王達との対談
「・・・なるほど。そのゴーレムの力でこのグロバー大陸まで来たのですね。」
「異世界から来た存在とは・・・にわかには信じがたいことだが、それなら腑に落ちる。この世界で竜の力をここまで自在に扱えた者はおらんはずだ。まさか、ワルド大陸を解放するとは・・・。」
「しかし、竜の力がこれほどとは・・・。いや、それを扱う勇者の力か・・・。いずれにせよ、先ほどの非礼を詫びよう。すまなかった。」
フィードを召喚し、自分達が勇者であると証明した風太達は、これまでのことを王達に説明した。自分達が別の世界から来た存在であること、ヤミーの器にされているのが自分の妹であること、妹を助けるために五大竜と契約し、その結果ワルド大陸を解放したこと、メタリアルのこと等々を。もっとも、ソウが神であることは伏せたが。今度は王達も、素直に風太達の話を信じた。同席しているウッド達は、状況が理解できず完全に固まっていたが。
「あなた方は、土の竜との契約を望んでいるのですね。」
「はい。ヤミーの結界に閉ざされたユニバスに行くためには、四属性の竜の力が必要です。そのためにはどうしてもランドの力が必要なんです。」
「なるほど・・・。」
「もちろん、レジスタンスにも協力します。ランドと契約してそれでお仕舞いにするつもりはありません。」
「それは、私達にとって心強いことです。ウッド達から聞き及んでいるでしょうが、私達解放軍の命運は、まさに風前の灯火なのです。」
「戦力、物資、全てにおいて事欠いておる。そんな時、勇者が力を貸してくれると言うのなら、これは、まさに天からの恵み。頼らせてはくれんか?」
「もちろんです。任せてください。」
「頼もしいな。さすがは勇者。・・・だが、今、土の竜の住まう神殿に行ったとして、会えるかどうかは分からんぞ。」
「?どういうことですか?」
「土の竜は、用心深いのだ。ヤミー襲来を感知し、神殿をダンジョンと化した。」
「ダンジョン?」
獣王のダンジョンと言う言葉に、風太はモーゼから習った内容を思い出す。ダンジョンとは、Sランク以上の魔物が自分の住処を迷宮に変えてしまう現象のことである。単に通路が複雑化するだけのものや、危険なトラップが設置されるものなど、様々だという。
(今更思えば、ブレイの神殿も、あれも一種のダンジョンみたいなものだったんだろうな。)
風太は、ブレイの神殿を思い浮かべた。あの時は、神殿を作った昔の人間の仕業と思っていたが、獣王の言葉であれがダンジョン化だったのではないかと思った。
「土の竜のダンジョンは、一度入れば二度と出ては来れぬ。現に、ヤミー軍が何度も土の竜確保に向かっているが、成功してはいない。」
「!まさか、ヤミー軍はもうランドの居場所を!?」
「知っています。そもそも、グロバー大陸に住む者は皆、土の竜の神殿を知っています。」
(グロバーの人達は知っていたのか。・・・まあ、フィードはただ場所を探しただけで、原住民との情報収集なんてしてないだろうし。)
「じゃあ、急いでランドの所に・・・!」
「落ち着くのだ。先ほども言ったが、ヤミー軍は未だにダンジョンを制圧できておらぬ。今はまだ大丈夫だ。」
(今はまだ、か。でも、奴らも馬鹿じゃない。うまくいかないなら、もっと強力な奴を送り込んでくるだろう。最悪、魔王自身が出向く可能性もある。楽観視はできないな。)
ドワーフ王の言葉に、震は実際の猶予はあまりないと感じる。ヤミーの力が分かっているからこそ、楽観視などできなかった。
「神殿へは私が案内しましょう。私がいれば、ダンジョンのトラップも若干ですが弱まります。私達エルフ王家は、代々ランドに仕える一族ですから。」
「弱まる?無力化はできないんですか?」
「残念ですが・・・それは、土の竜自身でなければできません。ダンジョン化は、元からヤミーに攻められた場合を想定したものですので。」
「そうですか・・・。」
「だが、今日はお主達も疲れたであろう。遥々海を越え、拠点を幾つも潰してきたのだ。今日は身体を休め、明日出発するといい。」
「分かりました。お気遣いありがとうございます。」
「・・・それと、ウッド達を手助けしてくださり、ありがとうございます。」
女王は、ウッド達を助けてくれたことに謝辞を述べる。
「気にしないでください。」
「あ、風太。私達の獲ったもの、渡さないと。」
「そうだった。俺達が獲ってきた魔物を置く場所を教えてくれませんか?」
「それなら食料庫に行くといい。あそこはこの部屋より巨大だ。・・・そして、幾らでも置けるだろう。」
獣王が複雑な様子で食料庫に持っていくよう伝える。それを聞いた風太達は、どのような状態か察し、やはり複雑な顔をするのだった。