規格外の魔力
「止めよ!」
モーゼは、突然の事態に困惑し、風太を制そうとする。
風太が、魔力を感知し、それを放出し始めたことまでは、モーゼは分かった。だが、次の瞬間に起こったことを、モーゼは理解できなかった。何の前触れもなく、巨大な竜巻が発生したのだ。
(これは・・・何故、突然竜巻が!?・・・!まさか・・・!)
原因が風太の放出した魔力であることに気付いたモーゼは、慌てて風太に、放出を止めるよう叫んだのだ。
「止めよ!緑川風太!止めよ!」
「・・・!」
モーゼの声に、風太は意識を戻す。そして、目の前の光景に驚愕した。いつ現れたのか、目の前に巨大な竜巻が出現していたのだ。いや、正確には、巨大竜巻の中に、自身がいたのだ。
「何だ!?何が起きた!?何で竜巻の中に!?」
「魔力の放出を止めよ!このままでは、この空間内のものを全て吹き飛ばしてしまうぞ!」
「!?」
モーゼに言われ、慌てて風太は魔力の放出を止める。すると、徐々に竜巻は弱まり、しまいには消えてしまった。
「・・・危なかった・・・。」
「・・・そなたはどれだけの魔力を放出したのだ?あれは、下級魔法のレベルではないぞ!最低でも、上級レベルだ!」
「・・・どれだけって・・・ほんの少しだけ、魔力の波から魔力を押し出しただけだ。」
「・・・あれが、ほんの少しだと?私が下級魔法を使う魔力より、遥かに膨大な量を使っているぞ?」
「でも、本当に、ほんの少しだぞ?」
「・・・。」
モーゼは今更ながら、風太の持つ潜在的な力に驚愕したが、同時に大いに期待するのだった。
(よもや、これほどとは・・・。さすがは、緑川風子の兄だけはある。彼ならば、竜王を目覚めさせることも・・・。)
「・・・魔力を放出するのは、私の許可なく行わないことだ。そなたの力は、私の想像を超えている。ほんの僅かな力でも、大事に至る。」
「・・・分かった。」
「・・・だが、そなたの成長は、私の想像を超えている。魔法を知らぬ身でありながら、もうここまで習得するとは・・・。これなら、【無属性魔法】を教えるのもそう時間はかからんな。」
「無属性?」
「属性魔法以外の魔法全般を差す。テイマー魔法もその一つだ。」
「ミリィが使っていたやつか。・・・あれ?でも、渚も・・・。」
「あれは例外だ。教える時に教えよう。」
「・・・。」
「では、そなたは魔力制御の訓練を続けるのだ。私は、ミリィと青野渚の様子を見に行くとしよう。」
モーゼは、二人が修行している場所に向かっていく。
残された風太は、再び意識の内に向け、魔力の同調訓練を行うのだった。