ソウルイーターの最期
「・・・ここは・・・。」
「気が付いたみたいだね。」
「・・・そうか。戻ってこれたんだな。」
風太が気が付くと、そこは渚の寝ている部屋だった。既にソウルイーターは渚から離れ、渚は穏やかな寝顔で眠っていた。
「成功したんだな。よかった。」
「うむ。ソウルイーターもこの通りだ。」
モーゼは、手にした透明な球体を見せる。球体の中には、ソウルイーターが窮屈そうに押し込められていた。
「これが封印か。二人で大丈夫だったのか?」
「前にも言ったが、ソウルイーターがAランクの指定を受けているのは、繁殖力と感染力だ。強さはさほどでもない。しかも今回は、分離した際急激に弱体化したのだ。封印は容易だ。」
「・・・それで、こいつはどうすればいい?」
「魔法で跡形もなく消し飛ばせばいい。私の光属性魔法で・・・。」
「いや、フィードの攻撃で消滅させる。」
「!?それは・・・いくらなんでも過剰なのではないか?そなたと契約したフィードの攻撃なら、確実を通り越してやりすぎだと思うが・・・。」
「やりすぎが丁度いい。こいつには、自分がどんな人間に取り憑いたのか後悔させてやる!」
風太から、ただならぬオーラを感じ、ソウとモーゼは少し引く。
「・・・風太、君、ちょっと怖いよ・・・。」
「・・・『フィード、来てくれないか?』」
風太は、契約してる魔物と遠くにいても会話ができるテイマー魔法【遠隔疎通】を使い、フィードと連絡を取る。
『?どうしたんだい、風太?』
『ソウルイーターを消し飛ばしたい。・・・お前の力で完膚なきまでに叩き潰して消滅させてほしい。今すぐ来てくれ。』
『ええ?たかがソウルイーターに僕の力使う?君でも、モーゼって人でもいいんじゃ・・・。』
『頼む。こいつは、実体があるなら俺が何度でもぶっ殺してやりたいくらいの奴なんだ。』
口調は大人しいが、節々から怒りを感じる風太に、フィードは困惑する。いったい、ソウルイーターは風太に何をしたのか。聞きたいという衝動を覚えたが、怖いので聞かないことにした。
『・・・穏やかじゃないな・・・。・・・分かった。今から行くから外で待ってて。』
「・・・それじゃあ外に行こう。こいつに相応の報いを受けさせてやる!」
「・・・。」
有無を言わせぬ風太の勢いに、二人はただ従うしかなかった。
「ここなら、王都に影響はないな。」
王都から離れた場、あの戦いのあった場所に、風太はソウルイーターを封印した球体を置く。
「フィード。全力で消し飛ばしてくれ。全力で、だ。」
『分かってるよ。それじゃあ風太。僕に魔力を流してくれないかな。』
「分かった。有りっ丈流すからな。」
風太は、ソード・オブ・フィードを通してフィードに魔力を流す。フィードは、風太から流れる魔力を感じ取る。
『!?ちょっと、風太!流しすぎじゃない?これの半分程度で十分だよ!?』
「いいや!まだ駄目だ!あいつには、存在したことを後悔させて消してやる!」
『うう・・・あのソウルイーター、何やらかしたんだよ・・・?』
「あはは・・・。」
ビビるフィードを見て、ソウは苦笑する。心なしか、封印されているソウルイーターも、怯えた様子で封印から必死で出ようとしていたが、元が弱い上に、弱体化したソウルイーターに脱出するなど無理な話だった。
「・・・可哀そうだけど、同情する気にはなれないね。君は、彼の大切な人間の心を傷付け、食い荒らしたんだ。無銭飲食の代金は、ちゃんと払わないとね。」
ソウは、可哀そうだと言いつつ、ソウルイーターに全く容赦のない言葉を投げかける。神としてあまりに風太に肩入れしすぎな気もするが、現在のソウは、神としての立場より、風太の友としての立場を選んだようである。
『・・・風太、さすがにもうこれくらいでいいよ・・・これ以上したら、周りの環境に影響が出るから・・・。』
「・・・分かった。じゃあフィード。頼むな。」
フィードの口に、高濃度の魔力が収束する。その魔力は、風に変換され、ソウルイーターに放たれる。
『風竜の息吹!』
フィードのブレスは、封印の球体を呆気なく砕くと、中にいたソウルイーターに直撃。ソウルイーターは、なすすべなく風のブレスによって切り刻まれ、無残に消滅した。最期の瞬間、小さな断末魔を発したが、ブレスの音が大きすぎて、風太達の耳に入ることもなかった。
いくら相手がボスキャラでも、序盤のボスに使うような技じゃないですね、これは。