風太の不満
渚の口調を変更します。
「・・・そのヤミーとか言う邪神が、世界を支配するために風子ちゃんを攫った・・・ね。」
渚は、ミリィとエリアスから、経緯を聞かされた。あまりの突拍子の無い話に、渚は困惑した。
「ええ、だから、私は、竜の力を引き出せる人間を捜しに来たの。・・・まさか、こんなに早く見つかるとは思わなかったけど。」
『私もです。何年もかかることを覚悟していました、』
「信じられない・・・と言いたいところだけど・・・こんなの見せられたら、信じるしかないよね。」
普段の彼女なら、一笑に付しただろうが、あり得ない出来事が目の前と自身の身に起きたのだ。信じるざるを得なかった。
『渚。無関係のあなたを巻き込んでしまい、大変申し訳ありません。ですが、我々には、これ以外に方法がないのです。ヤミーを倒すため、世界を救うため、力を貸してください。』
エリアスは、渚に深々と首を垂れる。
しばし、渚は考え込む。そして、渚は意を決したようにエリアスに告げる。
「・・・分かった。世界が救えるかは分からないけど、私、やってみる。」
『ありがとう、渚。』
「まずは、一人目ね。幸先いいわ。」
「でもよかった・・・風子ちゃん、生きてたんだ・・・。よか・・・。」
「・・・何がよかった、だ。・・・あんなに俺に諦めろとか言ってたのは誰だったかな?」
渚の言葉を遮るように、風太が口を挿む。その顔には、不快感と不満が露骨に現れていた。
「!・・・風太・・・。」
「現実を見ろとか言って、おふくろ達とグルになって、風子を死んだことにしたくせに・・・生きてるのが分かった途端これか。・・・都合のいい奴。」
「・・・。」
「それに、何が契約は簡単じゃない、だ。アッサリできたじゃないか。こんな薄情な渚でも。」
風太は、よほど渚が契約できたのが納得できなかったのか、ミリィにも話を振る。
「契約者は、竜が決めるのよ。私に言われても・・・。」
「・・・何で渚なんだよ。・・・何で・・・。」
「・・・。」
自分ではなく、渚が選ばれたことに対する不満を、風太は全く隠さず零す。だが、そんな風太の理不尽な暴言と不満に、渚は何も反論しなかった。
『・・・渚、いいのですか?あのようなことを言われて?あまりに失礼では?』
「・・・仕方ない・・・から・・・。・・・風太は、風子ちゃんがいなくなって、他の人が諦めても、捜すのをやめなかった・・・。・・・でも、私は・・・口では生きてるって言ってたけど・・・本当は諦めてたから・・・。」
渚は。そう言うと、悲しそうな表情になる。
『・・・渚。』
そんな渚の表情に、エリアスは心を痛めた。