿名Xさん
第一章 ~哮る覇王のレゾンデートル~
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ギルドへ(1)



 町の中は思ったよりも多くの人がいて、夕方近くにも関わらず活気がある。


「安いよ安いよー! うちの野菜は新鮮だ!」

「さっき仕入れたオーク肉だ! 買っていかねぇか!」

「特製バーガーはどうだ! 1つ大鉄貨5枚!」


 市場みたいなのが開かれていて果物や肉、軽食を売る店が軒を連ねていて、その店の店主たちが大声で客引きをしていた。


 ファンタジーといえばオーク肉は定番だよね~。


 どんな味がするんだろ?


 やっぱ豚肉に近いのかな?


 そんな事を考えていたらギルドに着いた。


 入り口から正面に受付はあって、右が酒場で左にクエストボード的なのといった内装になっていて、正しく冒険者ギルド!といった感じだ。


 木製の床や壁が黒っぽく、くすんでいるところがまたいい味を出している。


 これだよ! これがギルドだよ!!


 やっぱギルドはこうだよね~。


 安直だって言われるけどこの空気が堪らない!


 クエスト前に酒場で食事をしたり、クエストボードの前で同行者を待っていたりするのは定番だ。


 まあ、わたしはソロでひたすら効率厨だったけど……。


 こっちの世界でもソロ……いや、今のわたしには頼もしい相棒(シリウス)がいる。


 ノーモア、ボッチライフ!


 これでわたしはひとりじゃない!!


「ありがとう、シリウス」

「クゥン?」


 突然抱きしめ、頭を撫でられて困惑するシリウスだったが、嫌がるそぶりも見せずにわたしの頬を「大丈夫?」と心配そうに舐めてくれる。


 シリウス、マジ天使(魔物)。


 まあ、これから生きていく中で信用できそうな人が居ればパーティーとか作ってみたりしてもいいけど、暫くは二人三脚だ。


 いや、シリウスは4足歩行だから五脚か?


 それでは早速登録をしよう。


 わたしは受付の方に歩いていく。


「ご用件はなんでしょうか」

「登録に来た」


 受付にいた女性ギルド職員の問い掛けに証明札を出して答える。


 やっぱり綺麗な受付嬢は定番だよね!


 この人も受付嬢は美人という法則に漏れず、茶髪をポニーテイルにした美人さんだった。


 パツパツ気味の制服がバツグンのスタイルを浮き上がらせているのもまたいい。


「登録につきましてご不明な点はありますか?」

「冒険者ギルドはどのような組織ですか?」

「ここ冒険者ギルドは正式名称を『討伐者支援組合』と言います。主に魔物、もしくはモンスターと呼ばれる、人間に害を与える生物を狩った者に対して報酬を支払います。その他にも素材の買い取りや、民間人、国からの依頼を仲介しています」


 へぇ~、そんな名前なんだ。


 まあ、普通にギルドと呼んでればいいでしょ。


「スタンピードの時に召集されると聞きましたが、その時は?」

「ギルドは準国家機関となっております。目的は魔物による被害の軽減となっており、魔物を討伐することを条件に冒険者は各国から優遇されます。その為スタンピードなどの有事の際は召集されますが、これに反した事が分かった場合ペナルティが課せられます」

「ペナルティ?」

「ギルドランクの降格や効力の停止、剥奪です」


 まあそうだよね。


 義務を守ってこその権利だ。


 安定して仕事をもらってるのに上の言うことを聞かないのはいただけない。


 もっとも、その上がまともじゃなかったら、わたしは違反も辞さないけどね!


「戦争の場合は?」

「徴兵はされませんが登録者自身が戦争に介入することは認められています。しかし、ギルドの立ち位置はあくまでも中立です」


 そうだよね。


 魔物を討伐する組織なのに人間討伐してたら本末転倒だ。


 中には母国を守りたい人も居るけど、他国から遠征に来ている人は戦争に巻き込まれたくはないだろうし。


 国も強制的に徴兵しようものなら、魔物と戦ってる屈強なギルドの冒険者が全員敵に回ることになるし。


 これぐらい聞ければ十分かな?


 何かあったらまた聞けばいいしね。


「分かりました、登録します」

「では、登録費用は銅貨5枚です」


 金取るのかよ!


 不意を突かれたが、表情を取り繕って無言で銅貨5枚を取り出す。


 そういえばフード被ってたから受付嬢からは見えないや。


「では、登録事項の記入を行いますので、幾つか質問をさせていただきます。まず、お名前は?」

「それは本名で?」

「いいえ、偽名でも構いません」


 う~ん、どうしよう。


 1回死んだんだし、自分の名前は自分で付けようかな? と言っても、いい名前が思い付かない。


 ここは普通にゲームで使ってた名前にしよう。


「“シオン”です」

「シオンさんですね。年齢は?」


 あれ、わたしって何歳だろ?


 身体的に10代後半かな?


 まあ、前世と同じ17歳でいいか。


「17歳」

「17歳ですね。種族は?」


 種族?


 そう言えば今まで考えなかった。



 ……人間だよね?


「人間です」

「人族ですね。最後にこの印の所へ血を1滴付けて下さい」


 そう言って職員が今まで書いていた用紙と机の脇に置いてあるペーパーナイフを渡された。


 血をつける理由はギルドのギルド証の個人認証に必要だからだそうだ。流石にDNAの概念は無い筈だから魔力で識別するとかそんな感じだろうか?


 軽く指先を傷つけるとピリッとした痛みが走り、段々と血が滲んできた。


 判子を押す所のような印の上にに血を垂らし、職員に紙とナイフを返しす。


「ギルド証を作成しますので暫くはお待ちください」


 そう言って職員がカウンターの奥の部屋に入って行く。


 一分ほどして戻ってきた職員は1つの鉄製のようなバングルを持っていた。


「これがギルド証になります。再発行にも料金がかかりますので失くさないようお気を付け下さい」


 これがギルド証か。


 創作の中ではカードタイプやドッグタグなんかが一般的だったんだけど、これならカードと違って無くす心配は減るし、日常生活でもあまり邪魔にならない。


 籠手とか着けるのに多少不便だけど、その時は外せばいいか。


 付ける予定無いけど。


 それはそうと、なかなかお洒落なデザインだよね。


 わたし的には高ポイント!

 

 ん? どうしたシリウス? 


 服なんて引っ張ってきて……おっと、忘れる所だった!


 シリウスも従魔登録しないといけないんだっけ。


 だってこの子、夫を立てる大和撫子みたいに常にわたしの3歩後ろを歩くんだもん。


 そりゃあ忘れそうにもなるよ。


 ちょっとボディーガードされてるみたいで嬉しいけど、視界から外れるから忘れちゃいそうになるんだよね。


「それと、こいつの登録ってどうすればいいですか?」

「ヒィッ!? 冷酷餓狼(ブルータル・ヴォルグ)!?」


 シリウスの前足を持ち上げて、カウンターの向こうに居る受付嬢に見えるようにすると、受付嬢から恐怖の声が上がった。


 シリウス……お前ここでも怖がられたぞ。


 一体どんな魔物なんだ?


 今まで朗らかな笑顔で仕事をしていた受付嬢のお姉さんが急に壁際まで引いたぞ。


「こいつってそんなに怖い?」

「当たり前じゃないですか! 冷酷餓狼(ブルータル・ヴォルグ)はプライドが高く、人間には決して懐くことがない魔物と言われているんですよ!? しかも人災級の魔物です!」


 受付嬢、めっちゃビビってる。


 それでもきちんと答えてくれる辺り真面目な性格なんだなーと思う。


「その人災級って?」

「魔物は8段階に危険度が分かれていて、人災級は小規模な町なら壊滅させることが出来るレベルです!」


 魔物のランクは下から有害級、害悪級、人災級、戦災級、災害級、禍災級、災厄級、終焉級とあるらしい。


 魔物で例えると下から小鬼(ゴブリン)豚頭鬼(オーク)大鬼(オーガ)冷酷餓狼(ブルータル・ヴォルグ)烈風翼竜(ワイバーン)真竜(ドラゴン)、魔王だ。


 魔王って魔物枠なんですね……ていうか魔王いるんだ。


 ひょっとして勇者もいたりして。


 ちなみに、終焉級は形だけのランクとのことで、具体的にどんな魔物かというのはないらしい。


 冷酷餓狼(ブルータル・ヴォルグ)は気性が荒く一匹一匹は人災級程度の強だが、それでもかなりの強さを持っていることには変わりなく、しかも群れを作る為かなり危険だそう。


 中には100頭を越える群れを作ったこともあり、その場合の危険性は戦争と同じ犠牲が出るレベル――つまり戦災級となり、国が動く事もあるそうだ。


 下手をすれば大きい町の1つや2つ簡単に滅ぼせるらしい。


 あっ、お姉さん涙目になってきた。


 通りで門番の兵士が警戒していた筈だよ。怪しい風体の男が人に従うことの無い魔物を従えているなんて、疑ってくださいといっているようなものだ。


 それに、ギルドに入った時から妙に視線を感じるな~って思ったんだよ。


 シリウスが付いていたから、必然的にわたしは強いと思われてたんだね。


 お陰で『冒険者ギルドで絡まれる』というテンプレは回避できた!


 ……ちょっと残念な気もしなくはない。


「お前結構凄かったんだね。ところで、登録は?」

「し、少々お待ちください」


 また奥の部屋に行ったお姉さんは、両端に2つ穴の空いた長方形のプレートを持ってきた。


「そのプレートを首輪などに付けて下さい。登録は銅貨2枚です」

「銅貨2枚だ」


 プレートを渡し、銅貨を受けとるとお姉さんはまた壁際に戻っていった。


 ここまでくると、なんか申し訳なく思えてくる。


「最後に一つ、素材の換金はどこでしていますか?」

「あちらの部屋で出来ます」


 森で倒した熊と狼は、長い間放っておくと腐らせそうだから売っておきたい。



 わたしはお姉さんの示した部屋に向かった。



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