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エリアスの眷属

 『死ね!』

 フロストスワンの冷気を帯びた風が、風太に迫る。

 「【エアロバースト】!」

 風太は【エアロバースト】で風を吹き飛ばそうとするが、【エアロバースト】は見る見るうちに凍り付いていく。

 「!?」

 『ほう、貴様は風属性か。なら、私には勝てん!』

 「水属性ならともかく、氷に風は駄目だよ。自分まで凍っちゃうよ。」

 「くっ!」

 風太は大人しく、冷気の風を回避する。だが、広範囲の冷気を回避することなどできるはずもなく、手足が若干凍り付いてしまう。

 「!くそ!」

 「落ち着いて、風太。慌てず回復だ。」

 「【ヒールウィンド】!」

 風太は風属性の回復魔法を使い、凍った部分を癒す。

 「・・・なあ、これって状態異常も・・・。」

 「治せないよ。凍傷を治しただけだよ。凍ったのが解除されたのは、君の【ヒールウィンド】の風圧さ。」

 「・・・そう聞くと回復魔法って気がしないな。」

 「気にしてないで、早く対抗策を考えるんだ。・・・次がくる。」

 すると、ソウの言う通り、フロストスワンは今度は巨大な氷の塊を出現させ、それを風太に撃ち込んでくる。

 「魔法が駄目なら・・・!」

 風太はソード・オブ・フィードで、氷の塊を切り払う。氷の塊をなんとか切断し、直撃は避けられたものの、風太の手は痺れてしまう。

 「固い!身体強化しているのに・・・!」

 「もう少し強化した方がいいね。」

 『意外とやるな・・・だが、私の敵ではない!』

 フロストスワンは、再度氷の塊を出現させる。今度は大量に。

 「!マジかよ!」

 『死ね!』

 フロストスワンは、氷の塊を風太に向けて全て飛ばす。

 「これを切り抜けるのは難しいな・・・!」

 『主よ。私を使え。』

 「!『フェニックス!?』。」

 突然、フェニックスが声をかけてくる。

 『あのような鳥、倒すのは造作もない。』

 『・・・でも、通常属性のお前が戦うのはまずいんじゃないか?それに、相性も・・・。』

 『私の身体は、炎にも匹敵する。それに、たかだかBランク程度の魔物に後れは取らない。』

 『・・・分かった。【サモン・フェニックス】!』

 フェニックスの言葉を信じ、風太はフェニックスを召喚する。風太の頭上に、フェニックスが出現する。

 『不死鳥の灼熱フェニックスブラスト!』

 フェニックスの身体から、凄まじい炎が放たれる。氷の塊は、一瞬にして溶かされてしまう。

 『!?何だと!?』

 「・・・凄い・・・相性最悪の相手なのに・・・!」

 『・・・主。私が倒しても構わないか?』

 「できるのか?」

 『造作もない。主が少し力を貸してくれれば可能だ。』

 「・・・分かった。俺の魔力、好きなだけ使え!ただし、殺すなよ。」

 風太は、自身の魔力をフェニックスに供給する。フェニックスの身体の炎が、さらに激しく燃え上がる。

 『ええい!たかが火属性の魔物如きが!』

 フロストスワンは、激昂してフェニックスに突進してきた。だが、それはただの突進ではない。全身に冷気を纏った、まさに自身を巨大な氷の塊と化した一撃である。

 『不死鳥の息吹フェニックスブレス!』

 そんなフロストスワンに対し、フェニックスはブレスを放つ。それは、今まで使っていた火の鳥の息吹ファイアバードブレスとは比べ物にならないほどの威力だった。フェニックスのブレスは、苦も無くフロストスワンを吹き飛ばしてしまう。

 『うわああああああ!?』

 吹き飛ばされたフロストスワンは、湖の周囲にある森に墜落した。

 「・・・凄いな。相手は上位属性だっていうのに・・・。」

 『如何に上位属性であろうと、力の劣るものでは意味がないだろう。』

 「・・・力の差がありすぎたってことか。」

 風太は、フロストスワンの落ちた方を見ながら呟く。しばらくして、フロストスワンがフラフラしながらこちらに飛んで戻ってきた。

 『ぐ・・・!あり得ない・・・!火属性の魔物が私にこんな・・・!』

 『諦めろ。お前では私には勝てん。』

 『何を!』

 『何をしている、フロストスワン?』

 『!?』

 なおもフロストスワンが挑もうとしたその時、突然、どこからか声が聞こえてきた。風太は周囲を探るものの、何も見つけられなかった。感知魔法にも感知できなかったのだ。

 「・・・何だ・・・この声は!?・・・それに、どこに・・・!?」

 「・・・ああ、これは大物が出てきたね。」

 すると、風太達の上空に、一体の大きな鳥が姿を見せていた。それは、孔雀に似た巨大な鳥の魔物だった。その広がった羽は、風太達の世界に存在する孔雀と同等、いや、それ以上に美しかった。

 「・・・デカい・・・孔雀・・・!?」

 「キングピーコックだよ。水属性のAランクの魔物さ。近くに水があれば、それを介して会話や目視、瞬間移動ができる魔物だよ。ただでさえレアなピーコック種の魔物の中でもさらにレアなんだ。」

 「・・・この湖の水を介して移動してきたのか。道理で感知できないわけだ。」

 『・・・フロストスワン。これは何だ?』

 キングピーコックは、鋭い目でフロストスワンを睨む。

 『き・・・キングピーコック様・・・この無礼な人間が、私に従属せよと・・・。』

 『愚か者!』

 キングピーコックは、美しい羽でフロストスワンを叩く。フロストスワンは、凄まじい勢いで地上に叩き落された。

 『ぐはっ!?』

 『この者は、暗黒の神を打倒すべく異界より来た勇者だ!それに刃を向けるとは・・・恥を知れ!』

 『!?この人間が・・・勇者・・・!?』

 キングピーコックの言葉に、フロストスワンは驚愕した。フロストスワンも五大竜を従える異世界から来た勇者の存在は知っていたが、まさか、目の前の少年がそうだとは気付かなかったのだ。フロストスワンは、完全に委縮してしまった。

 『・・・異界より参りし勇者よ。私の配下の非礼、申し訳ない。』

 キングピーコックは、地上に降りると同時に、風太に対して深々と首を垂れる。

 「・・・いや、最初に手を出したのは俺の方だ。悪かった。・・・って、お前、俺が異世界から来たって知ってるのか?」

 『我々ピーコック族は、世界中の水を介して世界を見ることができる。そうやって世界を陰ながら見守ってきた。』

 「見守ってきたって・・・どうしてお前達はそんなことを?」

 『我々の先祖は、水の神からこの力を与えられたのだ。その代価として、我々の一族は世界を見守る役目を担うことになったのだ。』

 「水の神ってことは・・・エリアスの眷属なのか。」

 「そう、ピーコック種の魔物は、エリアスの加護を受けてその力を使えるようになったんだ。それ以来、彼らは世界中の水を通して世界を見守り、危機になればエリアスと共に戦う決まりになっているんだよ。」

 「じゃあ、俺の所に来たのは、そのためか?」

 『そうだ。私は父であるエルダーピーコックの命を受け、力になるようはせ参じたのだ。だが、近場に私が出られるほど大きな水場がなかったため、今の今まで移動することができず、手間取ってしまったのだ・・・。』

 「そうだったのか。・・・移動能力にそんな制限があるとはな。」

 「それはそうだよ。無条件で使える能力なんて、普通はないよ。」

 『勇者よ。あなたに忠誠を誓う。ぜひ、私を従者としてほしい。』

 「分かった。力を貸してくれるのなら心強い。契約しよう。」

 『水を通して世界を見通す私の力、役立ててほしい。』

 風太は魔力をキングピーコックに放出する。キングピーコックは、サモンカードとなり、風太はそれを回収した。

 「・・・それにしても、孔雀が水属性なんて、少し不思議な気分だな。」

 「この世界を、君の常識で考えること自体、ナンセンスだって。」

 「そうだな。・・・。『で、お前はどうする?』。」

 風太は、萎縮しているフロストスワンに話を振る。

 『・・・キングピーコック様が認めたのだ。私も契約しよう。』

 『ありがとう。・・・あの時は悪かったな。』

 『ふん。今度やれば、私は負けないぞ。』

 そう言い残すと、フロストスワンもサモンカードと化し、風太はそれも回収する。

 「・・・水属性と氷属性の魔物と契約できるなんてツイてるな。これも、フロストスワンを見たからかな?」

 「そうかもね。・・・さて、渚の方はどうなってるかな?」

 「!そうだ!渚!」

 風太は、未だに試練を受けているであろう渚の許に向かうのだった。

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