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風太の初契約

 (・・・テイマーの基本。その一、魔物との意思疎通。これがまずできなければ駄目だったな。)

 風太は、事前にテイマー魔法とテイマーの基本的な契約方法の説明を受けていた。魔物との契約には、基本的に三つの段階を踏まえる。最初の段階が、魔物と意思疎通を図ることである。

 Aランク以上の魔物は、人語を話すこともできるが、それより低いランクの魔物は、たとえ知能が高くても、会話はおろか、基本的に人と意思疎通ができない。スライムのような知能の低い魔物なら、尚更である。テイマーは、魔物を自在に使役できるようにならなければならないため、意思の疎通が必要になる。そのために生み出された魔法が、この【魔物意思疎通】と呼ばれるテイマー魔法である。この魔法があれば、人語を話せない魔物とも意思疎通が可能となる。契約の初歩は、この魔法で契約したい魔物と意思疎通を図ることから始まる。

 『・・・おーい、ちょっといいかー?』

 風太は、【魔物意思疎通】を飛ばし、ヘッドバードに語りかける。すると、ヘッドバードの内の何羽かが、風太の側まで降りてきた。

 『何か用?』

 風太の頭の中に、子供の様な声が聞こえてくる。これが、魔法で聞こえるようになったヘッドバードの声であると、風太は理解した。

 『・・・ああ。お前らと契約したい。できるか?』

 『契約?・・・いいけど、条件があるよ。』

 (・・・条件を言ってきたな。その二、魔物が何を望んでいるか知ること。)

 第二段階は、契約したい魔物が何を望んでいるかを知ることである。これは、簡単そうに見えるが、実はそうではない。望んでいるものを魔物が話すということは、契約の意思があるということに他ならない。つまり、気に入られているということである。この、魔物に気に入られるというのは、契約するということに関して重要な意味を持っている。契約は、双方の同意なくして成立しないのだ。

 大昔、まだ黎明期だったテイマー魔法には、強制的に契約する魔法もあった。だが、この魔法は欠陥があった。その魔法で契約した魔物は、力が著しく減退する上、寿命まで短くなってしまい、とても使役できるものではなかったのだ。そういった例もあり、テイマー魔法は、魔物との相互理解が重要視されるようになったのだ。

 もっとも、契約した後で、テイマーが魔物を酷使する事例は後を絶たなかったが。

 『どんな条件だ?』

 『この辺りを縄張りにしている、ガルーダを追い払ってほしいんだ。』

 『ガルーダ?』

 風太は、魔物図鑑に載っていた巨大な鳥の魔物のことを思い出す。

 『・・・ガルーダって、もの凄くでかい鳥だよな?そいつを追い払えばいいのか?』

 『うん。そうしたら、契約していいよ。』

 「・・・こいつら、ガルーダを追い払ってくれれば契約するって言ってるぞ。」

 「ガルーダか・・・。Bランクの魔物だ。それなら、そなたでもどうにかなろう。」

 「でも、どうやってガルーダの奴を探せば・・・?」

 「・・・その必要はなくなった。」

 その時、ヘッドバードの群が、突然飛び去って行く。そして、今まで彼らがいた場所に、とても巨大な鳥が飛んできた。

 外見は、鷲のようだったが、大きさは、風太より何倍も大きく、尾羽の部分には、尾羽に代わって長い尻尾の様なものが生えていた。

 「・・・あれが・・・ガルーダ・・・!」

 「たった一羽で大都市を滅ぼせる強力な魔物だ。・・・さて、どうやって倒す?」

 「・・・周りにあいつしかいないから、魔法で一気に倒す!」

 風太は、魔力を右手に込めると、ガルーダに向けて手を向ける。

 「【エアロバースト】!」

 ガルーダに向かって、強烈な突風が吹き付ける。ガルーダは、避けることもできず、突風にあおられて、地面に落下した。

 「・・・一撃か・・・まあ、当然であろう。」

 『おーい、ガルーダの奴は倒したぞ。これでいいか?』

 風太がヘッドバードに向けて【魔物意思疎通】を飛ばす。すると、ヘッドバード達は、風太の側に降りてきた。

 『ありがとう。これで安心してここを飛んでいられるよ。』

 『じゃあ、契約してくれるか?』

 『うん。』

 (・・・よし。それじゃあ仕上げだ。その三、自分の魔力を相手に与えて同調させる。)

 風太は、ヘッドバードの一羽の頭に手を置くと、自分の魔力を注ぎ込む。すると、ヘッドバードの身体が発光して、見えなくなる。光が消えると、そこには一枚のカードが落ちていた。カードには、先ほどのヘッドバードが描かれていた。

 「契約成功だな。それが、契約した魔物が変化した【サモンカード】だ。」

 「エリアスもこうなってたな。でも、どうしてカード化なんだ?」

 「大昔は、石板や小さな像などにしていたそうだが、持ち運びが不便ということで、カードとなったと言われている。カードなら、あまりかさばることがないために大量に持ち運べる上、重くないことで他の必要な荷物を多く持てるようになるからだろう。」

 「へー・・・。まあ、確かにこれなら持ち運ぶ時便利だな。」

 「・・・ところで、そこに倒れているガルーダだが、まだ生きている。」

 「え?直撃したはずだが・・・結構丈夫なんだな。それとも、風耐性でも持っているのか?」

 「・・・緑川風太。ガルーダと対話をしてみるか?」

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