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喪失の帰還

第2章開始です。

設定を一部変更しました。風子が攫われたのを、三年前から五年前に変更します。

それによって、プロローグの風太の年齢を中学生から、小学校高学年に変更しました。

 「・・・ん・・・。」

 日の光を浴び、風太は目を覚ます。

 「・・・ここは・・・どこだ?」

 目覚めた風太は、辺りを見渡す。そこは、どこかの林のようで、遠くから子供の遊ぶ声や、自動車のエンジン音が聞こえてきた。

 「・・・何だろう。何だか長い夢を見ていたような気がするな・・・。・・・そもそも、どうして俺は、こんな所で寝ていたんだ?そもそも、ここはどこだ?どうして俺は、こんな所で寝ていたんだ?」

 風太は混乱していた。こんな場所、知りもしなければ、来たこともなかったからだ。

 (・・・昨日の記憶がない。・・・確か、風子の法事に無理矢理参加させられてからの記憶が・・・。)

 「・・・とにかく、帰るか。学校に行かないと、母さんも渚もうるさいからな。」

 風太は立ち上がると、フラフラと林の中を歩き出す。林の間から射し込む光から、かなり日が昇っていることを感じた。

 (・・・今何時だ?早朝でないのは確かだが・・・。)

 風太は、服のポケットを弄るが、何も入っていなかった。

 (・・・参ったな。携帯も財布もないなんて・・・。どうする・・・?)

 しばらく歩いていると、不意に林を抜け、広い景色が風太の目に入ってくる。たくさんのビルが建ち並び、道路にはたくさんの車が走る、いつもの光景が。だが、風太には、それがひどく懐かしく感じた。

 「・・・おかしいな。いつも見慣れた光景だっていうのに・・・なんだか懐かしく感じるな。」

 それと同時に、風太は重大なことに気が付く。

 「・・・そもそもここ、どこだよ・・・?」


 「・・・参ったな・・・ここがどこかも分からない。・・・家に連絡もできない。どうすればいいんだ・・・?」

 途方に暮れた様子で、風太は街を歩いていた。

 とりあえず、街に出れば何とかなると考えた風太だったが、携帯も財布もなければ、結局何もできなかった。

 「・・・はあ・・・どうやって家に帰ろう・・・。」

 しかし、ふと気が付く。

 (・・・いや、帰ったところで、あそこに俺の居場所なんて・・・。)

 家に帰っても、母親とは気まずいし、渚からは小言を毎日言われてウンザリしていた。なら、家に帰る意味などないのではないか。そう思ってしまう。

 そう考えて歩いていると、風太は前を歩いていた人間とぶつかってしまう。

 「おっと!」

 「!悪い。余所見してた・・・。」

 風太は謝ると、その場を立ち去ろうとする。

 「・・・!おい、お前!」

 「?」

 まさか、ガラの悪い人間に絡まれてしまったのかと、思わずぶつかった人間を見る。

 「・・・お前・・・風太か?緑川風太か?」

 「???誰だ?」

 ぶつかった人物は、逆立った赤い髪型の、自身と同い年くらいの少年だった。制服を着ていて、学生であるのは確かだが、どこの学生かまでは分からなかった。だが、風太の記憶に、こんな人物はいなかったはずであった。

 「俺だよ!赤羽焔あかばねえんだよ!ガキの頃、よく遊んだろ?」

 「・・・赤羽・・・焔・・・?」

 その名前を聞き、風太の脳裏に幼い頃の記憶がよぎる。まだ妹が行方不明になるずっと前、遠くの親戚の家に遊びに行った際、近所に住む子供と仲良くなり、よく遊んだ思い出を。

 「・・・焔!焔か!本当に焔なのか!?」

 「おう、間違いなく焔だぜ。お前の親友だ。」

 「懐かしいな・・・どのくらい会ってないんだったかな?」

 「ええと・・・確か、十年くらい会ってないんじゃないか?お前の親戚が死んだのがそのくらいで、その後全然会わなくなったからな。」

 「そうか・・・もうそんなに経つのか・・・。たまに、手紙書いてたような気がするけど・・・お互い筆不精で、長続きしなかったな。」

 「ははは!そうだったな!」

 苦笑する風太と恥ずかしそうながらも大笑いする焔。それから二人は、幼い頃の思い出話に花を咲かせるのだった。


 「・・・無事に接触できたようでよかったよ。」

 そんな二人の姿を、遠くからソウとモーゼは眺めていた。

 「・・・しかし、驚きました。あなた様が、まさか・・・。」

 「ああ、いいよいいよ。そんなに畏まらなくても。僕は、そういうの嫌いだからね。」

 「・・・はあ・・・。・・・しかし、何故、緑川風太の記憶を消したのです?あれではあまりに・・・。」

 「・・・彼には、周りの人間を見ることの大切さを思い出してもらわないと。今まで彼は、周りの人間に恵まれていなかった・・・いや、恵まれてはいただろうけど、酷い人間ばかりに目が行く状態だったからね。」

 ソウは、どこか憂いを帯びた表情をする。

 「・・・青野渚は、そのせいで酷い人間の側に見られてしまっていた・・・そういうことですね?」

 「うん。まあ、彼も間違っていたとは気付いているんだろうけどね。今更言えないってところがあるんだろうね。」

 「・・・どうして・・・そこまで緑川風太のことを?彼が、あなた様・・・いや、あなたが以前、私に啓示した竜王の契約者だからですか?」

 「・・・それもあるけど、ある種の罪滅ぼし・・・かな。」

 「罪滅ぼし?」

 「・・・いつか話すよ。今は、彼がまた歩き出すのを見守ろう。」

 「・・・。」

 「・・・風太。君のアナザーワールドでの記憶は確かに消したよ。・・・でも、消してないものもあるんだ。・・・それにどうか負けないで・・・。」

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