渚の魔法特訓
渚の口調を変更します。
「じゃあ、簡単な水の下級魔法を教えるわ。」
風太が魔力制御の訓練をしているのとは別の場所―この空間に唯一流れる川の側―で、ミリィと渚が魔法の特訓を始めていた。
「お願いね、ミリィ。」
「魔法は、自分の中に流れる魔力を外に放出することで発動するわ。属性魔法は、その放出した魔力と自分の属性と同調して発動するの。私は水だから、水の魔法が使えるの。」
「つまり、自分の持っている属性の魔法しか使えないのね。なるほど。でも、属性魔法か・・・。ゲームなら一般的な魔法よね。」
「?またげえむ?まあ、いいけど。それじゃあ、手本を見せるわ。」
ミリィは、手を前に向ける。
「・・・【ウォーターバレット】。」
すると、ミリィの手から、弾状になった水が放たれる。水の弾は、高速で飛び、遠くにあった枯れた木にぶつかり、木に穴を開けた。
「・・・これが、下級魔法の【ウォーターバレット】よ。」
「これが魔法・・・。」
「じゃあ、やってみて。」
「え?いきなり!?でも・・・どうやって・・・?」
「簡単よ。さっきの【ウォーターバレット】をイメージして、魔力を手に込めて、撃ち出すような感じでやればいいのよ。」
「そんな・・・私、魔法使ったことないし・・・。」
「難しく考えることないわ。あなたの世界では、あり得ないことかもしれないけど、ここでは誰でも使える当たり前のものよ。だから、やってみて。」
「・・・分かった。」
渚は、言われるままに、手を枯れ木に向け、先ほどの光景をイメージする。
(・・・【ウォーターバレット】・・・水の弾丸・・・水の弾丸をイメージして・・・。)
すると、渚は、自身の体内から、何かが湧き出し、それが手に向かっていく感覚を感じた。
(?・・・何?・・・この感覚・・・?)
「いい感じよ。そのまま【ウォーターバレット】と呼んで。」
「【ウォーターバレット】!」
渚の言葉と共に、手から水の弾丸が放たれる。それは、ミリィのものより大きく、そして、速かった。弾丸は、標的の枯れ木にぶつかり、枯れ木を粉々に粉砕した。
「・・・やった・・・できた・・・!」
初めての魔法に、渚は興奮する。
「・・・。」
一方のミリィは、渚の【ウォーターバレット】の威力に驚愕していた。
(・・・何・・・あの威力・・・【ウォーターバレット】・・・?まさか!あれは、最低でも中級レベルよ!私だって、あれほどの威力になるのに十年以上修行したのに・・・!)
「?どうしたの、ミリィ?」
「・・・いいえ・・・何でもないわ・・・何でも・・・。」
「?」
「じ・・・じゃあ、他の下級水魔法を教えるわ。私に続けて使ってみて。」
「分かった。」
「止めよ!緑川風太!止めよ!」
その時、遠くからモーゼの怒鳴り声が聞こえてきた。その様子から、モーゼは相当焦っているようである。
「・・・賢者様・・・緑川風太の訓練に相当手こずっているようね。・・・まあ、無理もないけど。」
「風太って、そんなにすごいの?私には、よく分からないんだけど・・・?」
「他人の魔力を感知できるようになれば分かるわ。あとでそれも教えるわ。」
「ありがとう、ミリィ。よーし、どんどん魔法覚えようっと!」
その後も渚は、下級とは思えないほどの威力の魔法を連発し、ミリィを驚愕、いや、ドン引きさせた。