焔と震の異世界修行2
「・・・どうやら、言語は習得できたようだな。もう翻訳魔法は必要ないな。」
モーゼは、二人に対して言語習得の合格を宣言する。
「はー!はー!・・・何とか・・・やってやったぜ・・・!」
「・・・君が本当にできるなんて思わなかったよ。」
「俺だってなあ、やる時はやるんだよ!」
「では、次の段階に進む。そなた達の属性を知りたい。」
「属性・・・その人間が生まれつき内包している性質でしたね。」
「うむ。この魔石に触れることで、その属性を知ることができる。そして、それに合った魔法の修行をするのだ。」
「俺は、魔法より剣とか使う戦いの方がいいんだけどなー・・・。」
不満そうな焔。すると、モーゼは微笑みながら焔に言う。
「魔法を単なる遠距離攻撃方法と思っているのなら、それは間違いだ。使い方によっては、近接戦闘にも対応できる。それに、強化魔法というものもある。」
「強化魔法!?」
「文字通り、自身を強化する魔法だ。属性によって強化できる部分が違うがな。火ならば筋力、水なら魔力、風なら素早さ、土なら防御力、光なら回復力、闇なら精神力が強化されるのだ。」
「へー・・・それなら俺は、火がいいぜ。」
「それは、触ってみなければ分からん。魔石に触れてみるといい。」
モーゼは魔石を取り出す。焔は真っ先に魔石に触る。すると、魔石は真っ赤に輝く。
「属性は火だ。しかも、この魔力・・・緑川風太には及ばぬが、相当な高さだ。」
「おっしゃー!火属性だ!これで攻撃力アップの魔法が使えるぜ!」
「次は僕だね。まあ、僕はどの属性でもいいけど。」
震も魔石に触れる。すると、魔石は黄色く光る。
「土属性だ。魔力に関しては、赤羽焔より上だな。」
「なに~!?俺より魔力が高いとはどういうことだ!?俺の方が体力上だぞ!」
「魔力の高さに体力は関係ないだろう。それに、ゲームだと戦士は魔力少ないじゃないか。」
「うぐぐ・・・!」
震に負けたのが悔しかったのか、焔は項垂れる。
「属性は分かった。では、そなた達には宮廷魔術師に下級魔法をまず習うのだ。そなた達の持つ属性の魔術師に教えを乞うのだ。」
「俺は火だな。どうせなら、強化魔法も教えてほしいぜ。」
「僕は土だ。すぐにでも習得して、別の魔法も知りたいな。」
「既に、彼らは部屋に来ている。彼らの教えをしっかり聞くのだ。如何に才ある者でも、初歩が大事なのだからな。」
モーゼに送り出された二人は、どんな相手が自分に魔法を教えてくれるのか、期待しながら魔術師達の許へ向かうのだった。
『緑川風太。今回は非常時なので、あなたに力を貸しますが、渚が回復したら、私は渚の許に戻りますね。』
王都に上空にて、飛行するエリアスに風太は乗っていた。渚が回復するまで、一時的に風太が、エリアスのマスターとなっていたのだ。
「分かっている。渚が元気になれば、戻ればいい。」
『・・・しばらく見ない間に、ずいぶんと柔らかくなりましたね。渚も何か、吹っ切れた様子でしたし。』
「・・・ま・・・まあ、色々あったんだ・・・。」
『なるほど。ふふふふ・・・。』
「・・・何だよ。含みがある言い方だな・・・。」
『いえ、懐かしく感じたのです。昔、まだ五大竜が六大竜だった頃、セイクとヤミーがそのような感じでした。』
「え?ヤミーが?」
『はい。はたから見ても、二人が好意を抱いていることは明白でした。今のあなたと渚のように。』
「・・・ヤミーにそんな時期が・・・。」
竜達の意外な人間関係に、風太は驚いていた。まさか、竜同士も恋愛感情を抱いていたとは。しかも、あの邪悪の権化ともいえるヤミーが、自分の対立属性である光竜とである。驚かない方がおかしい。
『ええ。ですから私達は、ヤミーがあんな豹変をしたことが信じられなかった。ですが、セイクにさえ平然と危害を加え、住む者達や魔物を蹂躙して歓喜する姿に、我々は覚悟を決めたのです。』
「・・・。」
『もう、私達の知るヤミーはいません。・・・あんな残酷で傲慢な怪物・・・ヤミーではありません・・・。』
「・・・なら、俺がヤミーを今度こそ殺しても、文句はないんだな?」
『はい。それは、他の竜達も同様のはずです。・・・魂を滅ぼしきれなかったとはいえ、封印でとどめたのは間違いでした。そのせいで、あなたとあなたの妹・・・いいえ、あなたと同じ妹を持つ兄や姉に地獄のような苦しみを負わせてしまいました。これは、我々五大竜の責任です。今度こそは、完全に滅ぼさなければ・・・。』
「・・・分かった。でも、勘違いするなよ。今度は俺達がいるんだ。お前達だけで戦うんじゃないからな。それに、俺はお前やソウの責任になんてする気はない。この恨みは、全部ヤミーにぶつける。」
『・・・そうですね。頼りにしています。・・・ありがとう。』
「?最後に何か言ったか?」
『いいえ、何も。・・・戻りましょう。』
エリアスは、城へ戻っていくが、その表情は、どこか嬉しそうであった。