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異世界から来た少女

 「・・・ここでいいか?」

 風太は夕方、渚と話していた場所にミリィを案内した。

 「ええ。・・・まず、何から話せばいいかしら?」

 「まずは、風子の居場所だ。どこにいる?」

 単刀直入に風太は尋ねる。

 「私達の世界よ。そこに、あなたの妹はいる。」

 「さっき言ってたアナザーワールドか?」

 「ええ。こことは次元の壁を隔てた所にある、別の世界よ。」

 「・・・そんな世界が本当にあるのか?」

 風太は半信半疑であった。いや、どちらかといえば、八割九割疑っていた。当然である。異世界に妹がいるなど、常識的に考えてあり得ない。寧ろ、幼女趣味のある変態誘拐犯か、人身売買組織に攫われたと言われた方が信じただろう。

 「あるわ。・・・そうね、じゃあ、証拠を見せるわ。」

 「証拠?」

 ミリィは、腰にあるポーチから何かを取り出す。それは、カードの様なもので、表側には、鎖に巻きつかれた魔法陣が描かれ、裏側には青色いスライムの様な絵が描かれていた。

 「【サモン・スライム】!」

 ミリィが呪文のようなものを口にすると同時に、カードが突然発光する。

 「!?何だ!?」

 しばらくして、光が消えると、そこには、青色のスライム状の物体があった。

 「・・・これは・・・?」

 「スライムよ。正式名は、【コモンスライム】。一般的なスライムよ。」

 「スライム?ゲームで出て来る雑魚敵か?」

 「ゲーム?・・・よく分からないけど、雑魚というのは当たってるわね。魔物の中では一番弱いし。けど、人間と共生関係にある魔物でもあるわ。」

 ミリィはそう言うと、スライムを優しく撫でる。すると、スライムはミリィの腕に甘える様にすり寄る。

 「それに、意外に甘えん坊で可愛いのよ。」

 「!?動いた!?」

 「動くに決まってるでしょ。見た目はこんなだけど、れっきとした生き物だもの。」

 「・・・。」

 風太は、先ほどまで疑っていた異世界という言葉が、真実ではないかと思い始めていた。あんな生き物、この世界に存在しない。しかも、突然現れたのだ。もしかしたら、と風太は思い始めていた。

 「私の世界には、こうした魔物がたくさんいるの。凶暴な魔物もいるけど、この子のように大人しい魔物もいるの。そうした魔物と私達は、協力して生きているの。」

 「・・・魔物と一緒に生きる世界・・・。」

 「どう?少しは信じる気になった?」

 「・・・まあ、半分ほどはな。・・・?」

 風太が足元に何か違和感を覚えて下を見ると、スライムが風太の足元にすり寄って来ていたのだ。

 「あら、あなたのことを気に入ったみたいね。」

 「・・・大丈夫なのか?・・・身体とか、溶かさないか?」

 「安心して。コモンスライムは、人肉や衣類は食べないから。」

 「・・・。」

 風太は、恐る恐るスライムに触れてみる。スライムの触感は、程よい弾力と冷たさであった。

 (・・・意外と可愛いかもしれないな。)

 無意識のうちに、風太の口元は笑みを浮かべていた。

 「・・・もういいかしら?」

 「!ああ、悪い。続けてくれ。」

 「じゃあ、話を続けるわね。」

 ミリィが手をかざすと、スライムは光に包まれる。その光は、かざした手に移り、光が消えた時には、先ほど見せたカードだけがあった。

 「!!!」

 「・・・続けていいわよね?」

 「・・・ああ・・・。」

 常識外れな出来事が目の前で立て続けに起きたことで、風太は困惑気味だった。だが、同時に風太は、異世界の存在を本気で信じるようになっていた。

 「私の世界とこの世界は、基本的・・・に干渉できない。それだけ、次元の壁は厚いの。」

 「・・・なら、なんで風子はお前の世界にいるんだ?・・・それに、お前だって、どうしてここにいるんだ?干渉できないんだろ?」

 「私がここに来た方法は、あなたの妹がいる理由を説明すれば、自ずと分かるわ。・・・あなたの妹は、私の世界にいる邪悪な存在が連れ去ったのよ。」

 「邪悪な存在?」

 「・・・暗黒竜ヤミー。私達の世界の神のような存在よ。・・・神は神でも、邪神だけどね。」

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