ダンジョン攻略1
洞窟の中に入った風太達は、女王の先導で進んでいた。洞窟は広いだけでなく、明るかったため、灯りも必要なく歩くことができた。
「・・・まだダンジョン化した場所ではありませんが、油断はしないでください。」
「・・・それにしても、どうしてここは灯りがないのに明るいんですか?」
「洞窟の壁にある鉱石です。この鉱石が発光することで、光源の代わりとなります。」
女王が洞窟が明るい理由を説明する。風太は、壁一面に敷き詰められている鉱石を見る。
「・・・なるほど。でも、こんな凄いものをよくこんなふんだんに使えましたね。」
「これも土の竜の力です。土の竜は、鉱石を自由に作り出すことができるのです。」
「鉱石を?ミスリルやオリハルコンとかも?」
「はい。そればかりか、貴金属を生み出すことも可能です。」
「凄いな・・・。それならグロバーは、ランドの力で鉱石資源を幾らでも生み出して巨万の富を得られる。」
「それはいけません。土の竜の恵みを邪な理由で使っては。土の竜はあくまで、私達が生きていくために慈悲を与えてくれているのです。私腹を肥やすような真似は、その慈悲を裏切る行為です。ですから、そのようなことをすれば厳罰に処されます。」
「ランドに感謝しているんですね。」
「・・・勇者様。予め言っておきます。土の竜のダンジョンは、単なる防衛のためだけのものではありません。挑戦者の知恵と力、両方を見るものでもあります。土の竜に会うに相応しい知恵と力がなければ、乗り越えることは叶わないでしょう。心に留めてください。」
「分かりました。」
しばらくして、風太達の前に巨大な扉が姿を現す。
「・・・ここから先がダンジョンとなります。ここを通れば、土の竜の許に辿り着くまで出ることは叶いません。・・・覚悟はできていますね?」
「既にできています。・・・行くか。」
風太が扉を開けようとすると、扉は勝手に音を立ててゆっくり開く。
「・・・自動ドアか。」
「人が来たら勝手に開くようになっていたんだろうね。それじゃあ気を取り直して行こう。」
風太達は扉を通って先へと進む。そして、部屋に入ったと同時に扉は先ほどとは打って変わって素早く閉まってしまうのだった。
「・・・これは・・・!?」
風太は、目の前の光景を見て困惑する。目の前には、巨大な迷路のようなものが広がっていたのだ。
「第一の試練、【戸惑いの間】です。この迷路の出口に辿り着けた者のみが先に進むことができます。」
「迷路とはベターな展開だね。・・・当然、ただの迷路じゃなさそうだけど。」
「はい。この迷路には、土の竜の配下の魔物が徘徊しています。それと戦いつつ、正しい道を見つけなければなりません。」
「マッピングと戦闘を同時に行うわけか。」
「そうなります。私がいることによって、若干ですが迷路の難易度は下がり、魔物の数も減っているはずですが、それでも容易ではないでしょう。」
「・・・よし。僕がマッピングをするから、緑川風太は戦闘を・・・。」
震が役割を決めるものの、風太は何か考えている様子だった。
「・・・緑川風太?聞いているのかい?」
「・・・震。迷路の壁、天井まであるわけじゃなさそうだよな?」
「・・・そうだね。・・・まさか、飛んでクリアしようって魂胆じゃないよね?」
「それは駄目です。壁の頂上には人を拒む特殊な結界が張られています。飛んで行くことも、壁の頂上を伝って行くこともできません。」
「人は拒む。・・・なら、人じゃなければいい。」
「・・・語弊がありましたね。住む者を拒む結界です。私も当然通れません。」
「大丈夫です。こいつを使います。【サモン・ヘッドバード】!」
風太はヘッドバードを召喚する。
「ヘッドバード?いったい何を?」
『ヘッドバード。天井まで飛んでくれ。』
『いいよ。』
ヘッドバードは天井まで飛んで行く。ヘッドバードは何の問題もなく、天井まで飛び上がった。
「成功だ。やっぱり魔物は通過できる。『ヘッドバード、そのまま待機だ。』。」
『分かった。』
「・・・何をするつもりなのですか?」
「・・・【視覚共有】。」
すると、風太の視界に迷路を上空から見た全体像が入ってきた。
「・・・よし。見えたぞ。」
「・・・緑川風太。何をしたんだい?」
「ヘッドバードと【視覚共有】して迷路の全体像を見たんだよ。」
「・・・【視覚共有】って、契約した魔物の見る光景を自身も見ることのできる魔法だったはず。でも、あれは相当高度なテイマー魔法のはずだ。いつの間に使えるようになったんだい?」
「今の俺ならできると思ってやったらできたんだ。呪文なしで召喚できるようになっているからな。なら、【視覚共有】だってできると思ったんだ。・・・まあ、今回は距離があまり離れていないから成功したのかもしれない。魔物との距離が離れれば離れるほど、うまくいかないらしい。」
「・・・。」
「さて、出口までの道筋が分かったし、魔物がどこにいるかも見えている。さっさとクリアしよう。」
「・・・そう・・・だね。」
(・・・これでいいのかな?・・・いや、非常事態だし仕方ないか。・・・それに、これも一応知恵を使っていると思うから、問題ないはず。・・・うん、そういうことにしておこう。)
「・・・。」
風太の解決策に、震は半ば強引に納得するが、女王は唖然とするだけだった。