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侵攻作戦開始

渚の口調を変更します。

 「・・・ここから先は、ワルド大陸に侵攻しているヤミー軍と直接ぶつかることになる。気を引き締めていくんだ。」

 「・・・ああ。」

 「・・・ここから本番ね。」

 焔と震が神殿付近の制圧をしているのと同時刻、ヤミー軍の拠点に向かうべく、ソウを先頭に平原を歩く風太と渚は、緊張した面持ちで武器を握り締めていた。

 「昨日も言ったけど、フィードとエリアスは使っちゃ駄目だよ。ただし、他の魔物なら使っても構わない。フェニックスやガルーダとかなら使ってもいいよ。」

 「Aランク以下の魔物は使っていいのか?」

 「テイマーとしての腕も磨かないと。それに、君は魔物を使った戦い方がうまいみたいだ。短所の克服は当然として、長所はもっと伸ばさないと。」

 「分かった。」

 「・・・!風太!あれ!」

 渚が、遠くから何かがこちらに向かってくるのに気付き、注意を促す。それは、二足歩行の蜥蜴のような魔物だった。

 「リザードマンか!亜人としても扱われることがある魔物だ!」

 「個体ランクはFだけど、数が多ければEになるよ!低くても気を付けないと!」

 「渚、牽制に魔法を使ってくれ!動きを止めている間に俺が近付いて一気に仕留める!」

 「え?でも、リザードマンは水属性だから、大して効かないんじゃ・・・。」

 「足止めさえできればいい!」

 「分かった!」

 渚はリザードマン達に向かって範囲の広い魔法を唱える。

 「【レインアロー】!」

 リザードマン達の頭上に突如として雨雲が現れ、雲から矢の形をした雨が襲う。だが、リザードマン達はそれほどダメージを受けておらず、倒されたものはいなかった。

 「・・・!やっぱり効いていない・・・!」

 「足止めさえできればこっちのものだ!」

 突然の攻撃に足が止まったリザードマン達に、風太は風魔法を推進力にして一気に接近し、擦れ違い様にリザードマン達を切り裂いていく。リザードマン達は、一瞬にして全て倒されていた。

 「・・・やっぱり凄いな、風太は・・・。」

 「・・・いや、今度は君の番だよ。あれを見て。」

 ソウが指した方から、全身が炎に包まれた魔物が現れる。それは、ブレイの神殿で見たマグマゴーレムだった。

 「!?どうしてマグマゴーレムが!?」

 「ゴーレム系列の魔物は、人為的に作ることができる。おそらく、ヤミー軍が作った個体だね。」

 「風太!下がって!風太じゃ相性が悪いよ!」

 「分かった!」

 風太は距離をとる。すると、マグマゴーレムは、胸の部分から炎に包まれた岩を射出してきた。そのスピードは、風太でもかわすのは難しいくらい速かった。

 「!【エアロバースト】!」

 風太は岩を魔法で撃ち落とす。だが、マグマゴーレムは炎岩を連射し、風太を逃がさないようにしてくる。風太も負けじと【エアロバースト】で迎撃し、直撃しないようにするが、それで精一杯であった。

 「くっ!これじゃあ動けない!」

 「大丈夫!任せて!」

 渚はマグマゴーレムに魔法を放つ。

 「【アクアバレット】!」

 ウォーターバレットの上位版、中級魔法の【アクアバレット】がマグマゴーレムに直撃する。マグマゴーレムの燃え滾る身体は、一瞬で冷えて固まり、粉々に砕け散った。

 「!一発でか!やるな!」

 「弱点をつけたからだよ。」

 「・・・二人とも、一体だけ倒せば終わりじゃないよ。」

 「え?」

 振り返ると、なんとマグマゴーレムの大群がこちらに向かって来たのだ。

 「・・・おいおい・・・どれだけいるんだよ・・・?」

 「これが、ゴーレムの強みだよ。素材さえあれば、いくらでも作り出せるからね。」

 「マグマなんて、どこで調達するんだ!?」

 「文句を言っている場合じゃない。来るよ!」

 マグマゴーレム達は、風太に対して一斉に炎岩を放つ。さすがにこの数を撃ち落とすのは難しい。

 「・・・【サモン・フェニックス】!」

 風太は、契約していたフェニックスを召喚する。召喚されたフェニックスは、風太を守るように前に出て炎岩を受け止める。炎はフェニックスに吸収され、岩もフェニックスの炎の身体の熱には耐えきれず、溶けてしまった。

 『たかがマグマゴーレム如きが私に勝てるとでも思ったか?』

 「助かった。防ぐいい方法が見つからなかったんだ。」

 『構わない。・・・さて、この岩人形・・・いや、溶岩人形を片付ければいいのか?』

 「ああ。できそうか?相性はよくないと思うけど・・・?」

 『問題ない。不死鳥の力、その目で焼き付けるがいい!』

 フェニックスが羽ばたくと、それは凄まじい炎の嵐と化す。炎はマグマゴーレム達を包み込むと、マグマゴーレム達はあっという間に溶け出す。そして、十秒も経たないうちに、マグマゴーレム達は原形も留めないほどに溶けていた。

 「・・・属性は同じなのに・・・まったく勝負にならないな。」

 『あんな人形、守護者の前では道端に転がる石ころと同じ。恐れるに足らん。』

 「そうだな。頼りになるな。」

 風太はフェニックスを撫でる。フェニックスは、炎の身体であるにも関わらず、風太の手は燃えず、普通の魔物のように撫でることができた。

 「・・・風太は熱くないの?」

 「フェニックスは、自身が認めた者や望んだものは焼かないんだよ。彼は、風太を認めているんだ。」

 「・・・そうなんだ・・・。」

 「・・・さて、今回のメインの敵が来るみたいだ。」

 「!あれは・・・!」

 マグマゴーレム達が倒された方向から、三人の鎧を着た男達が現れる。彼らの頭部には、角が生えていた。

 「・・・魔将軍・・・!」

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