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魔剣ブラフマー

 「・・・次はどいつだ?」

 風太は、剣を敵に向けて挑発する。

 「き・・・貴様ー!」

 それに、魔将軍の一人が反応し、自身の軍勢を率いて風太の方に向かって行こうとする。だが、そうなると、彼は、ヴァサーゴの率いる軍勢にぶつかってしまうこととなる。

 「落ち着け!敵の挑発に乗るな!」

 ヴァサーゴは魔将軍を止めようとする。しかし、彼は止まらない。

 「どけ!奴は俺が倒す!よくも俺の弟を!」

 魔将軍は、弟を殺されたことで完全に逆上し、ヴァサーゴの軍勢を突っ切って行こうとする。そのせいで、両者の軍勢は混乱状態となってしまう。

 「・・・愚か者め・・・!」

 「ヴァサーゴ、奴は捨ておけ。動かせる手勢だけで攻めよ。」

 「はっ!」

 アロンから命じられ、ヴァサーゴは動ける軍勢だけで進撃を再開する。

 「・・・あいつはできるな。さっさと二人目を片付けて、追いかけないとな。」

 風太は、懐からサモンカードを二枚取り出す。

 「【サモン・ガルーダ】!【サモン・フレアバード】!」

 風太は、ガルーダとフレアバードという鳥型魔物を召喚する。フレアバード。ファイアバードの上位種で、その群れの主的な存在である。ランクはEと、ガルーダに比べればかなり劣るが、それでも討伐に軍隊が必要なほど強力な魔物である。

 「ガルーダだと!?貴様、テイマーか!だが、ガルーダ一体如き、相手には・・・!」

 魔将軍は、ガルーダを召喚したことに対して驚くも、それだけで自分が負けるはずがないという自信から、突撃を続行する。だが、彼は完全に見落としていた。ガルーダが強すぎる故に、フレアバードの存在を。

 「確か、属性には相性があるって言ってたな。相反する属性、相乗する属性。ガルーダ!風を起こせ!特大の奴だ!」

 『よかろう!ガルーダテンペスト!』

 ガルーダは、翼を羽ばたかせ、強烈な突風を引き起こす。

 「フレアバード!ガルーダの風に、炎を全力でぶっ放してやれ!」

 『了解した。火の鳥の息吹ファイアバードブレス!』

 フレアバードが吐き出す炎の吐息が、突風に放たれる。突風は、炎の嵐と化し、魔将軍達に襲い掛かる。

 「!これは!?」

 魔将軍は、魔法障壁を展開して防御するが、後ろの魔物達は防げず、一瞬で炎に包まれて焼け死んでいく。

 「こ・・・こんな馬鹿なことが・・・!たかがガルーダとフレアバードに・・・こんな・・・!」

 「余所見をしている場合か?」

 「!」

 いつ移動したのか、風太は魔将軍の目前に迫っていた。そして、そのまま剣で魔将軍を攻撃する。魔将軍は、剣で防ごうとするが、風太の剣は、障壁も剣も易々切り裂き、魔将軍の顔面を一閃した。

 「・・・な・・・に・・・が・・・!?」

 魔将軍は、何が起こったか理解する間もなく、絶命した。乗馬していた馬型の魔物は、乗り手を失い、どこかへ走り去っていくのだった。

 「・・・あと一人だな。お前達、残りの魔物を片付けておいてくれ。俺は、あの魔将軍のところに行って来る。」

 『分かった。』

 風太は、風魔法を利用した高速移動で、ヴァサーゴの軍勢に向かって行く。ガルーダとフレアバードは、まだ生き残っている魔物を上空から攻撃し、息の根を止めていく。それほど時間も経たないうちに、生きて動いている魔物はいなくなっていた。


 「・・・信じられん・・・いつの間にあれほどの力を・・・!?」

 「賢者殿、勇者殿には賢者殿直々が作った眠り薬を飲ませたはず?何故ここに?・・・それに、勇者殿の力は、まだ魔将軍と戦えるかどうか分からないという話ではなかったのか?」

 「・・・私にも分かりません。まだ、魔将軍と戦うには早い程度のはずです。・・・奴らの魔法障壁を切り裂けるはずが・・・。・・・そもそも、何故あの薬の眠りから目覚めたのか・・・?無理矢理目覚めさせることはできないはず・・・。」

 モーゼは困惑していた。モーゼから見た風太は、魔力は自身を遥かに凌いでいたが、魔法技術は未熟だった。寧ろ、その強すぎる魔力が弊害となり、技術が中々上達しなかった。下級魔法しか教えなかったのも、渚に比べて技術的な面で劣っていたからだった。また、剣術や体術も、一通り修行させたが、現段階では平均的な兵士とさほど変わらないレベルであり、とても魔将軍を切れるものではなかった。そもそも、魔将軍達の使った魔法障壁は、魔力を周囲に展開して身を守る簡単な魔法だが、シンプル故に強力な魔法で、単純な強度なら、上位の防御魔法に引けを取らない魔法なのだ。いくら風太でも、魔法で破壊することはできない。ましてや、剣でなど到底不可能なのだ。だが、予想に反して風太が魔将軍を容易く倒してしまったのだから、驚くのも当然である。

 もちろん、これには理由があった。それは、風太の持つ魔法剣ブラフマーの力だった。ソウが言った通り、ブラフマーは所有者の身体能力を向上させ、切れ味をも増す魔剣である。だが、その身体能力向上率と剣の攻撃力は、所有者の魔力に依存しているのだ。つまり、所有者の魔力が強ければ強いほど、身体能力が強化され、流す魔力が多ければ多いほど、剣自体の強さも上がるのだ。この世界の人間では、ここまで劇的に強化されることはない。剣の強化も、一振りすれば魔力を使い果たし、倒れてしまうだろう。だが、風太は規格外ともいえる魔力の持ち主であるため、魔将軍すら反応できないほど身体が強化され、剣の切れ味も、魔将軍の張る魔法障壁を易々切り裂けるほどになったのだ。

 それを知らないモーゼも王国軍も、風太の一騎当千の活躍に困惑と同時に希望を抱いた。この調子でいけば、勝てるのではないかと。

 「・・・陛下、何故緑川風太がこれほどの強さを手に入れたのかは分かりませんが、このままいけば、或は・・・。・・・!」

 その時、モーゼは自身に魔法が向かっていることを察知し、魔法障壁を張って防ぐ。魔力の消耗を考えて、張る範囲は最小にとどめる。

 「・・・余所見などしている場合か?貴様の相手は、この私だ。忘れるな。」

 アロンは、自身を無視されて不快だったのか、忌々しそうに声を伝える。

 「・・・そうであったな。・・・団長、陛下と兵士達を連れて後退を。これ以上の戦いは、味方を巻き込みかねません。」

 「・・・全軍撤退!陛下、こちらへ!」

 団長は、国王を伴い、撤退を開始する。

 「!逃さん!」

 ヴァサーゴは、撤退する兵士達を追撃しようとする。そこに、風太が凄まじいスピードで肉薄する。

 「!ちぃ!」

 風太の振り下ろす剣を、ヴァサーゴは防ぐ。今まで剣諸共敵を切り裂いてきた風太だったが、防がれたことに驚き、距離を取る。

 「・・・驚いたな。今まで一撃だったのに。・・・そいつも魔剣か?」

 「・・・なるほど。その強さ、魔剣によるものか。だが、あの二人が苦も無く殺されたのだ、単に魔剣だけではないな。」

 ヴァサーゴは馬から降りると、剣を構えて風太と対峙する。ヴァサーゴの構えは、一部の隙も無いもので、風太はどう攻めるべきか決めかねていた。

 (・・・素人の俺でも分かる。こいつはさっきの二人と違う。相当経験を積んでるし、恐ろしいほど冷静だ。あれだけのことが起こったのに、動揺が見られない。・・・いや、動揺していても見せないようにできるというのが正解か。・・・どうする・・・?)

 (・・・よもや、たった一人の子供に軍勢の三分の二がやられるとは・・・勇者というのは間違いないな。・・・だが、今なら倒せる。見たところ、驚異的な身体能力と魔力だが、動きに無駄が多すぎる。そこが付け入る隙だ。)

 しばしの沈黙。そして、次の瞬間、二人は同じタイミングで攻撃を仕掛けるのだった。

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