失意の兄
渚の口調を変更します。
「風太。やっぱりここにいた。」
制服姿の緑色の髪の少年―風太と呼ばれていた―に、制服姿の青い長髪の少女が近付く。制服の様子から、おそらく高校生くらいであろうか。少年は、面倒くさそうな顔をして、少女の方を向く。
「・・・渚。」
「今日は、早く帰るんでしょ?風子ちゃんの法事でしょ?」
「・・・勝手に人の妹死んだことにして、法事なんてするなよ。」
渚と呼んだ少女の言葉に、風太は心底失望と不快感を露わにした表情を見せる。
「・・・私だって・・・風子ちゃんは、妹の様に思っていたけど・・・。でも、現実を受け入れないと・・・。」
「・・・風子は死んでいない。」
「・・・私だって、風子ちゃんが死んだなんて思いたくないよ。・・・だけど・・・あれだけ探して、何の手がかりもないんだもの。・・・五年経って、何も見つからないんじゃ・・・。」
「・・・。」
「・・・とにかく、おばさんの所に帰ろう。皆、心配してるんだから。」
「お・・・おい・・・引っ張るなよ・・・!」
渚に無理矢理引っ張られるように、風太は連れて行かれる。
そんな二人のやり取りを、遠くから見る者がいた。その人物は、ピンクのツインテールの少女で、まるでファンタジーゲームの登場人物のような恰好をしていた。
「・・・あれが、緑川風太ね。」