竜の契約者
「どうやって?・・・そもそも、お前がどうやってこの世界に来たのか聞いてなかった。」
「もちろん、竜の力よ。ヤミーが配下を送り込んだのなら、他の竜も同じことができるわ。」
そう言うとミリィは、腰にあるポーチからまたカードを取り出す。それは、スライムが描かれていた先ほどのものとは違い、青い竜の絵が描かれていた。
「・・・さっきから出してるそのカードは何だ?あの時のスライムも、そのカードから出て来たような気が・・・。」
「これは、魔物を宿す【サモンカード】よ。魔物と契約すると、こんな風にカード化するの。そして、このカードには、水竜エリアスが宿っているの。」
「!まさか・・・ヤミーを倒した竜の一体か!?」
「ええそうよ。」
「どうして・・・そんなすごいのをお前が・・・!?」
「私の一族は、代々エリアスに仕えているの。そして、世界に危機が訪れれば、エリアスと共に戦うという契約を結んでいるのよ。ヤミーが目覚める前にも、世界に脅威となる出来事が何度もあったわ。私の先祖は、エリアスと一緒に戦い、世界を救ってきたのよ。」
「だから、今はお前がそれを受け継いでいるのか。」
「ええ。・・・でも、私の力じゃ、エリアスの力を完全に引き出すことはできないの・・・。いくら強い魔物と契約できても、その魔物の力を完全に引き出せるかは、契約者の力にかかってるの。」
「・・・なるほど。だから、ヤミーと同じ様に、俺達の世界に来て、竜の力を完全に引き出せる強い人間を捜しに来たって訳か。そうだよな。お前がエリアスの力を完全に引き出せるなら、自分でヤミーを倒しに行くだろうしな。」
「気にしてること言わないでよ。」
ミリィは、複雑そうな表情になる。
ミリィにとって、異世界へ行き、エリアス達の契約者を捜すのは、ある意味屈辱でもあった。無理もない。竜に仕え代々世界を守って来た一族の末裔が、竜の力を引き出せず、引き出せる人間を見つけて頼らなばならないなど、屈辱以外の何物でもない。
だが、そんな理由を知る由もない風太は、マジマジとエリアスのカードを見ていた。
「・・・こいつの力があれば、アナザーワールドに行ける・・・風子を助けに行ける・・・。」
「でも、行ったところで、竜と契約できなければ意味がないわ。・・・私の見たところ、あなたは魔力は強いみたいだけど、それだけで竜と契約することはできないわ。竜に認められて、初めて契約できるのよ。現に、エリアスはあなたに何の反応も示してないでしょ?あなたを認めたのなら、何かしら反応するはずだから。」
「でも、認められて契約できれば、俺は、竜の力を完全に引き出せるってことだよな?」
「・・・ええ・・・。」
それがどれだけ難しいことか。ミリィの心中は複雑であった。
ミリィはこう見えて、一族の現当主でもあるのだ。当主は、一族で最も魔力の強い者がなる。そんな彼女でさえ、エリアスの力を二割引き出すので精一杯なのだ。
「よし!じゃあ、俺を早くアナザーワールドに連れて行ってくれ!」
「焦らなくても連れて行くわ。『サモン・エリア。」
「やっぱりここにいた!」
「!」
突然の声に、二人はビクッとする。そして、風太は恐る恐る振り向く。
そこには、幼馴染の少女-青野渚-がいた。