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変わらない男

 「とにかく、風子ちゃんを攫ったのと同じ犯人か、その仲間に攫われたと思う子の辺りを探ってみようぜ。何か分かるかもしれな・・・。」

 「だから馬鹿だと言ってるんだ。五年前、その上、警察が徹底的に調査したんだ。もう、目新しいものは見つからないよ。」

 「やってみなきゃ分からねーだろ!なあ、風太!」

 「・・・。」

 「?どうしたんだよ、風太?」

 「・・・なあ、そんなにヤバいのなら・・・やっぱり警察に任せた方がいいんじゃないか?」

 「ああ!?」

 あまりに覇気のない風太の言葉に、焔は耳を疑った。

 「・・・俺達に何かできるなんて思えない・・・。・・・俺・・・ビラ配ったり・・・探せるところは一通り捜したけど・・・何もできなかったんだ。・・・今更何かやったところで・・・。」

 ドゴーン!

 豪快な音を響かせて、焔は風太を殴り飛ばす。

 「!?」

 風太は、何が起こったか理解できず、目を白黒させていた。

 「・・・おい、風太。お前は風子ちゃんを助けたいんじゃねーのか?」

 「・・・それは・・・助けたい・・・けど・・・。」

 「ならそれでいいだろうが。何が不満なんだ?・・・それとも不安なのか?」

 「!」

 自分の思っていることを指摘され、風太は言葉に詰まる。

 「俺だって分かる。こんなこと仕出かしている奴らだ。しかも、警察も手が出せない。下手すりゃ殺されるのは目に見えてる。俺だって、死ぬのは怖え。でもよ、俺は、ダチが苦しめられてるのを黙って見ていることの方が我慢できねーんだ。そっちの方が、俺は嫌だ。そして、そのダチの妹がどんな辛い目に遭ってるか想像するだけで、はらわたが煮えくり返る気分なんだ。それに、そんな連中が野放しになってるってことが、俺には許せねー!」

 「・・・。」

 真っ直ぐと自分を見る焔を見て、風太は子供の頃の焔を思い出していた。小さいながらも正義感が強く、相手が上級生であろうと悪いことをはっきり悪いと言い、ぶつかっていく。たとえ負けても、言わなかった方が後悔すると言って気にも留めなかった―もっとも、その上級生は、後で焔の父親にこっ酷く叱られたそうだが―ような人間だった。風太は、そんな真っ直ぐな焔に、憧れのようなものを抱いていた。だが、妹を見つけることができず、足踏みばかりしていた風太は、いつしかそんな憧れを忘れてしまっていた。そして、ヤミーとの戦いで植え付けられた絶望と無力感により、さらにそれが見えなくなっていたのだ。

 だが、子供の頃とまったく変わらない焔の姿と言葉に、風太は不思議と元気付けられていた。

 「・・・緑川・・・風太だったね。君は、彼のことをただの馬鹿だとしか思ってないなら、それは過小評価だよ。彼は・・・世界一、いや、宇宙一の馬鹿だ。」

 震の言葉に頷いていた焔は、震の衝撃的な発言に思わずズッコケた。

 「・・・お前・・・人のこと馬鹿馬鹿言いやがって・・・!」

 「・・・馬鹿じゃないか。ねえ、君もそう思うよね?」

 「・・・ああ・・・。」

 「うるせー!馬鹿馬鹿言うな!」

 同意を求められ、風太は思わず頷いていた。焔は、さらに憤慨する。

 「・・・ただ、とても気持ちのいい馬鹿だよ。自分の知り合いのために、何の得にもならないことをしようなんて言うんだから。おまけに、正体不明の誘拐組織と戦うなんて。天然記念物級の馬鹿だ。」

 「褒めてるのか貶してるのか、どっちかにしやがれ!」

 「まあ、君が諦めるのは勝手だ。代わりに、この馬鹿が死ぬだけだ。」

 「!」

 「おい!勝手に殺すな!生きて風子ちゃんは助ける!それでいいだろ!」

 「・・・。」

 風太は、言われるままに頷く。それにとりあえず満足したのか、焔も頷く。

 「よし、とりあえず、風子ちゃん・・・がいなくなった場所は行きたくないだろうから、別のこの事件の場所にするか。」

 「・・・この町の隣町だね。確かに、ここなら行きやすそうだね。」

 「じゃあ決まりだな。親父達に気取られる前に、行って証拠見つけちまおうぜ。」

 「・・・あるかどうかは分からないけど、君の親に知られるのは得策じゃないね。」

 「お、震。意外とノリがいいな。」

 「こんな面白そうなこと、授業を受けるより価値があるよ。」

 震はパソコンを自身のカバンに入れる。

 「じゃあ、行くか。」


 「・・・どうやら彼らは、ヤミーの使途に攫われた子供のことを調べるようだね。」

 その頃ソウは、風太達の進捗状況を確認していた。

 「よし、次は、第二の試練だ。」

 「・・・大丈夫でしょうか?」

 不安そうなモーゼ。そんなモーゼに、ソウはいつもの調子でしゃべる。

 「大丈夫。死にはしないから。・・・でも、これで根を上げをるようなら、不合格だ。」

 「・・・できれば合格してほしいものですが・・・。」

 「・・・そうだね。・・・でも、不合格でも僕は構わないよ。・・・個人的には、そっちの方がいい。」

 「・・・何故、そのようなことを?」

 「・・・彼らが試練を乗り越えれば、話すよ。」

 そう言うと、ソウは再び風太達の動向を見るべく、集中する。彼らは今、雲の上から風太達を見ていたのだ。

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