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絶対制御コード

 「・・・なんとか無事に脱出できたな。」

 神殿から無事に逃げ出せた風太達は、外で一息吐いていた。

 「・・・ブレイは大丈夫かな?痛そうに見えたけど・・・?」

 『大丈夫だよ。彼、丈夫だから。あれくらいじゃ死なないよ。』

 「・・・でも、どうするんだい?彼、協力する気なさそうだったよ?生きてても、協力は見込めないと思うね。」

 『参りましたね。ヤミーに対抗するためには、五大竜全員が力を合わせなければならないというのに・・・。』

 「あんな怠け者、仲間になっても役に立たなさそうだぜ?」

 「役に立つ立たないじゃない。必要かどうかだよ。」

 ブレイをどうするか考えていたその時、神殿の一部に穴が開いた。そして、その中からなんと、ブレイが出てきたのだ。

 「!ブレイ!」

 「あの野郎!追いかけてきやがったのかよ!」

 『ま・・・待て・・・!』

 だが、出てきたブレイは、飛ぶこともままならないほどフラフラで、今にも倒れそうな様子であった。あの時のダメージは、決して軽いものではなかったのだろう。

 『はあ!はあ!はあ!・・・お・・・俺から逃げられるなんて・・・思ってんじゃねーぞ・・・!』

 「・・・随分ボロボロだな。無理しないで休んだら・・・。」

 『うるせー!・・・はあ!はあ!・・・お前ら全員ぶっ殺して・・・!』

 「いい加減にしないか、ブレイ。」

 『!?』

 「!この声は・・・!」

 不意に聞こえてきた声に、皆、声の聞こえた方を向く。そこには、風太達の見知った人間がいた。ソウである。

 「ソウ!」

 『!?誰だ、お前!?』

 「久しぶりだね、ブレイ。しばらく見ない間に、怠け癖が付いたようだね。」

 ソウは、微笑みを浮かべながらブレイに歩み寄る。一方のブレイは、ソウの言葉が気に障ったのか、怒りの表情を浮かべる。

 『怠け癖だと!?おい!お前!俺を馬鹿にしてんのか!?』

 「馬鹿になんてしてないよ。君は仮にも世界を守る竜の一体なんだ。ちゃんと自分の役目を果たさないと駄目だよ。」

 『俺に指図すんじゃねー!』

 ソウの態度に腹を立てたブレイは、ソウにブレスを放とうとする。

 「!まずい!ソウ!逃げろ!」

 『大丈夫だよ。』

 「何言ってんだ!ソウは、戦う力がないって・・・!」

 『戦う必要はないよ。』

 焦る風太とは対照的に、フィードはどこか余裕だった。そうこうしている間に、ブレイの口には膨大な熱量を帯びた炎が発射寸前になっていた。

 「!ソウ!」

 「・・・【絶対制御コード】発動。」

 ブレスが放たれそうになる直前、ソウが何かを呟くと、ブレスは突然消えてしまうのだった。

 『!?どうなってる!・・・くそ!』

 ブレイは再度、ブレスを放とうとするが、ブレスは出なかった。

 『!?おかしい!どうなってやがる!?』

 「・・・ブレイ。君に与えた力は、全て失効した。今の君は、ただの羽蜥蜴だ。」

 『!羽蜥蜴だと!?ふざけるんじゃねー!』

 ブレイはソウを殺そうと、腕を振り上げようとする。だが、腕は持ち上がらなかった。

 『!?ありゃ?腕が・・・!・・・!?いや・・・身体が・・・動かねー・・・!?』

 ブレイは、腕どころか自身の身体が全く動かなくなっていることに困惑する。

 「・・・風太。今だよ。」

 「!?」

 「今ならブレイを倒せる。攻撃するんだ。・・・ただし、ソード・オブ・フィードに魔力は込めなくていい。」

 「ええ!?それじゃあ奴にダメージなんて・・・?」

 「いいから。」

 「・・・分かった。」

 風太は、ソード・オブ・フィードを抜くと、ブレイに切りかかる。

 『へん!フィードの武器ごときで俺が傷付けられるとでも・・・!』

 身体は動かなくとも、フィードの武器で大したダメージを受けることはないと、ブレイは恐れることもなく、風太の攻撃を受ける。普通なら、相性の関係と、いかに五大竜の武器であろうと、魔力を込めていない状態で五大竜を傷付けることはできないからだ。

 だが、ブレイの身体は、呆気なく切り裂かれていた。傷口からは夥しい血が噴き出す。

 『ぎゃああああああああああ!?いてえよー!?』

 風太に切られたブレイは、目から大量の涙を流し、地面にのたうち回る。これには、風太の方も驚愕した。

 風太は、ソウの言われた通り、魔力を込めなかったのだ。だから、風太もそんな状態でダメージが入るなど思っていなかった。だが、結果はアッサリとブレイの身体を切り裂いていたのだ。もし、魔力を込めていれば、もっと酷い怪我を負わせていたであろう。思いがけない展開に、攻撃した風太自身も驚いたのだ。

 「何だ!?俺、そんなに強く切ってないぞ!?どうして!?」

 「今、彼は五大竜の力の一切を失効しているからね。ただの魔物と大差ない状態だからだよ。」

 「失効?」

 『創造神の力の一つだよ。創造神は、自分の創造した存在に力を与えたり、失効したりできる。おまけに、その動きさえ操作できるんだ。これが、創造神の【絶対制御コード】だよ。』

 フィードが、ソウの力を説明する。

 世界を創造した創造神のみ持つ絶対の力。それが、【絶対制御コード】である。この力を行使されれば、どんな強力な力を持つ魔物であろうと、一瞬にして無力と化す。おまけに、そのものの生殺与奪まで握ることができるのだ。まさに、神の力なのである。

 「【絶対制御コード】!?そんなものが創造神にはあるのか!?」

 『うん。僕も、彼に会った時、創造神とは気付かなかったけど、それを見せられて、彼が本当のことを言ってると分かったからね。あの時はびっくりしたよ。いきなり飛べなくなったんだから。』

 「・・・力を色々なくしたとか言ってたけど、そんな凄い力が残っていたのか。」

 「その力があれば、ヤミーをどうにかできるんじゃないのかい?」

 「いや、これでも結構弱体化しているよ。まず、2m以内にいる対象にしか効果がないし、対象は一体だけ。しかも、その一体に効果を発揮している最中は、他の相手には使えないんだ。・・・マトモな状態なら、この世界のどこにいても、どれだけ数が多くても無力化できたんだけどね・・・。」

 「なあ、ソウルイーターにもこれを使って無力化できたんじゃねーのか?渚の近くにいたんだろ?」

 「それも駄目なんだ。今の僕じゃ、直接創造したものにしか効果を発揮しないんだよ。だから、五大竜は止められても、後から生まれた魔物や人には効果がないんだ。・・・はあ、【絶対制御コード】まで弱体化してしまっているんだから、本当にポンコツだよ、僕は。」

 自分の力の想像以上の弱体化にソウは嘆く。これでは、とてもヤミーを止めることなど叶わないからだ。

 (・・・いや、今の状態でも十分・・・というわけにはいかないか。ソウ自身に戦闘力はないから、近付くのは大変だろうし。それに、効く相手も限られてしまっているんだからな。・・・まあ、それを差し引いてもとんでもない力なのは確かだな。)

 だが、風太の方は、意外なソウの力に、紛いなりにも彼が神であることを実感していた。

 一方、風太達の話を聞いていたブレイは、凍り付いた様子で、恐る恐るソウを見る。

 『・・・まさか・・・あんた・・・創造神様だったのか・・・!?』

 「そうだよ。・・・でも、もうその名前で呼ぶのはやめてほしいな。今は、ソウだよ。」

 ソウは、穏やかに微笑みながら返す。だが、心なしか、今のソウは、微笑んでいるにも関わらず、怒っているようにも見えた。まるで、怒りのオーラが背後から出ているかのようだった。

 『・・・す、すみませんでした!創造神様・・・いえ、ソウ様とは知らず、あのような無礼な態度を!どうか、お許しを・・・!』

 ブレイは、今まで見せていた高圧的な態度とは一転、へりくだった態度で深々と頭を下げた。まるで、土下座をしているようだった。

 「・・・何だこれ?」

 『・・・ブレイはね、彼に頭が上がらないんだよ。』

 「・・・どうして?」

 『さあ。何故か彼に対しては、低姿勢なんだよ。・・・その謙虚さを、他のものにも見せてくれればね・・・。』

 フィードはそう皮肉ると、土下座をするブレイを苦笑して見るのだった。

昔のソウは、ほぼ無敵の存在でした。今は・・・お察しください。

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