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ソウルイーター

 「ソウルイーター・・・だと!?」

 ミリィの言葉に、風太達異世界から来た人間達以外は驚愕の表情を浮かべる。

 「すみません、賢者様。私が側にいながら、侵入を許してしまい・・・。」

 「・・・已むを得まい。先の戦いで疲弊していたのだ。」

 「だが・・・まさかソウルイーターに入り込まれるとは・・・賢者殿が王都を離れたことで、入り込んだのか・・・。」

 「迂闊でした。奴は霊体の魔物。普通の人間では認識できません。ヤミーの軍勢ばかりに気を取られ、霊体の魔物に対する注意が抜けていました・・・。」

 「・・・モーゼ。ソウルイーターって何だ?」

 聞きなれない名前の魔物。話が理解できない風太は、モーゼにソウルイーターに付いて尋ねる。

 「・・・ソウルイーター。Aランクの危険な魔物だ。」

 「Aランク!?」

 魔物のランク。それは、魔物の強さや危険度を階級化したものである。十のランクが設定されており、上に行けば行くほど、その危険度は増す。

 風太がモーゼから習ったのは、以下のとおりである。



EX:神話時代から存在する魔物。人間では対抗できない。五大竜はここ。


S:魔物達の王。大陸が壊滅する。兵士では対応できない。


A:国を亡ぼすほどの魔物。複数の国が協力しなければ対応できない。


B:王都クラスの大都市を壊滅させられる魔物。兵士が最低一万人以上必要。


C:中規模な都市を壊滅をさせられる魔物。兵士が最低千人以上必要。


D:小規模な都市を壊滅させられる魔物。兵士が最低五百人以上必要。


E:規模の大きい村落を壊滅させられる魔物。兵士が最低百人以上必要。


F:規模の小さい村落を壊滅させられる魔物。兵士が最低十人以上必要。


G:人に対して大きな害をもたらす魔物。一般兵士一人で対応可能。


H:最下級。無害な魔物、或いは害をもたらすがGより弱い魔物全般に付けられるランク。準備を整えれば一般人でも対応可能。



 つまり、Aランクの魔物とは、単独で国一つを滅ぼす力を持つ魔物ということである。そんな凶悪な魔物の侵入を許したことに、焔は怒り出す。

 「そんなヤバい魔物にどうして侵入されたんだよ?警備の目はザルか?」

 「ソウルイーターは、霊体の魔物だ。通常の兵士では捕捉できぬ。いつもは私が王都にいて、結界を展開して防いでいたが、先の戦いで結界を解いていたことで、入り込まれたのだろう。見えるとすれば、魔法使いくらいだが・・・ミリィ達は疲弊していた。それで見つけられなかったのだな・・・。」

 「・・・なるほど。幽霊みたいなもので、普通じゃ見つけられないのか。しかも、ヤミーが攻めてきた疲れが残っていて、魔法使い達は見逃してしまった・・・。」

 「おい!渚は・・・大丈夫なのか!?Aランクの魔物なんて・・・渚は戦ったことがないんだぞ!俺だって、ソウの力がないと勝てないような相手なんだぞ!」

 「取り込まれてどのくらい経った?」

 「・・・分かりません・・・気が付いたら身体全身に覆い被さっていて・・・。」

 Aランクというとんでもない魔物に渚が襲われていると知り、居ても立っても居られない風太。ミリィの方は、自分の不注意で友人を死なせてしまうのではないかと、涙でボロボロの顔になっていた。そんなミリィに、モーゼは冷静に話を聞いた。

 「青野渚の表情は?」

 「・・・とても苦しそうでした・・・このままじゃ・・・手遅れに・・・。」

 「手遅れ!?手遅れって何なんだよ!?」

 「・・・ソウルイーターは、取り憑いた人間の魔力と負の感情を食らい成長し、体内に大量の幼体を生み出して周囲にばら撒く。そして、幼体も同様に人間に取り憑き、魔力と感情を食らって成長、幼体を大量に生み出して拡散する。それを繰り返すことで、爆発的に増殖し、最終的には国すら滅ぼすのだ。」

 「・・・それで・・・取り憑かれた人間は・・・?」

 「・・・魔力と感情を食い尽くされ・・・死ぬ。その死と同時に、奴は幼体をばら撒く。」

 「!」

 風太はそれを聞いて、一目散に行こうとする。しかし、ソウは彼の腕を掴み、制する。

 「!放せ!ソウ!早く行かないと渚が・・・!」

 「・・・落ち着くんだ。この部屋にいる間は、外の時間と隔絶される。急がなくても彼女を助ける方法を考える猶予がある。それに、無策で行けば、君も食われる。霊体の敵との戦いは、経験がないだろう?」

 「・・・。」

 ソウに言われ、風太は行くのを思いとどまる。

 「・・・ミリィ、君も落ち着くんだ。彼女の魔力量を考えれば、まだ時間があるはずだ。」

 「・・・ええ・・・でも!」

 「それに、取り込まれた人間を助けるのは容易じゃない。下手に倒せば、ソウルイーター共々、彼女まで殺してしまう。それじゃあ意味がない。」

 「・・・。」

 ソウに諭され、ミリィは静かになった。

 「・・・ソウルイーターを倒す方法と、取り込まれた人間から引き離す方法を教えてくれ。」

 風太はモーゼに、ソウルイーターに対する方法を聞く。

 「ソウルイーターに限らず、霊体の魔物は魔法による攻撃か、特殊な武器によってのみ、傷付け、倒すことができる。それ以外の物理的手段では、攻撃が効かん。」

 「魔法なら倒せるんだな。俺の魔法で大丈夫か?」

 「ソウルイーター自体の強さは、それほどでもない。Aランクに指定されているのは、その増殖力による被害が凄まじいからだ。そなたでも十分倒せる。」

 「倒せるのは分かった。それで、引き離し方は?」

 「軽度の侵食なら、強い魔力を当てれば引きはがせるが・・・。おそらく、精神にまで入り込んでいるのだろう。こうなると、精神に入り、直接追い出すほかない。」

 「そんなことできるのか?」

 「可能だ。・・・無論、禁術に該当する魔法になるため、詳細は教えられんがな。」

 「じゃあ、誰かが彼女の精神に入って、侵入したソウルイーターを追い出せばいいってことだね。」

 「なら、俺が渚の精神に入る。モーゼ、頼む。」

 「うむ。」

 「待って!私の不注意でこうなったんだから、私が・・・!」

 「ミリィ。そなたは駄目だ。そんな不安定な精神で、侵食された精神に入れば、逆に食われてしまうぞ。今回は、ここで客人と待つのだ。」

 「・・・はい・・・。」

 「では、青野渚の所に向かうとしよう。緑川風太、覚悟のほどはいいな?」

 「ああ。絶対に渚を助ける!」

 「うむ。では、私と緑川風太とソウ様は、ソウルイーターの排除に向かいます。陛下はここでお待ちください。」

 「頼んだぞ、勇者殿、賢者殿、ソウ様。」

 国王は、深々と頭を下げる。モーゼと風太とソウは、部屋を出ていくのだった。

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