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動き出す魔王

 「報告します!先発部隊、壊滅しました!残存兵力は、一割にも満たない状況です!」

 後方で陣取っていたヤミー軍本隊の司令部に、全身黒装束の伝令から、先発隊の状況が伝えられた。司令部には、中央に黒いローブを着た、フードを被った男が椅子に腰をかけ、その側に黒色の鎧を着た男性が三人控えていた。三人の男達は、額や側頭部に角の様なものが生え、肌の色も灰色や茶色という人間とは違う色で、瞳は血のように真っ赤だった。

 「何だと!?王都には五千程度の兵力しかないはずだぞ?それが、この短時間で壊滅に追い込まれたというのか!?」

 額に二本角の生えた男が、驚愕した様子で立ち上がる。見た目からして、二十代前半ほどだろうか。この中にいる男達の中では一番若く見えた。

 この男が驚くのも無理はない。まだ一時間ほどしか経っていないというのに、王都に突入するどころか、返り討ちに遭うなど、到底信じられることではなかった。如何に雑魚が大半を占めていたとはいえ、先発隊の中には、兵士一人で倒すのは困難な魔物が多数混ざっていたのだ。同数の兵力なら、確実に勝てる戦いだったのだから、この結果はあり得ないことだった。

 「モーゼ自身が出向いたか?」

 側頭部から角の生えた男が、モーゼが参戦したのかと伝令に尋ねる。この男は、顎に黒い髭を生やした三十代半ほどの男で、先ほどの男よりも落ち着いているように見えた。しかし、伝令の口から出た言葉を聞き、彼の冷静そうな空気は簡単に崩れた。

 「それが・・・ここまで被害を与えたのは、たった二人の子供でありまして・・・。」

 「子供だと!?子供が先発隊を壊滅に陥れただと!?」

 「信じられん・・・たかが子供二人が、魔物の大軍と戦えるわけが・・・!」

 二人は、伝令の言葉が信じられず、ただただ困惑するだけだった。

 「・・・魔王アロン様。どう思われます?」

 もう一人の鎧の男-二人に比べて立派な鎧を着、角は生えてはいないが、肌の色は茶色で、他の二人より年上に見える-が、フードの男に恭しく言葉をかける。

 「・・・モーゼの弟子の可能性もある。あの男なら、隠れた弟子くらい持っていても何もおかしくない。」

 フードの男は、まるでモーゼのことを知っているかのように自身の考えを述べる。

 「しかし・・・現在一番弟子であるミリィとは比べ物にならないほどの魔法力でした!・・・最悪、モーゼを凌ぐかと・・・!」

 「あり得ない!現在、人間どころか住む者達の陣営で最強の魔法使いが奴なのだぞ!それを凌ぐなど・・・!」

 「モーゼに幻術でもかけられたのではないのか?」

 「間違いありません!この目で確かに見ました!それに、私の目は、幻術を無力化する魔眼です!如何にモーゼといえど、欺くことなどできません!」

 伝令の報告を信じられない角の付いた二人とは対照的に、残りの二人は落ち着いた様子で考え込んでいた。しばらくして、鎧の男の方が意見を述べだす。

 「・・・アロン様、まさか、ヤミー様のお告げにあった勇者共では?」

 「そのようだな。」

 「勇者!?まさか・・・その子供が、五大竜に選ばれた勇者だと言うのか!?」

 「馬鹿な!勇者とは、竜を使役するほどの猛者だと聞く!ならば、厳しい修行を積んだ人間のはず!子供にそのようなことができるわけ・・・!」

 「だが、その子供が先発隊を壊滅させたのは事実。ならば、用心するに越したことはない。」

 「・・・。」

 角の無い男の言葉に、二人の男は黙る。どうやら、この角の無い男が、二人のまとめ役のようである。

 「アロン様。相手が勇者であるなら、我々自身が出向いた方がよろしいかと。」

 「そうだな。雑魚など差し向けたのは失策だった。最初から、我々が直接赴き、全軍をもって圧倒的な力で捻り潰すべきだった・・・。」

 フードの男は椅子から立ち上がると、側に置いてある杖を手に取り命じる。

 「全軍をもって王都に総攻撃をかける!先陣はこの魔王アロン直々が切る!」

 「はっ!」

 (・・・モーゼ、貴様が何をしようと、我々の勝利は揺るぎない。ここで勇者共々、始末してやろう。)

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