付いて来たもの達
守護者達と別れ、風太達は神殿のさらに奥へと進んでいく。周囲は一面の溶岩で、風太達の歩く道以外に何もなかった。
「この先にブレイがいるんだね。さて、どうやって起こしたものか・・・。」
「んなもん、叩き起こせばいいだろ?」
「簡単に言わないでくれ。相手は、性格はともかく、守護者とは比較にならない存在なんだ。下手に怒らせて暴れられたら面倒だよ。」
「震の言う通りだ。ブレイが暴れて神殿が崩れたら、俺達は終わりだ。叩き起こすのは、最後の手段だ。」
「・・・わーったよ。」
「でも、あんな凄い魔物を従えているなんて、ブレイって凄いんだね。エリアスもあんな魔物を従えているの?」
『はい。私も守護者の役割を与えた魔物を従えています。彼らほどランクの高い魔物ではありませんが。』
「じゃあ、ブレイは相当強いのか。」
『はい。・・・まあ、自分の所に来させないために強い魔物に守らせているのでしょうけど・・・。』
「そんな凄い魔物だったら、頼んで契約してもらえばよかったかも。」
「契約か。確かに、フェニックスあたりと契約し・・・。!ああ!しまった!」
「?どうかしたのかい?緑川風太?」
「・・・俺、フェニックスと契約しようと思ってたんだ・・・。」
「・・・はあ?」
風太は、自分がフェニックスと契約しようとしていたことを、今更になって思い出した。
「俺、鳥系の魔物と相性がいいみたいなんだ。契約している魔物は、フィードを除けば鳥系なんだ。だから、フェニックスとも契約できると思っていたんだ。」
「そういや、お前、フレアバードとも契約してたな。」
「でも、どうしてフェニックスを?フィードがいれば十分だと思うけど?」
「俺の考えている戦い方には強い火属性の魔物が必要なんだ。だから、ファイアバード系列の魔物のボスが欲しかったんだ。」
「じゃあ、あの時フェニックスに言えばよかったじゃないか。」
「・・・色々起きて、忘れてたんだよ・・・。」
「・・・どうするの?一旦戻る?」
「あそこまで格好つけて行ったんだ。今更できるか。」
『主。』
フェニックスと契約できるか話をしに戻ろうと提案されるも、体裁が悪いのでできないと悩む風太の前に、フレアバードが帰ってきた。
「!フレアバード。戻ってきたのか。」
『うむ。同胞と色々話ができた。時に主。主は、他の我が同胞と契約する気はあるか?』
「契約?ファイアバード系列の魔物とか?それは、できることならしたいけど・・・。」
『そう言うと思い、同胞の中でも腕の立つものを連れてきたのだ。同胞よ。この方が我が主だ。』
すると、溶岩の中から、ファイアバード系列の魔物が現れた。
「ファイアバード、フレイムバード、バーニングバード、ブレイジングバードか。・・・あれ?」
『・・・どうかしたのか?』
「・・・なあ、何でフェニックスがいるんだ?」
風太は、フレアバードが紹介した同胞に、フェニックスが交じっているのを見て面食らった。
『私もファイアバード系列の魔物だからだが?』
「いや、おかしい!お前、一応一番強いファイアバード系列の魔物だろ!何でフレアバードに呼ばれてくる!?それに、ここの守護者だろ!勝手に持ち場を離れていいのか!?」
『問題ない。そもそも、守護者は神へと通じる道を守るだけで、他に特別なことはしていない。』
「・・・そうなのか?」
『それに、お前達を見て、私もこの地で引き籠るより、外の世界に出て経験を積んだ方がいいと判断したのだ。だから、お前の契約しているフレアバードの言葉に乗ることにしたのだ。』
「・・・いわゆる修行したいってやつか。」
『それに、お前と一緒にいると面白いものが色々見られると聞いた。』
「・・・そっちが本命なんじゃないのかい?」
「フリーダムすぎだろ・・・。」
「でもよ、こんな溶岩しかねー場所いても退屈なのは分かるな。」
『神に会いに行きし者よ。私と契約する意思はあるか?』
「・・・寧ろ、こっちから頼みたかったんだ。俺には、少しでもヤミーに近付くための強い味方が欲しいんだ。もちろん契約する。」
『正直な男だ。いいだろう。契約成立だ。』
風太は魔力をフェニックス達に放出する。フェニックス達は、全員がサモンカードに変わっていく。
「・・・よし、目的の一つは果たせた。」
「これは、サブクエストにすぎないよ。メインクエストをクリアしなければ、ここに来た意味がないんだ。」
「分かっている。さあ、行くか。」
『お~い、待ってくれ~!』
フェニックス達との契約を終え、先へ進もうとした風太達の耳に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。なんと、サラマンダーが、溶岩の中を泳いでこちらに向かっていたのだ。
「・・・この声・・・そしてあれは・・・。」
「あの蜥蜴野郎だ!」
『よう!また会ったな!水使いの嬢ちゃんと旦那と土使い!』
「俺を無視すんじゃねー!」
サラマンダーは焔を無視して声をかけてくる。自身を無視され、焔は抗議の声を上げる。
『ははは!冗談だ!冗談!』
「俺達を追いかけてくるなんて・・・何かあったのか?」
『いいや、お前ら見てて面白そうだからよ。付いて行くことにしたんだ。』
「お前もか!」
サラマンダーまで付いてこようとすることに、風太は思わずツッコんだ。
「守護者が二人もいなくなってどうするんだよ!?」
『守護者なんてめんどくせーことは、真面目なイフリートにでもやらせときゃいいんだよ。せっかく神への道が開いたんだからよ。お役御免とさせてもらうぜ。』
「・・・いいのかそれで?」
あまりにフリーダムすぎる守護者達に、風太は呆れ果ててしまう。
『で、俺と契約してくれる奴はいねーか?嬢ちゃんでも旦那でもいいぜ。』
「渚。サラマンダーと契約してみるか?」
「・・・ごめん、私、もっと可愛いのがいい。」
『がは!?』
渚に可愛くないと言われ、サラマンダーは傷付いた様子でのけぞる。
「・・・じゃあ、震。」
「断る。こんな知的さの欠片もない魔物と契約は嫌だね。イフリートなら考えたけどね。」
『ぐお!?』
震から馬鹿と宣告され、サラマンダーはまたのけぞる。
「風太が契約してあげたら?」
「・・・できなくはないと思うけど、俺と相性よくなさそうだからな・・・。属性的にも、魔物の種族的にも。それに、もうフェニックス達がいる。」
「・・・だったら、消去法でいくと・・・。」
「・・・全く適任な人間が残ったね。」
風太達は、焔の方を見る。
「?何で俺の方を見る?」
「サラマンダー、焔と契約してくれ。属性的にも相性がいい。」
『ああ!?この雑魚とか!?冗談よしてくれよ、旦那!俺はお前か嬢ちゃんがいい!』
「誰が雑魚だ!誰が!」
サラマンダーからの失礼な発言に、焔は激怒する。
「だったら、契約は諦めてくれ。悪いけど、お前ほど強い魔物と手当たり次第契約できるわけじゃない。」
『・・・仕方ねーな。おい、お前。特別に契約してやるよ。』
「何が特別だ!馬鹿にしやがって!見てろよ!てめーが驚くほど強くなってやる!」
『ははは!期待しないで待っててやるぜ!』
焔は、不機嫌ながらもサラマンダーに魔力を放出する。サラマンダーの姿が、サモンカードに変わる。契約は成立したのだ。
「・・・やっぱり釈然としねーぜ。お情けで契約できた感があるぜ。」
「いいじゃないか。こんな強い魔物と契約できるなんて、運がいいぞ。」
「・・・。」
「じゃあ、そろそろ先へ進もう。早くブレイに会わないと。」
意外な戦力強化を果たした風太達は、再びブレイの許へと向かうのだった。
『・・・何だ・・・これは・・・?』
同時刻、イフリートは、岩に彫られた文字を見、絶句していた。内容は、『彼らが面白そうだから付いて行く』というものであった。
『・・・あの愚か者共が・・・!守護者の役目をなんと思っている!!!』
二体の勝手な行動にイフリートは激怒し、その影響からか、しばらく周囲の溶岩は、まるで台風の時の海のように荒れ狂うのだった。
ハブられるイフリートが可哀そうw