呆気ない魔王の幕切れ
少々惨いシーンがあります。
「・・・本当に一人で倒しちゃった・・・。」
上空にいた渚は、敵の大軍を殲滅した真白の姿-正確にはロボットゴーレムの性能でもあるが-を見、驚愕した。まさに、一方的な蹂躙だった。
『魔法を使ったあなたと同等かそれ以上ですね。』
「・・・真白、大丈夫かな?」
『大丈夫でしょう。・・・!渚、次が来たようです。』
殲滅終了後、真白の前に新たな部隊が現れた。部隊といっても十名にも満たない人数であり、あくまで偵察目的であることが窺えた。
「・・・助けは・・・。」
だが、すぐに真白によって殲滅された。今度は、先ほどよりも数が少なかったこともあったが、真白が戦いに慣れてきたこともあり、一瞬で終わった。
「・・・全然必要なかったね。」
『・・・ええ。』
真白の無双ぶりに、渚とエリアスは唖然とするのだった。
「な・・・何なんだ・・・このゴーレムは・・・!?」
魔兵士の一人は、目の前の惨状が理解できなかった。先行した部隊の姿が見えず、いたのは奇妙な形状のゴーレムだけ。しかも、そのゴーレムが目にも止まらぬスピードで襲い掛かり、自分以外の魔兵士は全滅していた。理解できないのも当然である。
『・・・あなたに聞きたいことがあります。』
「!?喋った!?」
ゴーレムから声が聞こえてきたことに、魔兵士は混乱する。ゴーレムに言語を話す能力はないのだから。
『指揮官の魔王はどこにいますか?』
「お・・・お前は・・・ゴーレムじゃないのか?」
『質問に答えてください。さもないと・・・。』
謎のゴーレムは、左腕から光線のようなもの魔兵士の足元に撃つ。魔兵士の足元は、真っ黒焦げになった。
「!?」
『次は、あなたを撃ちます。』
「!ここから森を越えたあたりに陣を張って待機している!魔将軍様も一緒だ!」
『そうですか。なら、あなたにもう用はありません。』
そう言うと、ゴーレムは魔兵士の頭を殴った。魔兵士は、何をされたか分からないまま、絶命した。
「魔王様!先発隊との連絡が途絶えました!」
進軍していた魔王の許に、先発隊からの定期連絡が途絶えたことが伝えられた。
「・・・おそらく、勇者がやったのだろう。仮にも先発を任せた部隊が、こうも易々とやられるとは・・・。」
「・・・魔王様。差し出がましいですが、侵攻軍の兵力も加えた方がよいのでは?」
魔将軍の一人が、グロバー大陸を制圧するための軍を今からでも呼ぶべきだと進言する。
「いくら勇者が強いとはいえ、五人にも満たないと聞きます。なら、大軍をもって圧殺するのも手かと。」
「・・・それも手ではある。だが、そうなると指揮系統に不安が残る。侵攻軍の大半は、魔兵士よりも魔物だ。一応、制御できてはいるが、我々はテイマーではないから自在に使役できるわけではない。何かの拍子で制御を外れれば、奴らは我々にも牙を剥く。」
「ならば、魔兵士だけでも・・・。」
「魔兵士の兵力などたかが知れている。加えたところで焼け石に水だ。」
「ですが、ないよりはマシです。今からでも・・・。」
その時、彼らの耳に爆音が飛び込んできた。同時に、凄まじい爆風も生じ、彼らを襲った。
「!?何だ!?何事だ!?」
「ま・・・魔王様・・・!・・・て・・・敵・・・襲・・・!」
そう言い残した魔兵士の身体が、ぐちゃりと音を立てて潰れた。その上には、真白の乗るロボットゴーレムの足が置かれていた。
「!?何者だ!?」
『・・・あなたが魔王・・・ですね。』
「!声!?」
「魔王様!あのゴーレムらしきものから発せられているようです!」
「ゴーレムだと!?勇者の中にゴーレム使いがいたのか!?」
『私はゴーレムではありません。そして、勇者でもありません。・・・一応、仲間の一人・・・という扱いですが。』
真白は、自身がゴーレムではないこと、風太達の仲間であることを告げる。
「勇者でないにもかかわらず、一人で来たということか?愚かな!返り討ちに・・・!」
魔王がロボットゴーレムを攻撃しようとしたその時、傍にいた魔将軍達が消滅した。
「・・・は?」
何が起こったか、魔王は理解できなかった。その次の瞬間、魔王はロボットゴーレムによって地面に押し倒されていた。
「がはっ!?」
『・・・あなたが魔王なら、色々重要なことを知っているはずですね。聞きたいことがあります。』
「き・・・貴様!一体何をした!?」
『・・・。』
真白は無言で魔王の腕を潰した。魔王は、腕を潰された激痛で悲鳴を上げた。
「ぎゃああああ!?」
『質問に答えないのなら、次はもう片方の腕、そして、足を潰します。』
「わ・・・分かった!答える!答えるからやめてくれ!」
魔王は、真白の言う通りにすると言う。真白は、魔王の身体に足を乗せたまま立ち上がった。
『白名光がどこにいるか教えてください。』
「な?・・・シロナヒカリ?」
『私の妹です。光竜セイクの契約者にされた。』
「あ・・・あの人形のことか!?知らん!私は何も知らない!光竜の指揮権限は、ヤミー様だけが持っている!一介の魔王には知る由もない!」
『・・・魔王はヤミーの側近ではないのですか?』
「それは、あくまで四天王だけだ!魔王と言っても、魔将軍より上の地位というだけだ!私は、ヤミー様にお目通りしたことさえない!」
『・・・そうですか。なら、あなたにもう用はありません。』
そう言い残すと、真白は魔王の身体を踏み潰した。魔王は、曇った悲鳴を上げ、そのまま絶命した。
『・・・。』
真白は、魔王の死体を一瞥すると、残っている敵を殲滅しに向かうのだった。
真白は、大人しそうですが相当溜め込んでいるので、戦い方がかなり残酷だったりします。