赤羽焔&黄沢震対火竜ブレイ2
「!焔!震!」
ブレイのブレスの熱波は、岩陰に隠れている風太にも届いていた。こんなものに焼かれれば、いくらエリアスの加護があっても助からないであろう。風太は不安に駆られ、岩陰から飛び出そうとする。
「・・・大丈夫だ、風太。」
二人がやられてしまったと思った風太の耳に、焔の声が聞こえてきた。
「!二人共、無事なのか!?」
「思った通りだ!焔のファイアウォールで、ある程度炎の威力は緩和できている!」
ブレスが直撃する直前、焔は火属性防御魔法のファイアウォールを発動し、周囲を囲んだのだ。だが、いくら同属性だと半減するとはいえ、五大竜のブレスを受け止めることなど普通はできない。それができるのも、焔の魔力が並外れているからである。
「しかも、震がロックウォールを何十枚も展開して守りを固めてっから、こっちに炎が来てねー!これならブレスも怖くねー!」
それと同時に、震が土属性防御魔法のロックウォールを発動し、威力を削がれた炎を防ぐ。削がれたにも関わらず、ブレイのブレスは二人を殺すには十分すぎる威力があった。その威力を、ロックウォールで受け止めたことで、二人は死なずに済んだのだ。だが、ロックウォールを単に発動させただけでは、すぐに壊れて意味をなさない。そのため、震はロックウォールを多重に展開してブレスを受け止め、壊されてもすぐにそれ以上のロックウォールを展開して、ブレスを完全にシャットアウトしたのだ。二人には、炎どころか熱波も届いていなかった。
「・・・でも、これで防げるのはブレスだけだ。体当たりでもされたらあっという間に壊されてしまう。」
「じゃあ、体当たりさせねーよう挑発しねーとな。おーい!その程度の炎じゃ効かねーよ!もっとつええの撃ってこいよ!できねーのか?」
『!!!殺す!』
焔に挑発され、ブレイはさらにブレスを吐き続ける。炎の勢いは、徐々に強くなり、遠目から見ても威力が上がっていることが見て取れた。
「緑川風太!早く風を用意してくれ!敵の力が未知数な以上、いつまでもつか分からないし、魔力が切れればおしまいだ!」
「分かった!・・・フィード、あとどれくらいで終わる?」
『・・・もう少しだね。風太のおかげで早く済みそうだよ。』
「・・・でも、全然風を感じないぞ?」
『一か所に集めて圧縮しているからね。・・・よし、もうすぐだ・・・!』
一方、焔達の方は、次第に魔力が尽き出してきたのが、ファイアウォールの勢いも弱くなっていき、ロックウォールも徐々に、生み出す数が減ってきていた。
「・・・ヤベー・・・そろそろ限界だぞ・・・!」
「緑川風太!まだかい!?」
「フィード!」
『・・・よし!できた!・・・くらえ、ブレイ!』
フィードは、圧縮した風をブレイに飛ばす。焔達に気を取られていたブレイは、攻撃に気付かず直撃する。すると、突然凄まじい風の渦が発生し、ブレイは渦の中に閉じ込められる。
『な・・・何だと!?』
『名付けて、風竜の台風!』
『ちぃ!こんな風程度で俺を倒せるとでも・・・!』
「今だ!エリアス!」
『水竜の息吹!』
ブレイを閉じ込める風の渦に、エリアスは大量の水のブレスを放つ。その水は、風の渦と一体化し、物凄いスピードでブレイに襲い掛かる。
『うがああああああああああ!?』
ブレイは、全身に凄まじい激痛を感じ、叫び声を上げてしまう。
この時放ったエリアスのブレスは、如何に弱点とはいえ、ブレイにダメージを与えられるものではなかった。だが、凄まじい速さの風と一体化したことで、水の威力が増し、ブレイにダメージを与えられるほどになっていたのだ。
慌てて逃げようとするブレイだったが、水と風が一体となった渦を抜け出すことができない。風太の並外れた魔力の影響で、この風の渦の強さは、フィード本来の強さで放ったものと変わらなかったのだ。さらに、力尽くで逃げ出そうとしたことで、逆に風と水の攻撃をあえてくらう形になってしまい、寧ろ大ダメージを受けてしまう結果となったのだ。
『ぐわああああああああああ!』
風に巻き上げられたブレイは、そのまま壁に叩きつけられると、溶岩の中へと落ちていき、そのまま沈んでしまうのだった。
「やった!成功だ!」
「・・・危なかった・・・。」
ブレイが倒れ、ブレスが止まったと同時に、ロックウォールが崩れて二人の姿が露わになる。二人は、魔力を大量に消耗したことで、座り込んでいた。
「あと・・・十秒遅かったら・・・死んでいたよ・・・。」
「ははは・・・まさに・・・紙一重だな・・・。」
辛うじて勝利することができたことに安堵する風太達。だが、その時、天井から鈍い音が聞こえてきた。それは、何かが崩れるような音であった。それと同時に、上から小さな岩の欠片が落ちてきた。
『!まずい!神殿が!』
「やっぱりもたなかったか・・・!」
「まずいぞ!ここままじゃ生き埋めだぜ!」
「・・・緑川風太。まだフィードに魔力は送れそうかい?」
「・・・ああ。まだ大丈夫だ。」
「なら、少々強引だけど、崩れ出している天井を破壊して逃げよう。」
「!そうか!崩れているってことは、少し壊せば外に出られるかも・・・!」
風太は、フィードの背中に乗る。
「フィード!天井に出力最大でブレスでも何でもいいから攻撃だ!」
『分かった。』
「エリアス!渚達を乗せて付いてきてくれ!」
『分かりました。さあ、私の背中に!』
「おう!世話んなるぜ。」
「水竜の乗り心地とは、どんなものだろうね。」
「・・・。」
非常時でありながら、楽しそうに背中に乗る二人とは対照的に、どこか複雑そうな面持ちの渚だった。
『行くよ!』
風太を背中に乗せたフィードは、天井に向かって飛ぶ。
『風太!これから天井に体当たりする!振り落とされないよう、しっかりつかまってて!』
「分かった!頼んだぞ!俺の残りの魔力、全部使っていいからな!」
風太は、フィードに魔力を送る。フィードは全身に風を発生させると同時に、回転して天井に凄まじいスピードで向かっていく。
『風竜の竜巻突破!』
回転したままフィードは、天井に激突する。ぶつかった岩盤部分は、まるでドリルで削られていくように砕かれていく。
『うおおおおおお!』
フィードは、さらに回転のスピードを上げる。纏う風の勢いも、どんどん強くなっていく。
そのフィードの下に付く形で、エリアスが続く。背中に乗る三人に、上から小さな岩の欠片が落ちてきて当たる。
「・・・もう少し丁寧にできないのかな?」
「わがまま言うなよ。死ぬよりマシだろ。」
「・・・エリアス。いつもみたいに簡単な結界は張れないの?」
『・・・すみません。今の渚から魔力をもらうわけにはいきませんから、張ることができないのです。』
「・・・そう。ごめんね、無理言って。」
『いいえ、力が及ばずすみません。』
エリアスは、すまなさそうに謝る。
「大丈夫。気にしなくていいから。」
「・・・フィード、あとどれくらいで抜けられそうだ?」
『・・・あと少しだよ・・・!』
フィードの言葉通り、ついに天井を貫き、穴が開いた。その穴から飛び出すように、フィードは出て行く。それに続く形で、エリアスも外へ出る。そして、二体の竜が外に出たと同時に、神殿は崩れてしまうのだった。
少々加筆しました。




