開かれた道
『まさか、竜の契約者とは・・・。知らぬとはいえ、無礼な態度を取ってしまった・・・。今までの非礼を詫びたい。』
イフリートは、渚と風太に対して平謝りしていた。先ほどまでの威厳は、嘘のようになりを潜めていた。
『なるほどな。だから、嬢ちゃんとその旦那は特に強いと感じたわけか。そりゃそうだ。神に認められるほどなんだ。よええわけがないな。』
対してサラマンダーは、自分の判断が間違っていなかったことを認識し、とても機嫌がよさそうになっていた。
『竜の契約者にあのような問答は、必要なかったかもしれぬな。・・・誠に申し訳ない。』
『いいじゃねーか。やっぱ、自分の目で確かめてみねーと分かんねーだろ。語るなら、拳だぜ。』
『・・・汝に拳はないではないか。どうやって語るというのだ?』
『ものの例えだよ。』
(・・・イフリートは真面目で、サラマンダーは一昔前の不良みたいな性格なんだな。・・・これだったら、無理して力試しするんじゃなくて、フィード達のことを話せばよかったか?・・・いや、サラマンダーはそれでもやってきたか。)
二体のやり取りを見て、風太は二体の性格を察した。
「・・・で、どうなんだよ?俺達は合格なのか?それとも、不合格なのか?」
焔は、二体にブレイの所に行けるかどうかを尋ねる。
『無論、合格だ。汝らを神の許へと通そう。』
『俺に本気出させたんだしな。合格にしてやるぜ。』
「・・・なんだか釈然としねーな。」
「通してくれるんだから、それで十分だろう?」
「・・・。」
不満げな焔を、震はたしなめる。認められれば先に進めるのだから、勝敗は関係ないのだが、サラマンダーに馬鹿にされていた焔としては、どうしても勝ちたかったのだ。それが、このような結果になってしまい、少々複雑な様子だった。
『・・・フェニックス。いつまでも隠れていないで出てくるがいい。』
イフリートは、フェニックスに呼びかけると、溶岩からフェニックスが現れる。
『イフリート、サラマンダー、彼らは私の言った通りだったろう。』
『・・・もしや、汝は二人が竜の契約者であることを知っていたのではあるまいな?』
イフリートは、険しい表情でフェニックスを睨む。
『いや、私が知ったのは、先ほどフレアバードから聞かされたからだ。私自身も驚いている。ただ者ではないとは思っていたが、まさか、竜の契約者だとは思わなかった。』
フェニックスは、イフリートの威圧にも動じず答える。フェニックス自身も、風太と渚が竜と契約しているなど思ってもみなかったのだ。ただ、なんとなく普通の人間と異なった雰囲気を漂わせていることは感じていたが。
「三体とも認めてくれたのなら、早くブレイの所に続く道を開けてくれ。あまり時間がないかもしれない。」
『わーってるよ、旦那。・・・でも、神が目を覚ましてくれるかは分からねーがな。』
「?分からない?」
『我らの神は、この神殿が作られ、眠りに就いてから一度も目覚めたことがないのだ。』
「一度も!?・・・この神殿ができたのはいつくらいなんだ?」
『正確な時期は、私も他の二体も分からない。・・・ただ、ヤミーが暴れた古の戦いの後であることは確かだ。』
「・・・ヤミーと戦ってからずっと寝てるのかよ?・・・どんだけ寝坊助なんだよ?俺だって起きるぜ。」
「・・・。」
あまりに長い間眠っているというブレイに、焔は呆れてしまう。しかし、それは風太も同じだった。風太は、フィードのサモンカードを取り出すと、彼にブレイの怠惰さについて尋ねる。
「・・・フィード。ブレイは怠惰とエリアスは言ってたけど・・・そんなに眠るものなのか?」
『ブレイならあり得るよ。彼-創造神-がいなくなってからは、いつも寝てばっかりだったからね。ヤミーが暴れて世界に被害が出て、ようやく動いたほどだよ。』
「・・・マジかよ?」
『うん。だから、ヤミーとの戦いが終わった後、ずっと寝ているって言われても、何もおかしいとは思わないね。』
「・・・呆れた奴だな。そんなんでよく世界の維持を任せられるな。」
『彼がいた頃は、そこまで怠惰じゃなかったからね。・・・いや、寧ろ怠けたくても怠けられなかったからかもね。』
(・・・ソウの奴、とんでもない管理人創ったな・・・。もっと性格いいのにしておけよ。・・・いや、性格までは指定できないのかもな。神様も万能じゃなさそうなこと言ってたし。)
『どうする?起きるかどうか分からねーが、それでも行くか?』
「行くに決まっている。俺達には、五大竜の力が必要なんだ。ブレイが嫌だと言って、無理矢理でも連れて行く。」
『おお!大きく出たな!さすがは嬢ちゃんの旦那だ!』
『では、我ら三体の守護者が道を開けよう。』
『神が目覚めるかどうかは、お前達次第だ。』
三体の守護者は、溶岩の海に向くと、力を放出する。すると、周囲が突然揺れ出す。
「!?地震!?」
「!風太!見て!」
なんと、溶岩の海から、岩場が迫り上がってきたのだ。それは、まるで橋のようになっており、遠くへと続いているようだった。
『この先が、神の眠る場所だ。汝らが、神に会えることを祈っている。』
「・・・ありがとう。行こう、皆。ブレイの所に。」
三体の守護者に見送られ、風太達は岩の足場を歩き、さらに先へと進んでいくのだった。