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奪還へ向けて

 「勇者殿。王都を救ってくれたばかりか、ソウルイーターの討伐。大儀であった。」

 ソウルイーターを撃破した後、風太は謁見の間にて国王と謁見することとなった。国王は、先の戦いと、ソウルイーターを倒したことに感謝の意を称した。

 「いいえ、俺の方こそ迷惑をかけてすみません。」

 「勇者殿が無事に帰還してくれただけで十分だ。そのうえ、風竜と契約してくるとは・・・余はとても感激している。」

 「だが、現状は楽観視できない。ワルド大陸の南部分は、完全に敵の手にある。このままでは、再度の王都侵攻は時間の問題だ。」

 団長が、険しい表情をする。先の戦いでは確かに勝利したが、ヤミーの勢力が未だ大勢いる状況であることに変わりはない。局地的な勝利をいくら重ねようとも、大局に影響を与えられなければいずれ数の暴力で圧殺されてしまうだろう。

 「そこで、我々は最後の大陸奪還作戦を決行する運びとなった。」

 「最後の?」

 「そうだ。王都の守りをほぼ捨て、進攻に兵力の大半を割く。」

 「そんなことをして失敗したら・・・!」

 「そうだ。王都ばかりか、世界は完全に終わる。・・・だが、このままいたずらに時を消費したところで、敵に利するだけだ。・・・ならば、勇者殿達が力を整えることができた段階で打って出る。」

 「・・・フィードとエリアスの力で一気にヤミーの勢力を駆逐する?」

 「そうだ。五大竜が二体いれば、ヤミーは無理でも、この地の侵攻を指揮する魔王を倒すことができる。」

 「なら、陛下と軍はここにいて、俺達に任せてくれれば・・・。」

 「少数の人間が敵地深くに入り込めば、補給などの点で無理が生じる。制圧地で食料を手に入れるのは容易ではない。体力も魔力も、無限ではないのだぞ。それに、制圧された地の民を避難させるための人員も必要になろう。そして、解放した地域の復興もやらねばならんのだ。そうなると、人数は大勢必要になる。」

 いくら竜の力を得ようと、風太達は生身の人間なのだ。休みなく戦い続けるなどできない。それに、救出した人間を逐一風太達が王都まで避難させるのは、時間や体力の無駄である。そして、地域を解放すれば、人が住めるよう復興しなければならないのだ。そういったことを引き受けてくれる、サポートしてくれる人間が必要なのだ。

 「勇者殿は、とにかくヤミーの勢力を駆逐することと、苦しめられている民の解放だけを考えてほしい。補給と民の保護は、我々が責任をもって行う。」

 「・・・分かりました。お願いします。」

 「・・・賢者殿。三日であの二人を勇者殿達と同じレベルまで引き上げられるのは確かか?」

 「問題ありません、陛下。そもそも、三日は最大の日数。うまくいけば、二日かもしれません。」

 「・・・でも、三日もいるのか?あの部屋にいれば、一日も経たないうちに修行が・・・。」

 「外でなければできない修行もある。それが終わるのが三日だ。そなたの時もそうであっただろう。」

 「・・・そういえば、そうだったな。」

 自分の修行の日々を思い出す風太。同時に、二人が自分達と同じ修行をすること、少し面白く感じた。

 (・・・焔は確か、勉強がからっきし駄目だったな。無事に文字や言葉を覚えられるといいんだけどな。)

 「では、勇者殿には、王都の警戒を頼んでもよいか?」

 「はい。幸い、俺は風魔法使いですので、外にいて風に当たるのもいい修行になります。」

 「警戒と同時に修行も行うか。抜け目がない。」

 「・・・ですが、渚はその間休ませてください。あいつは、ソウルイーターに心をボロボロにされて弱っています。」

 「うむ。女勇者殿については、ミリィと宮廷魔術師でも腕の立つ者が側にいる。勇者殿は何も気にせず、警戒に当たってくれ。」

 「はい。」


 『それで、君が警戒をすることになったんだね。』

 風太は、城の物見台で、フィードにこれからのことを話していた。

 「ああ。フィードには、ガルーダ達と周囲の警戒を頼みたい。」

 『それだけたくさん鳥系の魔物がいるなら、僕は必要ないと思うよ。』

 「そうか?」

 『それに、僕がここに長期間いると、逆に目立つはずだ。風竜がラグン王国に協力しているって知られたら、そっちの方がまずいと思うね。』

 「そうか。なら、フィードはカードに・・・。」

 『いや。僕は僕で役に立つ方法があるよ。』

 「どんな方法だ?」

 『他の五大竜の神殿を探すんだよ。』

 「五大竜の?」

 『僕以外の五大竜は、神殿や遺跡に祀られているんだ。それを見つけてくるよ。』

 「・・・そういえば、震が言ってたな。ヤミーが他の五大竜を始末するんじゃないかって。確かに、フィードはそっちの方がいいかもしれないな。でも、見つけられるのか?」

 『任せてよ。だいたいの検討は付いているから。実はね、場所は知られていないけど、それぞれの大陸で、祀られている竜が決まっているんだよ。』

 フィードが言うには、このワルド大陸には、エリアスとブレイが。グロバー大陸には、ランドが、ユニバス大陸には、セイクが祀られているのだという。

 『それぞれの竜の祀られている場所は、その竜の属性を象徴する場所なんだ。例えば、エリアスの神殿は湖の近く、みたいな感じでね。』

 「なるほど。じゃあ、そこを重点的に調べて、場所が特定できたら俺に教えてくれるってことだな。」

 『そういうこと。まあ、僕に任せてよ。三日以内に、全部の竜の神殿を見つけてみせるよ。』

 「分かった。じゃあ、頼むな。」

 フィードは、他の竜の祀られる神殿を探しに、飛び去って行く。残された風太は、自身の手持ちの魔物達を召喚し、王都周辺の警戒を行わせるのだった。

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