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prologue ~紅月に飲まれた街
これから、宜しくお願い致します。
西暦2136年。
優しく人々を照らしていた黄金色の月は消え、血のように赤い、紅い、緋色の月が現われた。
紅い月に照らされた街は、人々は、それまでの日常を失った。
紅い月の光を浴びた人々の大半が、未知の能力を手に入れた。
ある者は、指先一つで他者を切り裂き、またある者には、自然を意のままに操った。そして、能力を得なかった者は、能力者に怯える生活へと変化していった。
能力を得た者も、明暗に分かれる。
己の能力を受け入れ、その能力をうまく使いこなす前者と、突然訳も解らず得てしまった能力に怯え、力を抑えられず能力に呑み込まれてしまった後者。
そして、人はいつしか夜が来るのを恐怖し、元凶となった紅い月を
『紅月』
と、呼ぶようになった。
何故、紅月が現われたのか、紅月は一体何なのか、誰も何も明かせぬまま、刻は過ぎていく。