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焔無双

 「・・・ふう。ようやく全部片付いたな。」

 夥しい魔物の死体が横たわる中心に、ブレイカー・オブ・ブレイを杖代わりにして肩で息をする焔の姿があった。多少傷を負ってはいたが、そこまで大きな傷は見られなかった。倒された魔物達は、大半が切られて死んでいたが、一部は黒焦げになっていた。

 「・・・まさか、本当に一人で全部倒すなんて思わなかったよ。」

 「・・・言っただろうが・・・!俺は・・・有言実行する男だってな・・・!」

 そんな焔を、震は苦笑する。焔は、そんなことは気にせず、不敵に笑うのだった。


 一時間ほど前、焔と震は、魔物の大群を発見した。魔物は、ランクこそ低いものばかりだったが、一部は強い魔物もいて、そのまま戦うのは厳しいと震は判断した。

 「・・・大半はHかGだけど、中にはEランク以上の魔物もいるようだね。あれなんて、Dランクだよ。」

 「でも、あの時の巨人軍団に比べればマシだな。」

 「・・・そうは言うけど、あの数は脅威だ。最低でも百体を超えている。雑魚でも百体超えはかなりキツイよ。無理せず、ブレイで焼き払うべきだ。」

 「必要ねー。俺一人で十分だ。」

 「・・・何を根拠に?」

 「根拠なんてねー。ただ、風太はこれ以上の状況で戦ったらしいじゃねーか。俺もこれくらいできねーとな。」

 (・・・緑川風太は、テイマーとしても戦っているんだから比較しようがないと思うけどな・・・。)

 自信満々の焔に、震は内心困惑する。

 「行くぜ!震!お前は俺がヤバくなったら助けてくれ!」

 「・・・分かったよ。」

 言っても聞かないだろうと思った震は、そのまま焔を送り出した。

 「おら!お前ら!死にたい奴は前に出やがれ!叩き切ってやるぜ!」

 焔は、大声で魔物達に切り込む。先頭にいた魔物達からまず切り倒されていく。

 (・・・せめて敵に気付かれないよう戦う気はないのか?)

 そんな焔の非効率な戦い方に、震は内心苦言を呈する。

 だが、ブレイカー・オブ・ブレイの攻撃範囲の広さと身体強化した焔の力に、魔物達は次々と倒されていく。魔物に遠距離攻撃できるタイプがいなかったことも幸いし、焔は順調に魔物達を仕留めていく。

 (・・・まあ、雑魚はどうにかなるね。・・・でも、問題は・・・。)

 そんな焔の前に、巨体の魔物が立ちはだかる。それは、巨人ほど大きくはなかったが、3mくらいの大きさで、筋肉質の身体の魔物だった。手には1mほどの太い棍棒を持ち、殺気立った目で焔を睨んでいた。

 (・・・トロールか。ランクEの魔物だ。弱い魔物を従えるボス的な魔物だと本には書いてあった。知能は低いけど、並外れた腕力と再生能力を持っている。特に再生能力は、腕を切られてもすぐに生えてくるらしい。正面からただ切るだけじゃ勝ち目は薄い。焔は火魔法が使えるから、魔法で焼き尽くすのがベストだけど・・・。)

 そんな対トロール戦の戦い方を頭に思い描く震とは裏腹に、焔は真っ向から挑もうとする。

 「おお!お前は強そうだな!でも、この前の巨人の方が強そうだけどな。かかってきな!」

 「ぐがああああ!」

 トロールは棍棒を振り回し、焔に迫る。焔は剣で防ぐと思えば、なんと剣を地面に刺すと、棍棒を両手で止めようとする。

 「!?何考えている!トロールの怪力は本物だ!力比べなんて駄目だ!」

 震の警告も空しく、焔は逃げようとしない。トロールの棍棒が、焔に向かって振り下ろされる。震は、焔がミンチになる光景を想像した。だが、そうはならなかった。焔は、棍棒を手で受け止めていたのだ。

 「!?」

 (う・・・受け止めた!?・・・筋力強化の魔法を使っているのは分かっていたけど・・・まさか、ここまでとは・・・!)

 「おりゃあ!」

 そのまま焔は、棍棒諸共トロールを投げ飛ばす。トロールは動揺していたものの、うまく受け身を取ると、再度焔に向かっていく。

 「焔!奴は身体を切られてもすぐ再生する!剣で戦うな!」

 「ん?治るのか?・・・なら・・・!」

 焔は、ブレイカー・オブ・ブレイを持つと、トロールの頭めがけて振り下ろす。トロールは頭部から股まで綺麗に真っ二つにされてしまう。さすがのトロールも再生することはできず、地面に崩れ落ちた。

 「生き物はだいたい、頭潰せば死ぬだろ。」

 「・・・ああ・・・それなら剣でも殺せるか・・・。」

 震は、力技でトロールを倒したその光景に、呆れとも驚きともいえる表情を浮かべる。

 「次はどいつだ!?どんどん相手してやるぜ!」

 そのまま焔は、魔物の大群の中に突っ込み、縦横無尽に暴れまわる。何体か焔に攻撃したものもいたが、強化された筋力に阻まれたのか、大したダメージを与えることもできず、簡単に返り討ちにされてしまう。

 そして、一時間も経った時には、魔物達はすべて屍と化していた。


 「・・・でも、消耗しすぎだ。もっと火魔法を使って遠くから攻撃を仕掛けていれば、被弾も避けられたはずだ。」

 震は、勝つこそ勝ったが、あまりに効率の悪い焔の戦い方に苦言を呈した。

 「仕方ねーだろ。俺、普通に使う魔法はどうもうまくいかねーんだからよ。強化魔法ならうまくいくんだけどな・・・。」

 「君の魔法は、火力はあるけど制御に難点があるみたいだって言われていたね。だから、ただ飛ばしたり、肉体を強化する単純な魔法の方がうまいんだろうね。今後は近接戦ばかりじゃなくて、魔法戦闘を主体にやって鍛えていくべきだね。」

 「マジかよ・・・勘弁してくれよ・・・。」

 震の提案に渋い顔をする焔。だが、そんな二人に、突然矢が飛んできた。

 「!危ねー!」

 「!」

 二人は回避するも、矢は次々に飛んでくる。

 「この!」

 焔は、ブレイカー・オブ・ブレイを振るって矢を払う。矢は二人に届くことなく、地面に落ちていく。

 「くそ!不意打ちか!どこにいやがる!?」

 焔は、矢を射てきた敵を探す。だが、目視できる範囲に敵は見当たらなかった。

 「・・・見える範囲にはいねー・・・。」

 「・・・感知魔法を使う。」

 目視で見つからない敵に、震は感知魔法を使用して索敵を行う。

 「・・・そこか!【ストーンバレット】!」

 震は、土魔法を感知魔法で感知した場所に放つ。すると、何もないはずの場所に【ストーンバレット】はぶつかって砕け散る。まるで、見えない壁にぶつかったかのようだった。

 「・・・気付いたか。なかなかのやるな。」

 すると、そこにはいついたのか、鎧を着た、頭に角の生えた男がいた。男の手には、弓が握られていた。

 「・・・魔将軍・・・。」

 「姿消してたのか・・・どうりで気付けないわけだ。」

 焔と震は、魔将軍に対して身構える。

 「あれだけの数の魔物を相手にあそこまでやるとは、褒めてやろう。だが、そんなフラフラで果たして俺達に勝てるかな?」

 魔将軍が手を上げる。すると、その背後から大勢の軍勢が現れた。

 「!?こいつらは・・・!?」

 「ヤミー軍か!・・・でも、魔物じゃない。人間のように見える・・・。」

 「こいつらは、ヤミー様から力を与えられた者達だ。だが、俺のように優れた力がないせいで、雑兵程度にしかならなかったがな。それでも、Fランクの実力はある。」

 「雑魚のくせにFランクかよ。」

 「圧殺しろ!魔兵士達!奴らを休ませるな!」

 魔将軍に命じられ、魔兵士達は武器を構えて焔達に向かっていく。

 「・・・僕がやる。君は下がって・・・。」

 「・・・いいや、俺がやる。」

 消耗した焔に代わり戦おうとする震を焔は制する。

 「・・・そんな身体で戦うのは・・・。」

 「・・・俺はまだ、奥の手を出しちゃいねーぞ。」

 焔は、サモンカードを取り出す。

 「!まさか、強い敵に襲われることを考えて・・・!」

 「そういうこった!切り札は温存しとかねーとな!【サモン・ブレイ】!」

 焔は、ブレイを召喚する。魔兵士達の目の前に、ブレイが召喚される。

 「!?」

 「!何だ・・・あの魔物は・・・!?・・・まさか・・・五大竜!?」

 「ブレイ!一気に焼き払っちまえ!」

 『・・・。』

 「?どうした、ブレイ?」

 いつも何かしら小言を言うブレイが、珍しく黙り込んでおり、焔はどうしたのか尋ねる。

 『・・・いや。何でもねー。・・・こんな雑魚共、眠気覚ましにもなりそうにないが・・・いいだろう。』

 ブレイは、口を開くと、一気にブレスを放つ。

 『火竜の息吹ドラゴニックファイアブレス!』

 魔将軍と魔兵士達は、何の抵抗もできずに一瞬にしてブレイに焼き尽くされてしまうのだった。

単純な身体能力だけなら焔が最強です(魔法込みだと風太ですが)。

今後の展開のために、若干修正しました。

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