閉ざされたユニバス大陸
『風太!大変だ!』
『!フィードか。どうした?』
警戒の合間の時間に剣の訓練をしていた風太に、フィードからの【遠隔疎通】が届いた。
『ユニバス大陸に大規模な闇の結界が張られている!』
『結界?』
『魔力でできた壁だよ。あらゆる魔法的、物理的なものを弾き返すんだ。しかも、厄介なことに、ヤミーの配下以外出入りできないようになっている高度なものだよ。あれのせいで、ユニバスに入ることができない・・・。破壊しようとやってみたけど、全然効果がなくて・・・。セイクの安否もこれじゃあ確認しようがない。』
『・・・分かった。一旦戻ってきてくれ。王様に話してみる。』
『うん。・・・ごめん。グロバー大陸のランドの居場所は見当が付いたんだけど・・・。』
『二体見つかっただけでも十分だ。ありがとう。』
「どうかなされましたか、勇者殿?」
風太が突然、明後日の方向を無言で向いたことに、指導していた騎士団長は困惑していた。
「・・・団長。ユニバス大陸に結界が張られていて、フィードでも通れないと言ってきました。」
「結界?・・・やはり、ヤミーの拠点はユニバス大陸だったか。」
「ユニバスがヤミーの拠点?」
「はい。ユニバスには、ヤミーを封印する神殿がありました。おそらく、そこを拠点として利用しているのでは、と我々は考えていたのです。確証が得られませんでしたので、あくまで推測だったのですが・・・そこまで強固な結界を張っているということは、そこが拠点とみて間違いないでしょう。」
(ヤミーを封印・・・。だから、属性的に対立関係の光竜の神殿もあそこにあったのか。)
「しかし・・・五大竜でも駄目とは・・・恐るべき結界です。どうやって破ればいいのか・・・。」
「・・・一度、王様と話をしたいんですけど、いいですか?」
「構いません。この件も、奪還作戦に影響を与えるでしょう。」
二人は訓練を中断すると、国王の許へと向かうのだった。
「・・・ユニバスにヤミーの拠点がある可能性がこれで確信に変わったな。」
二人からユニバスのことを聞かされた国王は、敵の本拠地が判明したことに大きな前進を感じていた。
「はい。ですが、現状では結界を突破することは不可能です。風竜の力をもってしても、破壊できなかったそうです。」
「・・・賢者殿、何か良い手段はないものか?」
国王は、隣にいるモーゼに助言を求める。
「・・・ヤミーの力に対抗できる一番の力は光の力。光竜セイクの力でならば、突破できるかもしれませんが・・・。」
「風竜の言葉が正しいのなら、光竜の神殿はユニバスにある。光竜の協力を仰ぐのは不可能だ。」
「・・・ならば、【四元砲】しかありません。」
「四元砲?」
「賢者殿、それはどのようなものなのだ?」
国王も聞き慣れない言葉に、モーゼに説明を求める。
「【四元砲】。火、水、土、風の四つの属性魔法を同時に照射することで発動する超級魔法を凌ぐ、究極の魔法です。」
「超級を凌ぐ魔法!?それは、既に人の域を超えている魔法だ!そんな魔法があるのか!?」
「・・・モーゼ・・・様。確か、俺には魔法のランクは、超級が最強だと修行の時言っていましたけど・・・。」
「あくまでそのランクは、人のレベルで使えるものだ。それ以上の魔法は存在する。だが、そんな魔法を使える存在は、神に近い存在くらいだ。私でも使うことはできない。」
「でも、この魔法は、四属性の魔法を同時照射すればいいだけじゃ・・・?」
「原理はそうだ。だが、実際行うのは不可能だ。」
「不可能?」
「四つの属性をそのままで放ったとしても、相克を起こして使い物にならない。有効な属性と、不利な属性が混ざっている状態なのだから。」
(・・そうか。火は風で威力を上げられるが、水があると威力が下がる・・・。他の属性も、似たような傾向が出るってことか。)
「だが、四元砲を唯一撃てる方法がある。・・・それが、属性を司る竜の力。」
「!そうか!属性の根源を司る竜達なら、相克を起こすことなく、発動ができるということだな!」
「そうです、陛下。そのためには、他の二体の竜が必要となります。」
「うむ。では、勇者殿。風竜が掴んだ神殿の場所を教えてはくれないか?」
「分かりました。」
風太は、フィードから聞かされた場所を、国王達に話す。
「・・・火竜ブレイの神殿があるとされるのは、ワルド大陸の中央部にある火山グレタ火山。そして、土竜ランドの神殿は、グロバー大陸北方の山脈。」
「確か、この一帯は聖域と呼ばれ、開発が行われていないはずです。無意識のうちに近付かないようにしていたのか、或いは土竜の力で人払いをしていたのか・・・。」
「だが、ヤミーの手下に人払いは通じまい。見つかるのも時間の問題だろう。」
「ですが、いきなりグロバー大陸まで行くのは現実的ではありません。ここは、火竜の協力を得るのが先かと。」
「うむ。では、勇者殿はグレタ火山周辺の解放を最優先として行動してもらおう。」
「分かりました。俺達が道を開きますから、後ろをお願いします。」
こうして、奪還作戦の準備は進められていくのだった。
ようやく次話投稿できました。現実がキツイです・・・。