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戦う前の二人

渚の口調を変更します。

 「・・・残り一時間ほどか・・・。」

 城壁の上から、敵が来るであろう方向を風太は睨んでいた。今のところ、敵の姿は全く見えず、静かであった。だが、逆にこの静けさが、緊張感を醸し出していた。

 「・・・風太。・・・私達で戦えるのかな?・・・それは、訓練はしたけど・・・まだ実戦は・・・。」

 渚は、自信無さげに呟く。よく見ると、スタッフ・オブ・エリアスを持つ手が震えていた。

 「俺は、ランクの低い魔物となら戦ったことがある。・・・風属性に耐性でもなければ、問題なく倒せた。」

 「・・・そう・・・。」

 もう風太は、戦える状態にあると知り、渚はさらに自信をなくしたのか、俯いてしまう。

 「・・・渚。無理なら俺が戦う。渚は援護でいい。」

 「・・・嫌よ。風子ちゃんを助けるためには、戦わないといけないのに、風太に任せっきりじゃあ戦えないじゃない。だから、私も・・・!」

 そう気丈に振る舞うものの、身体の震えは止まらず、明らかに無理をしていることが見て取れた。無理もない。元々、平和な世界で喧嘩とも無縁な生活をしてきた彼女に、戦場に出て戦えというのだ。いくら気が強いとはいえ、まだ十六歳の少女、恐怖に震え、重圧をに押し潰されそうになって当然である。

 「・・・無理はするなよ。」

 風太はそう言うと、手に持つ剣を見る。それは、ラグン王国騎士団で制式採用されているもので、ゲームなどではショートソードと呼ばれていたものによく似た剣だった。見た目とは裏腹に、それなりの重量があり、風太は顔をしかめていた。

 (・・・玩具じゃない・・・本格的な武器だ。・・・そして、ゲームと違って、本当に命のやり取りをする。・・・俺に・・・できるか・・・?)

 こんな重いものを持ち、危険な怪物と戦えるのかと、風太は自分に問いかけるが、すぐにその不安は消えてしまう。

 (・・・何考えてるんだ、俺は?分かり切ったことじゃないか。俺は、風子を助けるためにここにいるんだ。俺の邪魔をするなら、誰であろうと潰すだけだ。その手段が魔法になるか、剣になるか。それだけだ。武器が変わるだけで、やることは何も変わらない。・・・邪魔な奴は殺すだけだ・・・。)

 渚は何気なく、風太の方を見る。だが、彼女は恐ろしいものを見たように凍り付いた。その時の風太の目は、まるで獲物を見る猛獣のように冷たく恐ろしい目をしていたのだ。


 「!来たぞ!」

 それからどれほどの時間が経ったか。見張りの兵士が、敵発見の報告をしてきた。

 その報告と同時に、視界の遥か遠くから、土煙を上げて大勢の魔物が王都に向けて迫って来た。

 「歩兵部隊は槍を持って前進!重装部隊は歩兵を突破した敵を片付けろ!弓部隊は陸上部隊の援護をしろ!」

 団長が兵士達に命令を下す。城門が開くと同時に、軽装の槍を持った部隊と、重装の大剣を持った部隊が出撃する。彼らが出撃し終えると、その後ろから、白馬に乗った二人の人間が出て来た。一人は、騎士団長、もう一人は、全身を豪華な鎧に身を纏った国王であった。

 「おいおい・・・王様自身が出るのか?聞いてないぞ?」

 「確か、六十歳を超えていたはずよね?戦うなんて無理よ!」

 困惑する二人に、兵士が近付いて来る。

 「勇者様、そろそろお時間です。出撃を。」

 「・・・分かった。とにかく、雑魚共は俺達が片付ける。行くぞ、渚。」

 「・・・うん・・・。」

 兵士に促され、二人は城壁をから飛び降りる。城壁は、かなりの高さで、普通なら死んでしまうだろうが、そこは、風太が風魔法を使い、緩やかに落下し、激突を防ぐ。

 「・・・便利だな、風魔法は。まだ空を飛べる魔法が使えないのが難点だな。」

 「落下を緩やかにする魔法でも凄いと思うけどな・・・。」

 「・・・さあて・・・思いっきり暴れてやるか・・・!」

 風太は、鞘から剣を抜く。そして、魔物の大群に向かって駆け出すのだった。

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