空の魔物達の神
『なるほど。お前は暗黒竜ヤミーに囚われた妹を救うために、修行しているということか。』
ガルーダと契約してから数日後、風魔法の修行のため、ガルーダに乗って空を飛び、風を感じ取る修行を行っていた風太は、ガルーダに自分のことを尋ねられ、今までのことを話した。自分が異世界人であること。妹を攫われ、救い出しに来たこと。そのために、五大竜の力を求めていること。色々話した。
『ヤミーを倒すには、残り四体の竜を見つけなければいけないんだ。・・・ただ、相手は神みたいなものだ。契約できるようになるには、ある程度強くないと駄目だ。だから、今は修行中って訳だ。』
『ふむ・・・。水竜以外の五大竜・・・そのうちの一体なら、我ら鳥の魔物達で見つけられるかもしれん。』
『本当か!?』
『風竜フィード。我ら空の魔物にとっては神の如き存在だ。』
『やっぱり崇められているんだな、竜って。・・・で、どうしてお前達なら見つけられるんだ?それは、空を飛んでいれば、歩いて探すより楽かもしれないけど・・・古い文献でも見れば、居場所が分かるんじゃ・・・?』
『他の竜ならそうだろうが、風竜は特殊だ。風竜は、常に空を飛び、定まった場所に留まることがない。』
『つまり、定住してないから、普通に探しても会うことはできないって訳か。』
『そうだ。だからこそ、空を飛べる我らの力が必要になるだろう。我らなら、風竜がどこにいるか見つけることができる。』
『・・・でも、そんな簡単に他の魔物に姿を見せるのか?仮にも神みたいな存在なんだろ?」
『風竜は上下関係など気にしない。奔放な性格で、たとえ弱きものであろうと、分け隔てなく接する。我も、何度か会ったことがある。お前が契約したもの共も、会ったものは大勢いる。』
『意外と親しみやすい竜なんだな。だったら、真っ先に探す竜は決まったな。』
風太は、契約した魔物達の中でもランクが低いものをすべて召喚する。
『風竜を探してきてくれないか?最初に見つけたら、この間食べさせたお菓子をやるよ。』
『いいよ~。』
『お菓子!お菓子!』
修行の休憩中、風太が、渚が作ってくれたクッキー-意外なことに、風太達の世界にある食材も、この世界に存在した-を食べていると、魔物達がそれに興味を持ち、何気なく食べさせた。すると、魔物達はそれが気に入ったようで、風太はご褒美用にそれを食べさせることにした。ちなみに、ガルーダは、いつも自分を乗せてくれるので、毎日食べさせているが。
『契約者よ。風竜もそうだが、有力な鳥の魔物を見つければ、スカウトしてもいいではないか?』
『そうだな。ガルーダの契約者だって言えば、契約してくれるかもしれないな。』
『お菓子くれるって言えば、きっといっぱい来てくれるよ。』
『お菓子は置いておいて、他にも契約できるのならしておきたい。頼んだぞ。』
『任せて~。』
鳥達は、それぞれ空の彼方へと飛んで行った。
『・・・さて。そろそろ帰るか。渚の方も、魔法の修行が終わっていると思うし。』
『うむ。渚が今日は、どんなものを作るのか楽しみだ。』
この世界に来て、料理を作る当番は、基本的に渚だった。風太は作れるこそは作れたが、味よりも手っ取り早く作れるのが優先だったため、味はイマイチだった。ガルーダが契約した日の夜、渚に夕飯の残りをもらい、大変気に入ったようで、その日からよくご飯をもらうようになっていた。
『・・・すっかり餌付けされてるな・・・。でも、お前の契約者は、俺なんだぞ。忘れるなよ。』
『無論だ。我の契約者は、お前だ。』
『ならいい。・・・さて、帰るか。』
風太はガルーダを伴って、王都ドランへの帰路につくのだった。