道は二つ
「ガルーダからの報告は、こんな感じだ。魔王はランドを捕まえるために、ヤミーから色々アイテムをもらっているみたいだ。もう、ここの守りは当てにならないと言ってもいい。」
風太は、ガルーダから更に詳しい状況を聞き、それを周囲に説明した。
『・・・馬鹿な!?鉄壁を誇るこのダンジョンが、こうもアッサリと・・・!?』
スチュパリデスは、信じられないといった様子だった。このダンジョンに絶対に自信を持っていたのだから、当然といえば当然の反応だった。
『・・・どうしよう。すぐにここには来ないだろうけど・・・。』
「諦める必要はない。俺達が先にランドの所に行けばいいだけだ。」
『簡単に言うな!この先は、今までの道のりとは比べ物にならんのだぞ!罠の数、魔物の質と量、どれも前半の道のりの比ではない!如何に竜の契約者であろうと、突破は不可能だ!』
ダイオスが来る前にランドの許に行くと言う風太に、スチュパリデスは怒り、そんなことは不可能だと言う。それは、自信というより、半ば受け入れ難いから喚いているようだったが。
「ランド。この先のダンジョンは、前半同様一本道なのかい?」
震は、ランドにダンジョン後半の道のりを尋ねる。
『・・・ここからは、二つの道があるわ。一つは、時間はかかるけど、安全な道。もう一つは、早く行くことはできるけど、危険な道。この二つよ。』
「・・・なら、危険だけど、最短ルートの方で行こう。魔王には、僕達が最短ルートを入ったと同時に入り口を塞いで遠回りのルートを通らせよう。」
「それしかないな。じゃあ、行くか。」
『正気か!?その道は、王が直接守護する道だぞ!』
スチュパリデスは震の選択と、それに賛同する風太を信じられないといった様子で見る。
「いちいちうるさいぞ。お前、ランドを守りたいのか守りたくないのかどっちなんだ?」
『!む、無論、守りたいに決まっている!』
「なら、文句を言わずさっさと俺達を通せ。手遅れになる前に。」
『・・・いいだろう。最短ルートの道は、俺の後ろだ。』
スチュパリデスは、最短ルートに続く道を開ける。そこには、頑丈そうな扉があった。
「あれだな。」
「一応、聞いておくけど、もう一つのルートは?」
『あれだ。扉もない、ただの道だ。』
スチュパリデスは、遠回りルートの入り口を翼で指す。彼の言う通り、扉もない穴だった。
「・・・じゃあ行くか。もたもたしていたら、魔王が来てしまう。」
「緑川風太。一応、ここにいる魔物達に、契約できるかどうか聞いてみないのかい?」
「今は、時間が惜しい。早く行こう。」
「・・・分かった。」
『・・・待て。』
風太達が、扉に向かおうとしたその時、スチュパリデスがそれを制する。
「?何だ?俺達は急いで・・・。」
『・・・俺を連れて行け。王との交渉くらいなら役に立てるだろう。』
「・・・いいのか?」
『お前達が先に神に会えなければ、神も光の竜と同じ道を辿る。そうなれば、俺達もおしまいだからな。それに、お前はあれだけ大口を叩いたのだ。それを見届けなければな。』
「・・・分かった。契約だ。」
「緑川風太。ついでにストーンバードとオールバードとも契約したらいい。ファイアバード同様、役に立つかもしれない。」
「そうだな。じゃあ、付いてきたい奴はこっちに来てくれ。」
ストーンバードとオールバードは、群れで何やら話し合っていたが、しばらくしてそれぞれ一体ずつが、スチュパリデスの側に来た。
「・・・じゃあ、契約だ。これからよろしく頼むぞ。」
風太は三体に魔力を放出する。三体の魔物は、サモンカードと化し、風太はそれを回収すると、扉を開ける。
「・・・よし。それじゃあここからは一気に行くぞ!【サモン・スチュパリデス】!」
風太は早速、スチュパリデスを召喚する。
「お前に乗って、ランドの所まで行く。頼んだぞ。」
『任せておけ。』
スチュパリデスが了承すると、風太達は彼の背中に乗る。
『では行くぞ!』
スチュパリデスは、最短ルートの入り口を潜っていく。それと同時に、入り口は崩落を起こし、通れないようになるのだった。