表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/161

謎の龍現る

 「・・・この町が、その事件が起こった町か・・・。」

 電車に乗り、風太達は隣町の犯行現場と思われる場所に来ていた。そこは、何もない空き地だった。

 「元は公園だったらしいけど、あの事件が起きて以降、遊具が撤去されて、空き地になったそうだよ。」

 震は、電車内でタブレットを使って情報収集した結果を二人に告げる。

 「何もねーんじゃ、調べようがねーぞ・・・。」

 「行方不明の子供の家族に会う・・・のは駄目だね。変な目で見られて、警察に通報されるだろうし・・・。」

 「・・・?なあ、空き地の中心に、何か見えないか?」

 風太は、空き地の中心に、何か渦のようなものが見え、それを二人に言う。

 「?何だよ?何もねーぞ?」

 「そうだね。特に、変わったものは見えないよ?」

 二人は、何もないと言う。二人には、渦など見えず、ただの空き地にしか見えていなかった。

 「そんな馬鹿な!だって・・・!」

 風太は、空き地に入り、渦の前に行く。

 「ほら、ここに・・・。・・・!?」

 その時、風太の身体は渦に徐々に吸い込まれていく。

 「!?何だ!?」

 「!?風太!?」

 「どうしたんだ、突然!?」

 二人には、風太が突然、見えない何かに引っ張られているようにしか見えなかったが、それでも異常事態であることは理解できた。二人は、風太を助けるべき、風太の腕を掴む。

 「おい!大丈夫か!?」 

 「!馬鹿!手を離せ!吸い込まれるぞ!」

 「くそ!どうなってんだ!?何か、凄い力に引っ張られてんぞ!」

 (・・・これは、何かある・・・!僕と焔には見えない・・・何かが・・・!)

 風太の制止を聞かず、二人は手を離さない。そのまま三人は、渦の中に吸い込まれ、空き地から姿を消した。


 「・・・ここは・・・どこだ・・・?」

 風太達は、奇妙な空間に立っていた。そこは、空も地面もない、ただただ何もない空間だった。

 「・・・真っ白だ。・・・何もない。・・・俺達は、確か空き地に・・・。」

 「・・・どうなってるんだ、この空間は?バーチャル空間?・・・いや、ひょっとしたら、異次元?」

 三者三様の意見を口にしていた彼らの前に、突如として強い風が吹く。

 「!?何だ・・・!」

 すると、目の前に巨大な生物が現れた。それは、緑色の体色で、外見は東洋の龍の姿をした、とても巨大な生物だった。

 「・・・ドラゴン・・・!?」

 「・・・正確には龍だよ。ドラゴンとは全くの別物だよ。」

 「・・・いやに冷静だな・・・。」

 『やあ、こんにちは。この世界の人間達。』

 目の前の龍は、突然人間の言葉を発して、会話してきた。

 「!?しゃべった!?」

 「そんな馬鹿な!声帯器官がある生き物には・・・!・・・まさか、特撮か!?誰かが入ってしゃべっているんじゃ・・・?」

 『・・・中の人なんていないよ。僕は、れっきとした生き物だよ。ただし、この世界の生き物とは違うけど。』

 龍は、どこか困惑した様子を見せながら、自分がこの世界とは違う世界の存在であると説明する。

 「・・・別の世界?つまり、次元を越えてきたというのかい?」

 『君は、なかなか呑み込みが早くて助かるよ。そう僕は、ある人物に頼まれて、ここにいるんだよ。』

 震の的を射た説明に、龍は満足げに言う。

 「ある人物?」

 『その人物から頼まれたんだ。今から、そこにいる緑川風太を僕が試すように言われてね。』

 「?俺?」

 「?風太を?」

 いきなり目の前の龍が風太の名前を言い、風太と焔はギョッとする。何故この龍は、自分の名前を知っているのか。

 「・・・まさか・・・風子を攫った犯人は・・・この龍なのか・・・!?」

 『ああ、それは僕じゃない。ただ、犯人は知ってるよ。教えてほしい?』

 「知ってるなら話ははえー。早く教えろよ。」

 『それは駄目だよ。緑川風太が、僕の眼鏡に適わないと教えてあげられないね。』

 「こいつ・・・!」

 「・・・それで・・・どうやれば妹のことを教えてくれるんだ?」

 『ふふふ。君の本気度を試すんだよ。本気で妹を助けたいと思えば、楽なものだよ。』

 龍は、どこか含みのある物言いをする。

 「おう、風太受けてやれ。このドラゴンに、お前の本気を見せてやれ!」

 「・・・あ・・・ああ・・・。」

 風太は龍の目の前に行く。目の前にすると、龍はさらに大きく感じた。

 『じゃあ行くよ。無理ならギブアップって言えば大丈夫だよ。』

 「・・・分かった。・・・やってくれ。」

 『じゃあ・・・えい。』

 「!!!」

 その瞬間、風太の脳内に凄まじい速度で映像が流れ込んでくる。その映像は、消されていた風太の記憶なのだが、今の風太には知る由もなかった。そして、その映像は、ヤミーに身体を奪われた風子に、圧倒的な力で押し潰された光景だった。

 「があああああ!?」

 風太はそのまま倒れ込んでしまう。

 「!風太!おい!風太!?」

 焔は必死に呼びかけるが、風太は目を覚まさない。

 「・・・おい!てめぇ!風太に何しやがった!」

 『彼が消した記憶を垂れ流しにしただけだよ。』

 「・・・『彼』・・・だとぉ・・・!?それに、記憶を消した!?」

 「・・・焔、この龍はただの怪物じゃなさそうだ。かなり高等な知性を持っている。下手をすれば、僕たちより・・・。下手に刺激するのは・・・。」

 震は、二人と龍のやり取りを観察し、龍を冷静に判断していた。だが、幼馴染をどうにかされた焔にはそんなことできるわけがなかった。

 「おい!お前の後ろに誰かいるんだ!答えろ!」

 『・・・少し静かにしてくれないかな?』

 龍はそう言うと、軽く息を吐く。しかし軽く吐いただけにも関わらず、焔は遥か遠くまで吹き飛ばされてしまう。

 「うおお!?何じゃこりゃあああ!?」

 「・・・脳筋。」

 分かってはいたが、あまりに予想通りの展開に、震は呆れていた。

 「・・・まあ、馬鹿がいなくなってようやく君と話せるね。・・・いくつか聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 『話していい範囲内ならね。全部話すには、この緑川風太が試練を乗り越えないと駄目だよ。』

 「分かった。話せる範囲でいいよ。」

 震は、龍との対話を開始するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ