風太の魔法習得
「・・・よし、大分感覚が掴めてきたぞ。」
魔力の同調訓練を続けていた風太は、完全ではないものの、自身の魔力をある程度自由に使えるようになっていた。
「うむ。放出に関しても、適度な量を出せるようになったな。これなら、下級魔法くらいならば使って構わない。」
「下級魔法か・・・。魔法のランクって、下級とか中級とか言ってたな。どれだけあるんだ?」
「下から下級、中級、上級、超級の四つがある。そなたの魔力は、威力だけなら下級魔法を使っても、上級魔法に匹敵する。現状は、下級魔法だけで十分だろう。」
「・・・それって凄いのか?」
「無論だ。本来なら、長きに亘る修行によって至るものなのだ。私でも、そこまで至るのにどれだけの修行を要したか・・・。」
モーゼは、遠くを見るような目をする。それを見て、風太はそれ以上聞くことは止め、話題を変えることにした。
「・・・あー・・・その・・・下級魔法って言ってたな。どうすれば覚えられる?」
「下級魔法に共通なのは、魔法効果をイメージし、手に魔力を込め、撃ち出すこと。その際、魔法の名を唱えればいい。」
「魔法の名前?呪文みたいなものか?」
「うむ。これが、そなたが使える風の下級魔法だ。」
モーゼは、緑色の表紙の本を手渡す。
「・・・【下級魔法辞典-風編-】。・・・風編?」
「そなたの属性が、風だからだ。ちなみに、自分の持たない属性の魔法は使えん。」
「なるほど。・・・ええと・・・。お、これなんかよさそうだ。」
風太は早速、書かれていた魔法の一つを使おうとする。
(・・・【ウィンドカッター】・・・名前からして、風の刃で敵を攻撃する魔法だな。かまいたちみたいなものか。・・・よし。)
風太は、手に魔力を込めていく。風太の手に、魔力が集まっていく。
「・・・【ウィンドカッター】!」
風太が呪文を唱えると、周囲に風の刃が発生し、草原の草を切り裂く。さらに風の刃は、地面をも切り裂いて、大きな痕を残した。
「・・・よし!成功だ!」
「・・・そなたは何の魔法を使ったのだ?」
「【ウィンドカッター」だ。ほら、この本に、『初めての人は、これを使えるようになりましょう。』って書いてあるぞ。」
「・・・これは、最低でも中級魔法の【ウィンドスラッシャー】クラスの威力だ。下手をすれば、上級の【ウィンドブレイカー】までいくやもしれん・・・。もし、同じ魔法同士で撃ち合いになれば、確実に相手の魔法を掻き消して、殺しかねん。」
「・・・なるほど。確かにこれなら、下級魔法だけでも十分そうだな。・・・ええと・・・次はこいつでも試すか。」
モーゼの言葉に納得した風太は、本に書かれている他の下級魔法を試すことにした。そして、そのことごとくが、下級のレベルを超えたもので、モーゼは呆れとも諦めともいえる目で風太を見ていた。
「・・・とりあえず、この本に載っている術は、全部使えるようになったな。次は、中級か?」
「中級以上に関しては、そなたの成長を見極めて教えるとしよう。現状で、これ以上の修行を行うのは、場所の問題だけではなく、そなた自身も危険が及ぶ。次は、無属性魔法を教えよう。」
「無属性・・・属性魔法以外の魔法だな。どんな魔法を教えてくれるんだ?」
「そなたが最も望む魔法、テイマー魔法だ。」