ランド参戦
「!ブレイ!大丈夫か!?」
焔は、落ちてきたブレイに駆け寄る。幸いなことに、気絶しているだけで、ブレイは生きていた。
「・・・ブレイがやられたってことは・・・!」
焔は、嫌な予感を覚えつつ、上空を見る。そこには、今にもブレスを発射せんとするセイクの姿があった。
(ヤベー!こんな状態でブレスなんてくらえば、終わりだ!)
焔は、その場から逃げようとする。だが、倒れたブレイと凍り付いた光の姿が目に入り、足を止める。
(・・・ブレイの奴もそうだが、こんな小さい子供置いて逃げるなんて、絶対できねー!・・・こうなれば、一か八かだ!)
焔は、自身の周囲に魔法障壁を展開してブレスに備える。
(全魔力を使って、あいつのブレスを防ぐ!・・・悪あがきだろうが、しないよりはマシだ!)
死も覚悟する焔に、セイクはブレスを放とうとする。
『土竜の息吹!』
だが、そのブレスが放たれる瞬間、別の所から放たれたブレスがセイクに直撃し、セイクのブレスは別の方に放たれ、焔達のいる場所とは別の場所で爆発した。
「!?」
「焔!大丈夫かい!?」
「!」
突然の事態に困惑する焔。すると、聞き覚えのある声が聞こえ、声のした方を向く。そこには、震と巨大な黄色い竜がいた。
「震!・・・その竜は、ランドか!?」
「そうだ!土竜ランド!なんとか契約できたよ!」
「・・・そいつはよかった・・・と言いたいところだが・・・!」
「分かっている。・・・セイクをどうにかしないとね。」
震は、セイクを見る。セイクは、先ほどのブレスなどまるで効いていない様子で、ランドを睨んでいた。
『セイク・・・!信じたくはなかったけど、本当に・・・!』
「ランド、兄弟同士で戦わせるのは酷だとは思うけど、やらなければこっちがやられる。分かってくれ。」
『・・・分かってるわ。セイク!これ以上あなたを暴れさせないわ!』
「焔!ブレイを起こしてくれ!ランドとブレイでセイクをランドの領域に引きずり込む!そこならランドの力でセイクを抑え込める!」
「!分かった!」
震の指示を受け、焔はブレイを起こしに向かう。ランドは飛翔すると、セイクに向かっていく。
「ランド!先に言ったけど、直接対決は避けるんだ!動きを止める程度でいい!」
『分かってるわ!』
ランドは牽制に岩の槍を出現させると、セイクに向けて放つ。セイクは回避もせず、尻尾でそれを砕く。
「続けてくれ!ブレイが目を覚ますまで時間を稼ぐんだ!」
『ええ!』
ランドは岩の槍をセイクに放ち続ける。セイクはやはり、回避もせずに尻尾で砕いていく。
(・・・ずいぶん余裕だな。自分が傷付かない自信でもあるのか?)
こちらに反撃もせず、ただ岩を砕くだけのセイクに違和感を覚える震。一方、焔はブレイを起こすべく、ブレイを小突いていた。
「おい!起きろ、ブレイ!ランドが来たぞ!早く起きろ!」
『・・・う・・・!』
ブレイは何とか目を覚まし、起き上がる。
「起きたか!」
『・・・くそ。油断した。』
「早く、ランドを助けてくれ!今、出てきてセイクを止めている!」
『!本当か!?』
「ああ!契約は成功だ!このままランドのダンジョンにセイクを押し込む!そうすりゃ・・・!」
『任せろ!あの時は油断したが、今度は・・・!』
ランドが無事だったことを知り、ブレイは俄然やる気になり、セイクの許に向かっていく。
『!ブレイ!』
『ランド!俺が来たからには、もう大丈夫だぞ!』
ブレイは、妹にいい所を見せたいからか、セイクに向かって突進し、抑え込もうとする。だが、簡単に振り解かれると、そのまま投げ飛ばされてしまう。
『うお!?』
何とか大勢を立て直すブレイだが、そこに容赦なく追撃のブレスを放つ。ブレイは何とか躱すと、再び取り押さえようとする。だが、結局は振り解かれ、投げ飛ばされてしまうのだった。
「・・・焔。セイクの攻撃、ランドよりブレイに対しての方が激しい気がするけど、気のせいかな?」
「いや、ブレイに対しては結構容赦なかったぜ。ブレスバンバン撃ってたし、技もバンバン使ってたぞ。」
「ランドにだけ手加減しているのか?どうして?」
「ブレイが嫌いなんじゃねーのか?」
「・・・よし、それならいい作戦がある。ランド!」
『何?』
「セイクがブレイを投げ飛ばしたら、その隙にセイクに体当たりするんだ。」
『ええ?それでいいの?』
「いいからやるんだ。ブレイには、囮になってもらう。」
『・・・分かったわ。』
震の指示を受け、ランドはセイクがブレイを投げ飛ばしたその瞬間、全速力で体当たりする。セイクは躱すことができず、直撃を受けて体勢を崩す。
『!今だ!』
その隙を突いたブレイは、セイクを羽交い絞めにすると、そのままランドのダンジョンに向かう。セイクは抵抗しようとするが、そこにランドも加わり、一気にダンジョンに飛び込んだ。
『ランド!セイクを止めろ!』
『セイク!ごめんなさい!』
ダンジョンにセイクを入れたランドは、セイクを岩石の触手のようなもので拘束する。さすがのセイクもダンジョンの中ではランドには勝てず、簡単に制圧された。
『・・・やった・・・!』
「成功だ!」
ランドと震は、作戦が成功したことを喜ぶ。そして、それを見届けたと同時に、ブレイはその場に倒れ込んだ。
「おい、ブレイ!大丈夫か!?」
「・・・どうやら、限界だったようだね。本当にギリギリだったよ。」
「・・・そうだ。この子もランドの力で閉じ込めていてくれねーか?」
焔は、凍り付いた光をその場に置く。
「ランド、頼む。」
『任せて。』
ランドは、光もセイク同様に岩石で封印する。
「・・・は~。終わった・・・。」
光の封印を見届けた焔もまた、その場に倒れ込む。
「・・・ご苦労様、焔。」
そんな焔に対し、震は労いの言葉をかけるのだった。