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五大竜長兄ブレイ

 『・・・大変申し訳ありませんでした。誠心誠意、お詫び申し上げます。』

 ブレイは、先ほどまでの威勢はどこへやら、身を縮めて風太達に謝った。

 「・・・ちゃんと協力してくれるならもういい。」

 「ったく。手間かけさせやがって・・・。」

 「協力してくれるのなら、それで構わないよ。」

 「よろしくね、ブレイ。」

 風太達は、各々違った反応をブレイに返す。

 「・・・さてと。ブレイも協力してくれることになったところで、契約してくれる相手を選ばないとね。」

 「相手か・・・。確か、力の強い魔物は、魔物の方に決定権があったな。」

 「そうなると、ブレイ自身に決めてもらうしかないね。」

 『・・・なあ、エリアス、フィード。お前らはこいつらと契約したんだよな?・・・決め手は何だったんだ?』

 ブレイは、エリアスとフィードに、何を基準で契約したのか尋ねた。

 『そうですね・・・。私の場合は直感ですね。』

 『僕の場合は、彼に頼まれたからだね。一応、試練は与えたけど。』

 『おいおい・・・バラバラじゃねーか。それじゃあ何を基準にすればいいか分からねーじゃねーかよ・・・。』

 ブレイは、二体の返答に困惑してしまう。基準があるようなないようなものだったからだ。

 『だったら、僕みたいに試練を与えるかい?』

 『・・・いや、もう試練はこりごりだ。』

 試練を課して、契約者を決めたらどうかとのフィードの意見に、ブレイは嫌そうに否定する。面倒くさがり屋なこともあるが、あの時の戦いは、相当キツかったようだ。

 『では、私のように勘で決めますか?』

 『・・・勘って言ってもよー・・・。』

 それもそれで面倒くさそうだと、ブレイは感じた。

 「・・・それじゃあ、属性の合った相手と契約するかい?何の偶然か、エリアスもフィードも同じ属性の契約者と契約しているんだ。」

 誰と契約するか決めかねているブレイに、ソウが助言する。

 『・・・それが一番楽そうだし、そうするか。おい、火使いのお前。』

 「!俺か?」

 ブレイは、自分と同じ属性の焔に話をふる。

 『ああ。面倒なことやる気はねーから、お前と契約だ。』

 「おい!いいのかよ、それで!俺が悪人だったらどうすんだよ!?」

 『・・・悪人だったら、他の竜達が気付くだろう。さ、契約すっぞ。』

 「・・・。」

 あまりにアッサリと契約するブレイに、さすがの焔もそれでいいのかと心の中でツッコんだ。

 「焔。今は、五大竜の力が必要なんだ。どうこう言っている場合じゃないよ。」

 「寧ろ、契約してくれてラッキーだと思えばいいじゃないか。」

 「・・・ああ、そうだな。・・・少々釈然としないが・・・今は一刻も早く、ヤミーを倒さねーといけないからな。分かった、契約だ。」

 焔は、ブレイに右手を差し出す。すると、焔の手は、眩い光に包まれる。

 しばらくして、光が消えると、焔の右腕には、銀色のガントレットが装着され、一振りの大剣が握られていた。形状はツヴァイハンダーのようで、鍔の部分は赤色の竜が口を開けているような形状で、口には赤色の宝玉がはめ込まれていた。

 「!おお!風太のよりデカい剣だ!・・・って重っ!」

 目の前に現れたカッコイイ剣に焔は興奮するも、すぐに重さで剣を落としてしまう。

 『俺との契約の証、【ブレイカー・オブ・ブレイ】だ。どうだ、フィードの剣よりカッコイイだろう。』

 ブレイは、自分の契約の証を自慢するかの如く、胸を張る。一方、醜態を晒した焔は、ムッとした様子でブレイを睨む。

 「・・・この野郎・・・こんな重い剣出しやがって・・・!」

 『おいおい、そのくらい軽々使えてもらわないと困るぞ。お前は、最初に生まれた五大竜の契約者になるんだからよ。』

 「?最初に生まれた五大竜?五大竜って、生まれた順番があるのか?」

 「まあね。五大竜は、火、水、風、土、光の順番で僕が創ったんだ。そして、最後に創ったのが、ヤミーなんだ。」

 「そうだったのか。・・・じゃあ、ブレイは長男ってことになるのか?」

 『その通りだ。で、フィードとヤミーは弟ってわけだ。んでもって、エリアスとランドとセイクが妹だ。』

 ブレイは、どこか嬉しそうに言う。まるで自分が一番上の兄弟であることを自慢するかのように。

 『・・・生まれた順番がそうでも、君を兄とは認められないね。精神年齢は一番低そうなんだから。』

 『同感です。あなたよりフィードの方がマシです。』

 『んだと!?』

 そんなブレイに、二体は冷ややかな反応をする。そんな二体に、ブレイは抗議する。

 『あの時の戦いだって、君は怠けてなかなか来なかったじゃないか。そんな怠け者が兄だなんて、僕達は嫌だね。』

 『俺が加勢したから勝てたの忘れたか!あのままじゃセイク死んでたんだぞ!』

 『あなたがもっと早く来てくれれば、もっと早く片付いていました。あなたが怠慢だからです。』

 『仕方ねーだろ!ヤミーがあんなことするなんて思いもしなかったんだ!あいつはそんなことする奴じゃなかったのはお前らだって思ってただろうが!』

 『・・・それは否定しないけど、だからってあそこまで酷くなるまで放置はいただけないね。』

 『うるせー!』

 「・・・。」

 (・・・なるほど。よくよく見てみると、確かに兄弟っぽいかな。)

 風太は、彼らのやり取りを見て、兄弟のようであると感じていた。他愛のないことで喧嘩-世界滅亡が他愛もないかは置いておくが-し、それでも大事なことがあれば協力して立ち向かう。まさに兄弟である。風太は、彼らのやり取りに、懐かしさを感じていた。

 (・・・そういえば、俺もくだらないことで喧嘩したな・・・。)


 「お兄ちゃん!風子のプリン食べたでしょ!」

 風子が目に涙を浮かべて、幼い風太に迫る。

 「え?あのプリン、風子のだったのか?てっきり、俺のだと・・・。」

 「酷いよ・・・風子、楽しみに取っておいたのに・・・!」

 「ごめんごめん・・・。俺のお菓子やるから機嫌直してくれよ。」

 「や~!」

 風太は、自分の持っていたスナック菓子を風子に渡そうとするが、風子の機嫌は直らず、むくれてしまい、そっぽを向いた。

 「・・・でも、ほっぺにチューしてくるなら・・・いいよ・・・。」

 「・・・分かった。」

 風太は、風子の頬にキスをする。すると、風子は先ほどとは打って変わって満面の笑みになる。

 「えへへ・・・ありがと、お兄ちゃん。だ~い好き!」

 (・・・ほっぺにチューくらいで機嫌が直るなんて・・・。)

 風太は、何故こんなに簡単に機嫌が直ったのか理解できず、困惑した。


 「・・・おい、風太。聞こえてるのか?」

 「!?焔!?・・・どうした?」

 不意に、焔から呼びかけられ、風太は焔の方を向く。

 「さっきから声をかけてんのに、何も反応しねーから心配したぞ?どうしたんだよ?」

 「・・・いや・・・何もない・・・。」

 さすがに、幼い頃の出来事を話すのもはばかられたので、風太は言葉を濁した。

 (・・・まさか、あの時には俺のことを?・・・子供だと思っていたけど、ませたところがあったんだな・・・。)

 風太は、昔の風子とのやり取りを思い出し、複雑な心境だった。

ブレイは駄目兄貴、エリアスはしっかり姉貴です。

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