謎の少女現る
「・・・何とか抜け出せた。・・・ったく、渚の奴。言いたい放題言いやがって・・・。」
風太は一人、夜の街を歩いていた。今頃家では、妹の法事が執り行われている頃だが、風太は参加する気などなかった。
(・・・風子は死んでなんていない!どこかで必ず生きている!・・・大人が諦めても、俺は諦めない・・・!)
彼の妹-緑川風子-は、五年前のこの日、行方不明になった。当時、地元の新聞にも載り、警察まで動くほどの騒ぎとなったが、結局見つからず、死亡扱いとなってしまったのだ。
だが、妹を大事に想っている風太は、諦めていなかった。そんな大人達の態度に失望した彼は、学校が終わってからも、捜索を続けていたのだ。
しかし、結局は一介の学生にすぎない風太に、それ以上のことができるわけもなく、捜索は何の進展もなく、手詰まりの状態だった。
(・・・ここまで捜しても見つからないということは・・・考えられるとしたら、誘拐か?・・・でも、身代金なんて要求してこなかったし・・・何より、俺の家は金持ちじゃない。普通の一般家庭だ。営利誘拐なんて・・・。)
「緑川風太ね。」
「!」
突然後ろから声をかけられ、風太は振り向く。
そこには、一人の少女がいた。少女は、年齢は風太と同い年くらいか。髪はピンク色で、ツインテールにしていた。服装は、まるでファンタジーゲームに出てくるような変わった格好をしていた。
「・・・誰だ?」
「私は、ミリィ。アナザーワールドから来たわ。」
「・・・何だって?」
突然の言葉に風太は困惑する。目の前に、コスプレしたような変な恰好の女が現れ、意味不明なことを口にしたのだ。当然である。
(・・・変な奴に絡まれたな。・・・無視するか・・・。)
風太は、その場を立ち去ろうとする。そんな風太に、ミリィと名乗る少女はさらに声をかける。
「あなたの力を貸してほしいの。私達の世界を救うために。」
「・・・ドラマの撮影か?なら他を当たってくれ。俺は、そんな気分じゃ・・・。」
「知ってるわ。妹を探しているんでしょう?」
「!」
妹という言葉に、風太は反応する。風太は立ち去ろうとしていた態度から一転、ミリィに詰め寄る。
「おい!それはどういうことだ!?妹って、風子を知っているのか!?」
声を荒げてミリィに詰め寄る風太。ミリィは、表情を一切崩さず、風太の質問に答える。
「・・・ええ、知ってるわ。彼女が今、どこにいて、どうしているか。」
「!本当か!?どこだ!?どこにいる!?」
「・・・ここではなんだから、どこか別の場所で話しましょう。・・・長い話になると思うから。」
「・・・分かった。」
風太は、ミリィを伴い、別の場所に行くのだった。