ダンジョン攻略2
「・・・次の周り角を左だ。」
ヘッドバードからの視覚情報を介して、風太達は迷路を進んでいく。おかげで迷うことも魔物と遭遇することもなく進むことができた。
「・・・今度は真ん中だ。そのまましばらく真っ直ぐでいい。」
「・・・本当に便利な魔法だね。おかげでスムーズに進めるよ。」
「・・・。」
(・・・これは、土の竜に会うための試練のはずなのに・・・こんな楽でいいのでしょうか・・・?)
「・・・!ちょっと待ってくれ。・・・どうやら魔物の方からこっちに来るみたいだ。これは避けようがない。」
風太は後ろの二人を制すると、【視覚共有】を一旦切り、剣を構える。
「・・・魔物の種類と数は?」
「数は五体だ。種類は、ゴーレムだな。岩でできたゴーレムだ。」
「となると、ストーンゴーレムだね。ランクでいうならEか高くてもD相当だ。アイアンやブロンズなら、C相当だったんだけどね。」
「それに、土属性だ。俺一人で十分だ。」
しばらくして、風太達の視界にストーンゴーレムが五体現れる。だが、現れた瞬間、風太の風魔法で攻撃を受け、瞬殺される。
「・・・じゃあ行こう。」
敵を排除し、風太達は更に奥へと進んでいく。途中、避けられず魔物に何回か遭遇することがあったものの、実力的にも相性的にも風太に敵う魔物はおらず、問題にはならなかった。
しばらくして、風太達は迷路の出口付近にいた。
「・・・あそこがゴールだ。あそこに着けばクリアだな。」
「全体図が見えているとはいえ、かなりかかったね。・・・いや、この程度で済んだと言うべきか。」
「さて、ヘッドバードを戻してゴールに行こう。」
風太はヘッドバードをカードに戻すと出口に向けて歩き出す。
「よし、第一ステージクリアだ。」
「・・・!勇者様!お待ちください!」
迷路を出ようとした風太を女王が制する。
「?女王陛下?」
「・・・このままここを通ってはいけません。・・・試練の守護者が現れます。」
「試練の守護者?」
「試練の間には、守護者が配置されています。何らかの条件を満たすと、守護者が現れるよう仕掛けが施されているのです。出口の前の床に紋章が描かれているのが見えますね。何も知らずにそこに足を踏み入れれば、守護者が現れるでしょう。」
「・・・嫌らしいトラップだな。出口を見つけたと思ったら、ボスが出る仕掛けなんて。」
「でも、あそこを通らなければ出られないよ。」
「大丈夫です。私が先に通れば起動はしません。私の後に続いてください。」
女王は、仕掛けを解除するために出口に近付く。そして、紋章の描かれた床に足を踏み入れる。
「・・・これで大丈夫です。」
「よかったよ。これで無駄な時間を取られなくて済む。」
風太と震もそれに続いて出口に向かう。そして、紋章の描かれた床に足を踏み入れる。すると、突然、床の紋章が眩しく発光する。
「!?何だ!?」
「起動した!?」
「そんな!どうして・・・!?」
しばらくして、風太達の目の前に斧を持った巨大な牛を頭をした人型の魔物が出現した。
「・・・ミノタウロスか。迷宮の番人に相応しいね。」
「・・・どうして?王家の者が通れば仕掛けは解除されるはず・・・?」
「・・・どうやら、何か異常事態が起こってるみたいだな。」
「風太。おそらくただのミノタウロスじゃないはずだ。注意してかかるんだ。」
「ああ!」
風太はミノタウロスに切りかかる。ミノタウロスは、よくに避ける素振りも見せずに攻撃をくらう。だが、攻撃した瞬間、風太は違和感を覚える。
(!?固い!?こいつは・・・生き物じゃない!?)
まるで固い金属を切ったような感覚に、風太はミノタウロスから距離を取る。
「・・・震。こいつ、ミノタウロスじゃない。切った感覚が生き物のものじゃなかった。」
「・・・どうやら、あれはゴーレムの一種みたいだ。見てごらん。」
震が指した部分を見た風太は理解する。切り付けたミノタウロスの皮の部分が破れ、金属の部分が露出していたのだ。
「魔物の姿をしたゴーレムか。ランドはややこしいもの作ったな。」
「材質が何なのか判断しかねるね。近接戦はやめて、遠距離から魔法で吹き飛ばそう。」
「よし!【トルネードバースト】!」
風太は風の魔法でミノタウロス型ゴーレムを攻撃する。直撃したゴーレムは、そのまま吹き飛ばされ、壁に激突して深々とめり込んだ。
それと同時に、表面を覆っていた皮が剥がれ、金属のボディが完全に露出する。
「・・・ミスリルか。そうなると、ミノタウロスの姿をしたミスリルゴーレムと見ていいね。ランクA相当の魔物だ。」
「そんな・・・!ミスリルゴーレムはもっと奥の守護者のはずです!こんな最初の守護者になるはずが・・・!」
「これも異常事態か。まあ、どうでもいい。一気に倒すだけだ!【サモン・フィード】!」
風太はフィードを召喚する。
「フィード!一気に粉砕してやれ!」
『任せて!風竜の息吹!』
フィードのブレスが直撃したミスリルゴーレムは、粉々に粉砕された。
「・・・瞬殺だね。まあ、仕方ないか。」
「・・・こんなアッサリと守護者を・・・。・・・いえ、そもそも竜を使うのは・・・。」
「禁止されていないでしょう。なら、使っても問題ないはずです。」
「・・・。」
フィードを使って守護者をアッサリ倒したことに、女王は納得がいかないようだった。だが、震はもう諦めたのか、時間短縮になると割り切っていた。
「緑川風太。あのゴーレムの破片を回収しよう。ミスリルには使い道がある。」
「ああ。・・・!震、ゴーレムの破片が。」
「!?」
なんと、粉々に砕けたゴーレムの破片が、まるで砂のように消えてしまったのだ。
「・・・どうして?」
「・・・おそらく、土の竜の力で作り出した魔物だったからでしょう。ですから、役目を終えれば自然に消えるのだと。」
「・・・もったいなかったな。白名真白に渡せば、いいものを作ってくれただろう。」
「手に入らないものは仕方ない。先に進もう。」
ミスリルが手に入らなかったことを残念に思いつつも、風太達は試練の間を抜けるのだった。