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第三の賭け

 「緑川風太。あなた、契約した魔物と結構仲がいいみたいね。」

 モーゼの許で修行していた頃、魔物達と仲良くしている風太の姿を見たミリィは、そんな風太に声をかける。

 「当然だろ。俺に協力してくれる大事なパートナーなんだからな。それに、人間より付き合いやすいし。」

 「・・・あなたの人間嫌い、少しは治した方がいいと思うけど・・・。」

 魔物の方が人間よりいいと言う風太に、ミリィは複雑そうな顔をする。

 「・・・でも、魔物と仲がいいのは大事なことよ。たとえ契約してたとしても、何かしらの理由で契約が破棄されることだってあるんだから。」

 「?契約は絶対だって聞いたぞ?破棄されることもあるのか?」

 「当然よ。例えば、魔力の強い人間が契約を望んだ時とかね。」

 「じゃあ、魔力の強い人間が契約したいと言えば、そっちと契約してしまうのか?」

 「可能性としてはありえるわ。ただし、それは相手の契約者が、契約を履行していなかったり、魔物をぞんざいに扱っていたらの場合よ。そうじゃなければ、いくら魔力が強くても、新しく契約し直すなんてことないわ。」

 「なるほど。じゃあ、ブラックなテイマーの魔物を奪い取ることも、一応は・・・可能なんだな?」

 「・・・ブラックの意味がよく分からないけど、そんなところね。悪いテイマーに使われている魔物がいたら、考えてもいいかもしれないわ。」

 「分かった。頭の片隅にでも覚えておくよ。」

 そう言うと、風太はまた魔物と戯れるのだった。


 「相手のテイマーより強力な魔力を持ったテイマーなら、相手の魔物を奪うことができる。俺はそう聞いた。」

 風太は、以前ミリィに言われた契約している魔物を奪い取れる事例を利用し、フレスベルグを奪ったのだ。フレスベルグだったのは、風太と相性がいい魔物が鳥系だったからである。一応、他の魔物にも契約を試みてみたものの、相性がよくなかったため、うまくいかなかったのだ。

 「あ・・・あり得ない!私は、魔王だぞ!ヤミー様から更なる力を与えられた四天王だぞ!如何に貴様が勇者であろうと、奪うことなど・・・!」

 知識の上では知っていたものの、自身にそれが起こったことで、ダイオスは混乱していた。だが、風太にはこの賭けが、一番うまくいくと確信していた。ダイオスは、自身の魔物を雑に扱っていたのだから。

 「魔物を奪うための条件は、魔力だけじゃない。相手のテイマーが契約を反故にしたり、酷く扱っていることも条件だ。お前は、魔物を道具としてしか扱っていなかっただろ。だから、俺はフレスベルグと再契約できたんだ。俺の方から新しく契約するよう聞いたら、アッサリと契約してくれたぞ。・・・さすがに王とは相性が悪くてできなかったけどな。」

 「そ・・・そんな・・・!」

 ダイオスは、自分の中にあった絶対の自信に、ヒビが入るように感じた。ヤミーによって力を与えられ、圧倒的な存在となり、王を使役できるまでになったダイオスだが、魔物を【進化】させ、相性によっては敵のテイマーの魔物すら奪うことができる風太は、それを凌ぐものだったのだ。いくら強くなったとはいえ、ダイオスの性根は、かつて落ちこぼれと呼ばれていた頃から変わっていなかったのだ。

 「お前、テイマーの一族だったくせに、そんなテイマーの基本も忘れてたのか?一族の人間の目が節穴だったんじゃなく、お前自身がテイマーに向いてなかっただけだったんじゃないのか?落ちこぼれと言った一族の方が正しかったんじゃないのか?」

 「だ、黙れ!私は、もう以前の落ちこぼれではない!ヤミー様に選ばれた魔王なのだ!」

 風太の煽りに、ダイオスは怒りを再燃する。一族の中で、常に落ちこぼれ扱いされていた彼にとって、風太の煽りはまさに地雷だった。だが、それが風太の狙いであることに、怒りに支配されかけているダイオスは気付いていなかった。

 「なら、もっと魔物を大切にしていたはずだ。そうすれば、フレスベルグを奪われないで俺を倒せたはずだ。」

 「黙れ!貴様など、魔物がいなければ何もできない小僧のくせに!自分の力だけで戦ってみろ!できないだろう!魔物にばかり頼っている卑怯者なのだからな!」

 ダイオスは、魔物を使わず風太だけで戦えと言い始める。今まで魔物達を大量に使役して悦に入っていたというのに、負けそうになると魔物を使うのは卑怯だと言う。あまりに見苦しい姿であった。それだけ、ダイオスが追い詰められているという証拠でもあったが。

 「・・・分かった。そこまで言うなら相手してやるよ。皆、手を出すなよ。」

 それを聞いた風太は、どこか悪そうな笑みを浮かべると、魔物達に手を出さないよう命じ、ダイオスの要求に応じる素振りを見せる。

 「いい度胸だな!お前達も、私が命じるまで手を出すな!こいつは私の手で直に殺す!殺してやる!」

 ダイオスは、魔剣を手に、風太との直接対決を強行する。だが、ダイオスは気付いていなかった。自身の終焉が、間近に迫っていることに。

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