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敵本隊到着

 「・・・見えました!」

 「・・・来たか・・・!」

 遂に、アロン率いるヤミーの軍勢が、王国軍の視界に入った。三人の魔将軍を先頭に、アロンが魔物達を率いる形で進軍してきた。

 「・・・久しぶりだな、モーゼ。」

 アロンは、声を伝える魔法を使い、モーゼ達に話しかけたきた。

 「・・・そうだな、アロン。・・・久しいな。」

 モーゼも同様の魔法で声を伝える。

 「今日こそ、貴様との決着をつける時だな。この国と共に、滅び去るといい。」

 「・・・アロン。本来なら、そなたが賢者になっていたというのに・・・。師の想いも理解せぬばかりか、そのような人の道を踏み外した存在に落ちるとは・・・愚かなことを・・・。」

 「くだらん。あの老いぼれは、人間の力も見抜けぬ能無しだ。今は、あんな人間の跡目など継がなくてよかったと思っている。」

 モーゼが、無念そうな面持ちで語りかける。しかし、アロンはまったく意を介さず、吐き捨てるように言う。

 「・・・そうだな。そなたはもはや、人の心すら捨てた身・・・ならば、語ることなど何もない・・・。ゆくぞ!」

 モーゼは、残りの魔力をうまく使い、魔法を発動する。

 「【セイントレイ】!」

 天空から、眩い光が生じ、その光は光線となって敵に向かっていく。

 「賢者殿の光属性中級魔法か!」

 「いいぞ!これをくらえば・・・!」

 兵士達は、モーゼの魔法に歓喜する。だが、アロンもまた、魔法を発動する。

 「【ダークレイ】!」

 すると、モーゼの時と同じように、天空から光線が生じる。だが、その光線は、禍々しい黒色の光線であった。

 二つの光線はぶつかり合い、やがて消滅した。

 「・・・何て奴だ・・・賢者殿の魔法を・・・!」

 「やはり魔王・・・!」

 モーゼの魔法を相殺したことに戦慄する兵士達。一方、二人の魔将軍も、アロンの力に戦慄を覚えた。

 「・・・あれだけの魔法を相殺するとは・・・さすがはアロン様。」

 「初めて見たが、やはり、アロン様はすごい・・・。」

 「・・・あんなもの、ただの子供騙しにすぎん。何を驚く?」

 ヴァサーゴだけは、大したことのない魔法だと興味を示さなかった。

 「お前達、モーゼは私が引き受ける。他の有象無象は好きにしろ。思う存分蹂躙し、ヤミー様の贄とせよ。」

 「はっ!」

 「ようやく暴れられるぜ!」

 「皆殺しにしてくれる!」

 魔将軍は馬を駆り、先行して王国軍に攻め込む。三人は、ヴァサーゴが中央、額に角が生えた男が左側、側頭部から角の生えた男が右側から、それぞれ魔物を引き連れて進撃する。

 「油断はするな。勇者の姿が見えん。どこかに隠れて、不意を打つ気かもしれん。」

 「ヴァサーゴ、勇者だといっても、所詮は子供。我々の敵ではない。」

 「出て来ようものなら、返り討ちにしてやるまでだ!」

 「【エアロバースト】!」

 その時、突如として突風が、額に角の生えた男と、彼の率いる魔物達を襲う。

 「!?な・・・何だと!?」

 男は魔法障壁を展開し、自身と馬を守るが、後方の魔物達は、一気に吹き飛ばされていく。

 「これは・・・風魔法!・・・威力的に、中級・・・いや、上級か!?」

 「・・・ハズレだ。」

 突風に耐える男に、何者かが凄まじいスピードで近付く。手には、鋭い剣が握られていた。だが、男は、風に耐えるのに必死で、反応が遅れてしまう。そのまま襲撃者は、擦れ違いざまに男を一閃する。

 「・・・な・・・?」

 男は、乗っている馬型の魔物共々、顔面から真っ二つに切り裂かれ、夥しい血を噴き上げて絶命した。その表情から、自分が死んだことすら気が付いていないようである。

 しかし、それだけにとどまらなかった。なんと、襲撃者の斬撃は、男の後方にいた魔物達にも届いていた。先の風魔法で、多くの魔物が倒され、生き残った魔物達も隊列を多いに乱されて混乱していたところに、斬撃が襲ったのだ。この男の指揮する一隊は、あっという間に壊滅していた。

 「!?何!?」

 「馬鹿な!何が起こったというのだ!?」

 ヴァサーゴともう一人の魔将軍は、男が倒されたことに驚愕した。男は、力に過信しがちなところがあるが、実力は本物で、最低でもAランク相当の強さがあったのだ。それが、動きを封じられていたとはいえ、魔法障壁越しに切られて敢え無く倒されたのだ。信じられなくて当然である。

 「・・・身体強化と魔力を込めた攻撃なら、障壁さえも切り裂けるのか・・・。これはいい。」

 「!あれは・・・まさか・・・!」

 モーゼは、魔将軍を倒した男を見て、愕然とした。そこにいたのは紛れもない。緑川風太だった。

 「・・・次はどいつだ?」


 「・・・ここにいたんだね。」

 アナザーワールドのどこかの上空。そこに、ソウがいた。彼は、なんと上空に立っていたのだ。

 『・・・誰だい、君は?・・・人間・・・ではないね。人間は空を飛べない。魔法を使えば、それも可能だろうけど・・・それは、魔法じゃない。・・・何者だい?』

 ソウが対峙している相手は、まるで東洋の龍のような外見の生き物だった。ただ、神々しい外見とは裏腹に、その声は、まるで少年のような幼さを感じた。

 「僕は、ソウだよ。確かに、僕は君の言う通り、人間じゃないよ。でも、他の住む者達ではなければ、魔物でもない。別の存在だよ。」

 『・・・その別の存在が、僕にいったい何の用だい?』

 「・・・君の力が必要なんだよ。風竜フィード。」

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