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目覚める火竜

渚の口調を変更します。

 「・・・ここが・・・最深部か・・・。」

 守護者達の道を渡り終えた風太達は、神殿の最深部と思われる場所に辿り着いた。そこは、守護者達と会った場所と同様に、崖のようになっていて、その下に溶岩の海が広がる場所だった。

 「・・・フェニックス。ここが、最深部でいいんだな?」

 『そうだ。ここが、神の眠る地だ。』

 フェニックスのサモンカードを取り出し、風太はこの場所が最深部か確認を取る。フェニックスは、肯定する。

 「・・・エリアス。ブレイの反応はある?」

 『・・・ええ。間違いありません。この溶岩の下に、ブレイはいます。』

 渚はエリアスに、ブレイがこの付近にいるか尋ねる。エリアスは、迷いなくこの溶岩の海の下にブレイがいると断言する。

 「・・・さてと。どうやって起こすか・・・。」

 「それが問題だね。力尽くでやるのはNGとして、何かいい方法はないだろうか・・・?」

 「・・・エリアス達に起こしてもらえばいいんじゃねーか?知り合いなんだろう?」

 「エリアス、ブレイを起こすことはできる?」

 『・・・できなくはありません。・・・ですが、絶対にブレイは怒るでしょう。彼の寝起きの悪さは、竜一番ですから。』

 「・・・それって、起こせば絶対に暴れるってことか?」

 『その可能性は高いでしょう。』

 「・・・参ったな。このまま起こせば、確実に俺達は生き埋めだ。」

 『風太。いい方法があるよ。』

 「?何だ、フィード?どんな方法だ?」

 『ブレイは寝るのも大好きだけど、食べるのも大好きなんだ。だから、ブレイの大好物で釣るんだよ。』

 「ブレイの大好物?何だ、それは?」

 『ブレイは、焼いた肉が大好物なんだ。人間が言うところのステーキだよ。』

 「ステーキか。なるほど、ドラゴンらしい好物だな。」

 あまりに定番のメニューに、風太は思わずにやけてしまう。風太も竜達の食性は気になっていたが、やはり肉食だったと知り、ますますゲームっぽいと思った。

 『・・・風太。僕達が単なる肉食獣と同じように考えているのなら、それは誤解だよ。僕達は、基本的に大気中の魔力を吸って生きていける。食べなくてもいいんだ。』

 「食べなくてもいいのに食べるのか?」

 『人間だって、生存に不必要な行為をするじゃないか。それと同じだよ。』

 「・・・確かに、嗜好品とかあるしな。そんな感じか。」

 『そういうこと。ブレイの一番お気に入りの嗜好品が、ステーキだってことだよ。』

 「・・・でも、ここにはステーキに使える肉になりそうなものはないよ。フレイムリザードやマグマサーペントは、食用に適さないんだ。外に出て魔物を狩るしか・・・。」

 『大丈夫。ブレイの好物は、肉だけじゃないよ。甘いものも大好物なんだ。』

 「甘いもの・・・。あ!そうか!渚の作ったお菓子だな!」

 『そう、それを餌にする。』

 「・・・でもよ、どうやって菓子の匂いをブレイに届けんだよ?」

 『僕は、風の竜なんだよ。匂いを遠くに届けるくらいわけないよ。』

 フィードは自信ありげに言う。

 「分かった。フィード、任せるぞ。【サモン・フィード】!」

 風太は、フィードを召喚する。

 『じゃあ渚。君の作ったお菓子を出してくれないかい。』

 「分かった。」

 渚は、肩掛けカバンの中から、クッキーを入れた紙袋を取り出すと、封を解く。

 『よし、僕の風で、この匂いを溶岩の海にいるブレイに届けるよ。』

 「本当にそんなことができるのか?」

 『問題ないよ。僕は、風さえ通れば水の中でも同じことができる。・・・じゃあ、いくよ。』

 フィードは、小さな風を起こす。その風は、お菓子の袋を通過すると、溶岩の中へと消えていく。

 しばらくして、溶岩の海が、いや、周囲が大きく揺れ出す。

 「!?これは・・・!?」

 『・・・来ます、火竜ブレイが・・・!』

 すると、溶岩の海から、巨大な生物が飛び出した。それは、エリアスに似たドラゴンだったが、体躯はさらにがっしりとしていて、一回り程大きく見えた。体色は真っ赤で、まるで炎が竜の姿を取っているようであった。

 「・・・これが・・・火竜ブレイ・・・!」

 「・・・やべー・・・こいつはイフリートやサラマンダーの比じゃねー・・・!フィードみてーな圧を感じるぜ・・・!」

 『・・・。』

 一方ブレイは、周囲をキョロキョロと見渡し、何かを探している様子だった。風太達のことは、まったく視界に入っていないようである。

 『・・・うまそうな匂いがしたってのに、何もねーぞ?どうなってやがる?』

 『やあ、ブレイ。久しぶりだね。』

 『!?フィード!何でここにいやがる!?』

 フィードに気付いたブレイは、露骨に嫌そうな顔をする。ドラゴンの表情など、普通は分からないのだが、今回ばかりは風太達も、ブレイの表情がなんとなくだが分かった。

 『君に協力してもらうために来たんだよ。僕以外にもいるよ。渚。』

 「【サモン・エリアス】!」

 フィードに促され、渚はエリアスを召喚する。フィードと並ぶように、エリアスが出現する。

 『!?エリアス!お前もいるのかよ!?』

 ブレイの表情が、さらに嫌そうなものに変わる。風太達でも分かるほどに。

 『ブレイ、世界の危機です。ヤミーが復活しました。』

 『復活だと!?んな馬鹿な!あいつはセイクの奴が封じてるはずだろが?』

 『ヤミーを崇拝する者達が、セイクの目を盗んでヤミーを解放したのです。現在、世界はヤミーの手に落ちつつあります。』

 『このままじゃ、またあの時の戦いと同じ・・・いや、それ以上にとんでもないことになる。だから僕達は、他の竜を探しているんだ。』

 『・・・だったらランドとセイクに頼めよ。俺は嫌だぜ。まだ寝足りねーんだ。』

 『セイクとは連絡が取れないんだ。ユニバスにヤミーの結界が展開されているせいでね。それを壊すには、セイク以外の四体の竜の力が必要だ。だから、君も・・・。』

 『俺は嫌だと言ってんだ。もう戦うなんてまっぴらだ。』

 『ブレイ!』

 フィードとエリアスの説得に、ブレイは応じる様子はなかった。

 それを見ていた風太達は、何故ここまで嫌がるのか考えていた。

 「・・・なんで、あんなに戦うのを嫌がるんだ?」

 「それだけ昔の戦いが酷かったのかな?世界が滅んじゃう寸前だったって聞いたし。」

 「単にサボりたいだけじゃないかな?フィードとエリアスが言うには、怠け者だって話だし。」

 「或いは、一番弱い五大竜だからじゃねーか?弱すぎて足引っ張ってばっかだったから、ヤミーと戦うのが怖いんじゃねーか?」

 『!・・・おい、何だか聞き捨てならねー言葉が聞こえた気がすんだがよぉ?』

 風太達の何気ない言葉に、ブレイは反応する。

 「ん?俺の言ったことが気になるのか?」

 『・・・お前ら、人間だな。さっき、俺のことを馬鹿にしたように聞こえたんだがよぉ・・・?』

 ブレイは、風太達に顔を近づけると、鋭い目付きで睨み付ける。その声は、怒気を帯びていた。

 「いや・・・だって戦うの嫌な理由言わねーからよ。他の二体が戦う気満々なのによ、お前だけ嫌だなんて気になるだろ。」

 「それで、結局のところ、何が理由で嫌なんだい?焔の言う通り、一番弱いからヤミーが怖くて戦いたくないのかい?それとも単にサボりたいだけかい?」

 「それとも、昔の戦いで何かあったの?」

 『・・・お前ら・・・俺を誰だと思ってる?俺は、創造神からこの世界を任された火竜ブレイだぞ!舐めた口利くんじゃねー!』

 ブレイは、自分が弱くてヤミーを恐れて逃げていると言われたことに憤慨したのか、怠け者だと言われて馬鹿にされたと感じて激怒したのか、凄まじい剣幕で風太達に迫る。何も知らない人間が見ても、殺意を抱いているのが分かるほどである。

 「・・・じゃあ、どうして戦うのが嫌なんだよ?理由を教え・・・。」

 『殺す!』

 ブレイは何も答えず、口を大きく開く。

 『!いけません!』

 エリアスは、風太達の周囲に水の障壁を展開する。それと同時に、ブレイの口から、凄まじい炎が吐き出される。

 『火竜の息吹ドラゴニックファイアブレス!』

 ブレイの炎のブレスは、障壁に直撃する。障壁は、ブレスの炎を受け止めるが、表面は凄まじい高温に晒され、蒸発していく。だが、障壁は破れることなく炎を防ぎきる。ブレイは、破れないと分かると、ブレスを止める。ブレスが止まったと同時に、水の障壁も消滅した。

 「・・・危なかった・・・!」

 「はあ・・・はあ・・・はあ・・・!」

 「!渚!?」

 突然、渚が倒れそうになり、風太は彼女を支える。

 「大丈夫か!?」

 「だ・・・大丈夫・・・!・・・ちょっと・・・魔力を急に・・・たくさん消費しただけ・・・!」

 『すみません、渚。同意なく魔力を借りて。ですが、あのブレスを受け止めるには、渚からの魔力が必要でした。』

 (・・・渚がこんなになるなんて・・・!あのブレス、相性がよくても相当ヤバいものだったんだな・・・!)

 「・・・にしても、弱いって言われたくらいで何マジ切れしてんだよ、あいつ?」

 『ブレイは、体温こそ高いけど、沸点は低いんだ!ちょっとしたことで、すぐ怒り出すんだ!寝起きが悪いだけじゃない!』

 「・・・ガキか!」

 『エリアス!余計なことしやがって!もう勘弁ならねー!お前ら全員ぶっ殺す!』

 エリアスが風太達を守ったのが気に食わなかったのか、ブレイは完全に頭にきたようで、物騒なことを口にしながら風太達へ殺意をむき出しにする。もう、話し合いなどできる状況ではなかった。

 『・・・こうなれば、無理矢理にでも言うことを聞かせるしかありませんね。』

 「・・・結局こうなるのかよ・・・!」

 風太は、戦うことになってしまったことを悔しがるも、状況を打開するべくブレイと対峙するのだった。

火属性だから、熱くなりやすいということです。

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