ダンジョン攻略4
その後も風太達は、順調にダンジョンを進んでいた。謎解きは、震が考えて答えを出し、戦闘になれば、風太が戦い倒す。その繰り返しだった。
そして、仕掛けを解いた後は、必ず守護者が現れた。もっとも、すぐに風太に倒されていたが。
「・・・どのくらい進んだんだ?」
「・・・おそらく、半分くらいかと。」
「これで半分か。・・・キリがいいからそろそろ休憩を取ろう。」
ダンジョンを半分ほど通過した頃、震は休憩を提案する。
「休憩?俺はまだ大丈夫だ。」
「奥になればなるほど難易度が上がる。今はまだ、自然回復量の方が上だけど、この先もそうとは限らない。一旦休憩を挿むべきだ。」
「・・・そうですね。奥には魔物の王が控えています。今までの守護者とは比較にならないでしょう。」
「・・・分かった。それじゃあ休・・・。・・・!」
休憩しようとした風太だが、何かの気配を感じ、振り向く。そこには、大量の鳥の魔物の姿があった。
「・・・あれは・・・?」
「・・・オールバード。鉱石の身体でできた土属性の魔物です。」
「土属性の鳥・・・こいつはスチュパリデスの下位種ってことか。」
「・・・でも、いきなりオールバードとは。てっきり、一番ランクの低いストーンバードが出てくると思ったのに。」
「・・・いや、震。それは問題ない。・・・出てきたぞ。」
震が風太の向いた方を見ると、そこには石でできた鳥の姿があった。その鳥達もオールバード同様、群を成して風太達を包囲していた。
「低ランクとはいえ、ここまでたくさんいると消耗する。」
「なら、消耗を防ぐ方法を取る。・・・『おい、ちょっといいか?』。」
風太は【魔物意思疎通】を使用し、鳥の群と対話を試みる。すると、鳥達が何羽か風太の側に寄って来た。
『・・・お前達、何者?』
『何で話できる?』
『・・・俺は、緑川風太。風の竜フィードの契約者だ。これは、魔物と話しができる【魔物意思疎通】だ。これで会話している。』
風太は自身の正体と、何故会話ができるのか鳥達に伝える。
『風の竜?・・・土の竜の仲間?』
『何しに来た?』
『ランドに会いに来た。ランドの力を借りたい。通してくれ。』
『土の竜、誰とも会わない。』
『土の竜、外の敵、怖がってる。』
『外の敵・・・ヤミーのことだな?』
『そう、闇の竜。』
『闇の竜、恐ろしい。怖い。だから、魔物達引き籠っている。』
(・・・なるほど。ここは、魔物にとっての避難所の役割もあるのか。)
『・・・ヤミーが怖いのは分かる。でも、俺達はランドの力が必要なんだ。通してくれ。』
風太は鳥達に、ランドの力を得るために通してくれるよう伝える。
『・・・土の竜は誰とも会わない。』
『誰とも会わない。』
『どうしてだ?外はヤミーのせいでとんでもないことになっているんだぞ?ここだって、いつ襲われるか分からない。早くなんとかしないと・・・。』
『何とかするだと?お前に何ができると言うのだ?』
『!?』
鳥達とは違う声が聞こえ、風太は思わず声のした方を向く。そこには、金属の光沢を輝かせた巨大な鳥がいた。
(・・・こいつ、【魔物意思疎通】じゃない。普通に話しかけてきた。Aランクの魔物だ。・・・じゃあ、こいつが・・・!)
「・・・スチュパリデスか?」
『ほう、俺を知っているとは。なかなか博識だな。』
「それより、さっきのはどういうことだ?」
『言葉通りの意味だ。闇の竜には誰も敵わない。俺達の神でさえ勝てないのだ。お前が風の竜の契約者だとしても、闇の竜に勝てるわけがないだろう。そんな奴を神の許に連れて行ったところで、何もできるわけがないだろう。』
スチュパリデスは、明らかに風太を見下した態度で言い放つ。風太は若干ムッとするものの、態度に出さないよう努めて話し合おうとする。
「・・・なら、このまま諦めて、ランドがやられるのを待っていろって言うのか?本末転倒じゃないか。」
『この地にいればその限りではない。この地は神が闇の竜に対抗するために作り上げた地。神が最奥に鎮座する限り、神は闇の竜に対抗できうる力を得られるのだ。』
「・・・なるほど、このダンジョンの中にいれば、ランドはヤミーに対抗できる。だから、ヤミーが来るまで待っているというわけか。・・・緑川風太。この魔物は思ったより頭がよくなさそうだよ。」
『何だと!?』
「光竜セイクがヤミーにやられて洗脳された。しかも、ヤミーの力でパワーアップしていた。」
『・・・それは本当か?』
「ああ。俺達は、洗脳されたセイクと戦った。五大竜が三体いてようやく何とかなったくらいだ。・・・たぶん、ヤミーは昔戦った時より強くなっているんじゃないか?」
『・・・信じられない。』
「信じる信じないはお前の勝手だ。だが、もしヤミーが本当に強くなっているのなら、不完全な今、何とかしないと手遅れになる。だから、通してくれ。」
『・・・だが、神と主の命を破るわけにはいかん。『このダンジョンに入るいかなる者も通してはならない。』。これが、神と主の命だ。』
「神と主?神はランドだろうけど、主って誰だい?」
「・・・おそらく、魔物の王です。土の竜の側には、魔物の王が控えて守護しているとされます。主とは彼らでしょう。」
「・・・通してはくれないわけか。」
『無論だ。もし、これ以上先に進むと言うなら、俺も、ここにいる魔物達も命懸けで戦う。神と主の命は絶対だ。』
スチュパリデスと大勢の魔物達は、今にも飛び掛かっててくる構えを見せる。スチュパリデスの言う通り、例え全滅したとしても、ここを通さないとする気迫を感じた。
(・・・これ以上話し合っても埒が明かないか。・・・仕方ない。)
風太は交渉の余地なしと判断し、交戦のためにフィードを召喚しようとする。
『スチュパリデス、待って!』
その時、どこからか声が響き渡る。それは、女性の声で、風太と同い年かそれより若い少女のように聞こえた。
「!?誰だ!?」
『・・・この声・・・!まさか、神か!?』
「神!?・・・フィード、この声はまさか・・・!」
『・・・間違いない。ランドの声だ。』
「・・・これがランド・・・。」
「でも、どうやって僕達に話しかけているんだろう?」
『たぶん、この場所はランドがダンジョンに入った相手に会話することができる場所なんだと思うよ。ほら、天井に大きな石があるだろ?』
フィードに言われ、風太達は天井を見上げる。そこには、巨大な黄色い石が光り輝いていた。
「・・・なるほど。あれがカメラ兼マイクの役割を果たしているのか。」
「・・・あんなものがあったなんて知りませんでした。ドワーフ王が見れば、興味を持ったでしょう。」
タネが分かり、納得する風太達。だが、スチュパリデスはこの状況が納得いかない様子で、石に訴えかける。
『神よ!何故止めるのです!?こいつらは侵入者・・・!』
『彼らは私に会いに来たの!勝手に排除しようとしないで!』
『!?・・・ぎょ・・・御意・・・!』
スチュパリデスは、納得いかなそうではあったが、ランドの命には逆らえず、言われた通り戦闘態勢を解く。
『他の皆も同じよ!彼らに傷付けることは許さないわ!』
『・・・。』
他の魔物達も、戦闘態勢を解く。それを確認したランドは、先ほどとは打って変わって穏やかな様子で話しかけてきた。
『・・・ようやく来てくれた・・・。フィード、久しぶり。』
『確かに、久しぶりだね。君は基本、地下に籠っているから。こんな形とはいえ、会えて嬉しいよ。』
『フィード、エリアスとブレイも来てると思うけど、他の二体も・・・。』
『うん。僕と同じく契約者を見つけてる。あとは、君が契約してくれればヤミーと戦えるはずだよ。』
『よかった・・・。セイクの波動がおかしくなったのを感じたから、心配していたの。』
『三体とも大丈夫だよ。特に、あのブレイがやられるわけないじゃないか。』
『ふふふ、そうね。』
『・・・でも、セイクの波動が分かったなら、僕達の波動も分かるはずだろう?どうして僕達が無事だって分からなかったんだい?』
『それが・・・どんどん世界中にヤミーの力が満ちて、よく分からなくなっていたの。ここまで来て、ようやくフィードが汚染されていないって分かるくらいだから。』
『・・・ヤミーの力が世界を覆っているのは分かっていたけど、このダンジョンにいればあの時のヤミーと同格の力を得られるはずの君でさえこの有様とは・・・。風太の予想は当たっているのかもしれないね。』
フィードとランドは、風太達を尻目に会話をする。その様子から、とても楽しそうに見えた。
「・・・フィード、積もる話は後だ。俺達の目的は、ランドに直接会って契約することなんだ。」
『!そうだった。というわけで、ランド。この面倒なダンジョンを解除してくれないかい?』
『分かったわ。すぐに・・・。』
ランドがフィードの頼みを聞き入れようとしたその時、風太の脳内に声が響き渡る。
『契約者よ!』
『!?・・・この声・・・。ガルーダか!?』
突然のガルーダからの【遠隔疎通】に、風太は何事かと尋ねる。すると、ガルーダは申し訳なさそうに理由を伝える。
『・・・すまぬ、契約者。・・・魔王に突破された・・・!』
「『何だと!?』。ランド、待ってくれ!」
ガルーダから伝えられた最悪の言葉に、風太はダンジョンを解除しようとするランドを止める。
『!?風太、何を!?』
「外にいるガルーダから連絡が入った!魔王に入られた!ダンジョンを解除するな!」
『魔王が!?・・・!これは・・・!本当に魔王が・・・!』
『魔王ですと!?馬鹿な!闇の竜の手の者は入れぬよう、予め結界を張っておいたはず!闇の竜が直接来たのならともかく、魔王に入り込まれるなど・・・!?』
ダンジョンの状況を探ったランドは、風太の言葉が事実であるのを知る。スチュパリデスは信じられないといった様子でそれを思わず口に出していた。
(・・・なるほど。結界まで張っていたのか。だから、スチュパリデスはあそこまで安心していたのか。)
「・・・『ガルーダ!何で魔王に入られた!?俺の付けた魔物の他に、ブレイもいたはずだろ!?』。」
『・・・光竜セイクだ。光竜セイクが現れた・・・!』
「!?」
「・・・緑川風太。顔色が悪いけど、ガルーダは何て言ってるんだい?」
「・・・震、お前の予想が当たった。・・・セイクがここに来た!」
「!」
予想していた最悪の展開に、周囲の空気が凍り付くのだった。




